日本船主協会
MOL ADVANTAGE(コンテナ船/商船三井)
コンテナ船 効率とスケールメリットを
高度にバランスさせ、安定輸送で日欧を結ぶ
新世紀の大型コンテナ船
MOL ADVANTAGE 主 要 目
MOL ADVANTAGE 全 長 278.94m
全 幅 40.00m
深 さ 24.00m
満載喫水 14.02m
重量トン数 66,559D/W
総トン数 66,332G/T
積載量能力 5,896TEU
主機出力 74,561ps
航海速力 25.7knots

 国際定期航路の主力のコンテナ船は、かつては世界一周やパナマ運河経由で極東と北米東岸を結ぶ必要から、サイズはパナマックス型(パナマ運河が通航できる最大船型)が常識だった。
 しかし近年、世界一周航路のニーズは低下し、極東/北米東岸のルートにも海陸一貫輸送が登場した。海路コンテナ航路で結び、西岸と東岸の間は、ダブルスタックトレイン(コンテナ2段積み大陸横断鉄道)による輸送と組み合わせて、東岸への輸送時間はパナマ運河経由と比べ大幅に短縮された。
 これを背景に外航コンテナ船市場では、オーバーパナマックス型への転換が進んだ。パナマ運河通航の要件を外して船型を大型化し、積載量を増やし、単位当たりの輸送コストを低減させる。厳しい国際競争のなか、大型化によるスケールメリットの追究は時代の趨勢となった。その動きも、当初は4200TEUクラスから始まったが、最近では6000〜7000TEUクラスのものも登場するに至っている。
 「MOL ADVANTAGE」は、2001年3月に竣工した商船三井で過去最大の5900TEU(20フィートコンテナ換算積載個数)型の高速大型コンテナ船。航海速力も25.7ノットと同社最速だ。
 就航する日本/欧州航路は距離が長く寄港地が多い。このため他航路と比べ大型船が投入される傾向がある。一方、船型の大型化はターミナルの能力と相関する。取り扱うコンテナの数が増えるだけでなく、荷役中のガントリークレーンの移動距離も増え、全体として停泊時間が長びく。それを補うために航海中の速力を上げれば、燃料消費量も増える。そうした意味で「MOL ADVANTAGE」のサイズは、最大よりも最適を重視したバランスの取れた選択といえる。
コンテナ
▲40mの船幅いっぱいに密集して
積み込まれるコンテナ
 とはいえ5900TEUの積載能力は、かつての標準から見れば破格で、単に船を大型化するだけでは効率の低下を免れない。そこで積載能力の増強は、船体の大型化よりも、むしろ最新技術の投入によるスペース効率の向上によって実現されることになる。
「MOL ADVANTAGE」の場合も、そうした技術進化が随所に取り入れられ、船型に比して飛躍的に大きな積載能力が確保された。同社が1990年に竣工したパナマックス型コンテナ船「えるべ」と比較すると、全長はほぼ変わらず、全幅が8メートル弱広がり、総トン数では1.3倍増加しただけだが、積載能力では1.6倍の増加だ。
 ポイントは船幅拡大のメリットを最大限生かした点にある。これにより重心が下がり、安定性が向上。従来は約1万トン必要だったバラストが3000トンにまで減り、その分貨物スペースが増えた。
 安定性の向上はオンデッキのコンテナをより高く積むことも可能にした。これに対応して、従来はデッキ上で取っていた固縛(ラッシング)用のポイントを、二段目の高さから取れるようにするラッシングブリッジを装備した。これによりオンデッキに最大6層までのコンテナが積めるようになった。
 コンテナの縦横の間隔も極力狭めている。例えば従来は各艚口にハッチカバーを受けるガーダーという構造材があった。同船ではこのガーダーを無くし、コンテナを縦方向に密集して積める構造をとっているが、それによりデッキ強度の低下も生じる。これを補強するためにハッチ周りには65ミリの板厚の鋼板が用いられた。セルガイドの形状も工夫され、従来の方式より横方向で一列分スペース効率が向上している。
 こうした大量輸送能力にもかかわらず、速力には余裕があり定期航路で重要なスケジュールのキープも容易だ。燃料タンクの位置を下げることで、水線付近に集中しやすい衝突等による燃料漏れのリスクを減らすなど、環境面での配慮もなされている。

▲デッキ上にラッシングブリッジが
並ぶ
 商船三井は2001年度にスタートした新中期経営計画「MOL next」に基づき、2003年までに16隻の新鋭コンテナ船隊を整備する。その計画の先陣を切ったのが「MOL ADVANTAGE」。姉妹船の「MOL Integrity」「MOL Solution」も相次いで竣工する予定だ。
 近年好調なアジア/欧州航路の荷動きを追い風に、スケールメリットを生かした、さらなる国際競争力の強化を目指す大型高速船隊—。そのパワフルな陣容には、顧客のニーズと時代の要請を先取りし、世界経済の発展に貢献する、世界第一級のグローバルキャリアーへの挑戦の意志が息づいている。