日本船主協会
NYK ANTARES(コンテナ船/日本郵船)
コンテナ船 伝統の航路に新たな航跡を描く
星の名を冠した世界最大級の新鋭船
NYK ANTARES 主 要 目
NYK ANTRES 全 長 299.9m
全 幅 40m
深 さ 23.90m
喫 水 14m
積貨重量 81,819D/W
積載量 5,700TEU
馬 力 72,467PS
航海速力 23knots

 1968年8月、日本郵船のカリフォルニア航路にわが国最初のフルコンテナ船「箱根丸」が就航した。752TEU(20フィートコンテナ換算積載個数)、航海速力21.9ノット。当時、世界最大の2万7800馬力のディーゼルエンジンを搭載したこの新鋭船は、東京とロサンゼルスの間をわずか9日で結び、コンテナ化による荷役スピードの向上とあいまって、それまで80日かかった太平洋横断航路の往復を、一気に30日にまで短縮した。
 こうして、国際定期航路の主役の座に躍り出たコンテナ船は、その後の国際海上貿易の拡大とともに、さらに大型化・高速化し、1970年代に入ると2000TEUクラスが主力となる。
 大型化の傾向はその後も続き、1980年代後半には4000TEUを越えるオーバーパナマックス型(パナマ運河を通航できる最大サイズを超える船型)が登場。1990年代に入ってからは、航海日数の長い日本・極東/欧州航路などを中心に、5000〜6000TEUクラスが主力となっている。
 1997年8月8日に進水した「NYK ANTARES」は、こうした背景のもとに登場した日本郵船の五隻の5700TEU型コンテナ船シリーズの第一船。7万2467馬力という世界最大出力のディーゼル機関を搭載し、23ノットの航海速力を誇る世界最大級の高速コンテナ船だ。
ディーゼルエンジン
▲世界最高出力を誇る
United-Sulzer 11RT96C型
ディーゼルエンジン
 積載能力を増強する場合、コンテナ船では、単に船のサイズを大きくするだけでは済まない側面がある。寄港する港の水深や港に備え付けられているガントリークレーンの腕の長さ(アウトリーチ)などの制約があるためだ。このためオーバーパナマックス型といっても、単なる船型の大型化には限度がある。そこで求められるのが、設計技術の工夫による積載スペースの拡大だ。
 NYK ANTARESでも、こうした狙いから「ガーダーレス」と呼ばれる新しい設計技法が採用された。これは船倉内スペースをより広く使うために、従来のコンテナ船では不可欠と考えられていたガーダーという船体の強化部材を省略するというもの。
 それを可能にするため、上甲板やハッチカバー、バルクヘッド(隔壁)などの構造部分を慎重に設計し、特定部分への過度なストレス集中を防ぐ等、十分な船体強度を確保するための対策が徹底して行われ、船体設計の段階ではFEA(Fine mesh finite Element Analysis)と呼ばれるスーパーコンピュータによる精密分析技術も駆使された。
 こうして船倉内スペースが最大限利用できるようになった結果、船倉内に14列、デッキ上に16列、さらにデッキ上には最大六段までのコンテナ・スペースを確保。1976年建造の「春日丸」と比べた場合、全長で約4%、全幅で約24%大きくなっただけで、積載能力は何と二倍以上に増えたことになる。  データ通信により、本船と陸上との間で運航状況に関する情報を共有する遠隔情報システムや、レーダー、衝突防止装置、自動操舵装置、電子海図などの航海用機器を統合制御するIBS(船橋統合装置)など最新のシステムも積極的に導入された。主機関についても、高水準の大気汚染防止対策が施され、窒素酸化物の排出量は、MALPOL条約による2000年1月1日以降の規制値を十分にクリアしている。
IBS
▲様々な航海機器を
インテグレートした
船橋統合システム(IBS)
 姉妹船四隻(1987〜1998年に順次就航)とともに、NYK ANTARESは日本・極東と欧州を結ぶ定期航路に投入され、共同運航パートナーである外国船社の二隻と合わせた全八隻の船隊で、往復8週間、週一便の定曜日サービスを実現する。寄港地は、神戸、名古屋、清水、東京、シンガポール、サザンプトン、ロッテルダム、ハンブルグ、ル・アーブル。
 さそり座の一等星「アンタレス」の名を冠した「星」シリーズの第一船は、NYKの欧州ライナー船隊の主力として、100年以上の歴史を誇る伝統の航路に、今また、新たな航跡を描き続ける。
NYK CASTOR
▲姉妹船・NYK CASTOR