日本船主協会

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A:海洋環境 6.船舶についての有害な防汚方法の管理に関する国際条約

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(1)有機スズ系船底防汚塗料について

1. 環境ホルモン問題の概要
 化学物質のうち、生物の体内であたかも生体ホルモンの様に働き、害をもたらすものが「外因性内分泌かく乱物質」、いわゆる「環境ホルモン」と呼ばれるものであり、動物体内でどのように正常なホルモン作用をかく乱するかのメカニズムは未解明であるが、DDT、PCB等の化学物質が人の健康や野生生物の生態に影響をもたらしている可能性が指摘されている。
 具体的な例では、イボニシという巻貝の雌が雄性化するという現象がみられ、メカニズムは解明されていないが、漁網、船舶、航路標識等に海洋生物が付着するのを防ぐための防汚塗料に含まれていた有機スズ化合物が原因ではないかとの報告もある。

2. わが国の環境ホルモン問題への対応
 わが国においては、1986年の環境庁のモニタリング調査により、一部の魚介類のサンプルから高濃度の有機スズ化合物が検出されたことを受けて、1988年には有機スズ化合物が「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」に基づく「指定化学物質*」に指定され、さらに、1990年9月には「第二種特定化学物質*」に指定されたことにより供給量の総枠が制限された。
 1996年3月、合成化学物質がホルモン分泌系の作用をどのようにかく乱しているかを指摘した研究報告「Our Stolen Future」(邦訳「奪われし未来」)が刊行されたことにより、一般の人々の間でも「環境ホルモン」という言葉が使われるようになり、同時にその問題の深刻さが認識されるに至った。
 環境庁では、1997年3月に「外因性内分泌かく乱化学物質問題に関する研究班」設置し今後の調査研究のあり方を検討するとともに、1998年5月には内分泌かく乱化学物質問題への対応方針「環境ホルモン戦略計画-SPEED 98-」を策定し、この方針に基づき水質、大気および野生生物の汚染状況について、67の環境ホルモンの疑いがある化学物質を中心に実態調査を実施し、それら物質のかく乱作用の有無、作用力の程度等の解明に努めている。

* :指定化学物質:難分解性、慢性毒性等の疑いがあり、製造・輸入実績等の届出が必要な化学物質。

* :第二種特定化学物質:難分解性、慢性毒性等により製造・輸入の予定、実績などの届出(必要に応じて、製造・輸入量の制限、取り扱いに係る技術上の指針の遵守)が必要な化学物質。


3.有機スズ系船底防汚塗料に関する自主規制

 船底にフジツボ等が付着すると航行速力の低下、燃費の悪化の原因となるので、通常は、防汚塗料を塗布して生物の付着の防止を図っている。特に、有機スズ(TBT:トリブチルスズ)を含む塗料は、抜群の防汚性能を示したことから、広く船底防汚塗料として使用されていた。しかし、1986年の生物モニタリング調査により海洋生物中に有機スズの蓄積が確認され、加水分解型の有機スズ系塗料がその原因ではないかと指摘された。
 このような状況に対応して、当協会はTBT系塗料の使用削減のための方法を検討し、1990年6月に【1】1年程度のドック間隔の船舶は全面自粛、【2】その他の船舶は、船側部分のみ低含有率の塗料を使用し、船底部への使用禁止を骨子とする自主規制を実施した。
 さらに、1990年9月には「第二種特定化学物質」に指定され総量規制が実施されたことを受けて、内航船および港湾運送事業に従事する船舶への塗布を全面的に禁止する自主規制を行った。
 同年12月には、当協会と日本造船工業会とが協議し、1991年1月以降の新造契約船および1992年4月以降の修繕着工船について国内造船所での有機スズ系船底防汚塗料の使用を全面禁止する自主規制を実施したが、海外では依然として使用されているため、IMOのMEPCにおいて国際的な規制の必要性を訴えてきた。

4. 有機スズ系船底防汚塗料に関する国際規制
 国際的にも1980年代後半から防汚塗料に含まれる有機スズの海洋環境に与える影響が大きな問題として取り上げられ、1990年11月の第30回MEPCにおいて、25m未満の小型船舶への有機スズ系船底防汚塗料の使用禁止等を勧告するMEPC決議 46(30)が採択された。その後、先進諸国を中心にモニタリングが実施されたが、積極的に有機スズ系船底防汚塗料を禁止するという動きには至らなかった。
 1996年7月のMEPC 38において、日本、オランダおよび北欧諸国から有機スズ系塗料の使用について世界規模での規制が必要であるとの提案が受け入れられ、MEPCの検討作業計画に盛り込まれた。その後、第41回から第43回のMEPCにおける審議を経て、有機スズ系船底防汚塗料の使用禁止、新条約による強制力を持った規制を導入することについて大筋の合意がなされ、1999年11月に開催された第21回IMO総会において、新条約を策定することを決議、2001年10月の新条約採択が実現した。

■資料14:有機スズ系船底防汚塗料の規制までの推移