日本船主協会
GOLDEN GATE BRIDGE(コンテナ船/川崎汽船)
コンテナ船 伝統の船名をより高いレベルで継承した
最大・最先端を誇る21世紀の
フラッグシップ
GOLDEN GATE BRIDG 主 要 目
GOLDEN GATE BRIDGE 全 長 284.71m
全 幅 40.00m
深 さ 24.30m
喫 水 12.50m
重量トン数 71,376D/W
総トン数 68,687G/T
個数 5,600TEU
主機出力
(最大)
80,000ps
最大速力 28.5knots

 国際定期航路のコンテナ革命は1960年代の後半に幕を開けた。1968年に北米航路に就航した川崎汽船の初代「ごうるでんげいとぶりっじ(以下GGB)」は、我が国におけるコンテナリゼーションのパイオニア的役割を担った代表的な高速フルコンテナ船。以後この船名は、同社のコンテナ船隊のフラッグシップに与えられる由緒ある船名として受け継がれてきた。
 コンテナリゼーションの進展と世界貿易の拡大を受けて、コンテナ船は国際定期航路の主力の地位を確立し、船型も大型化に向かった。初代GGBでは716TEU(20フィートコンテナ換算積載個数)だったコンテナ積載能力が、85年に就航した二代目GGBでは2069TEUへと飛躍的に拡大している。
「GOLDEN GATE BRIDGE」は、表記は英語に変わったが、Kライン伝統のフラッグシップの名を受け継いで三代目に当たる最新鋭の大型高速コンテナ船。船型、積み個数、主機出力、速力のすべてにおいて、二代目GGBはもちろん、これまで同社の最大船型だった「せとぶりっじ(以下STB)」シリーズをも大きく上回る。
 とくに積み個数において5600TEUと国内最大級のスペックを実現したが、外観から見たサイズはSTBシリーズをさほど大きくは上回らない。目立つのはSTBシリーズの32.2メートルに対し40メートルに拡大された船幅で、これでSTBシリーズに対し積み個数が約50%アップしたことは、この間のコンテナ船建造技術の大きな進展を物語るものといえる。
GOLDEN GATE BRIDGE
▲大型ドックで姉妹船と
並んで建造中の
GOLDEN GATE BRIDGE


GOLDEN GATE BRIDGE
▲8万馬力の出力を誇る
最新型エンジン
 船幅の拡大はスタビリティー(安定性・復元性)の向上につながり、安定性確保のためのバラストスペースを小さくできる。これが見かけの大きさ以上に積み高を拡大できた秘密の一つ。さらに上甲板、外板、船殻の鋼材の板厚を上げて、ガーダーと呼ばれる縦方向の補強材を省略した、いわゆるガーダーレス構造としたことも、ホールド内の有効スペースを拡大した。
 こうしてSTBシリーズと比べ、ホールド積みは四列、デッキ積みは三列積載スペースが増えた。さらに深さをやや大きくし、ラッシング・ブリッジ・システムを採用したことで、オンデッキとホールドで各一段ずつ高さ方向に積載スペースを増やしている。
 ラッシング・ブリッジとはデッキ積みの貨物を固縛するために各ハッチ間に置かれた作業ステージで、高さはほぼコンテナ一段分あり、デッキ積みコンテナを従来より一段高く積むことを可能にする。  これらに対応して冷凍コンテナの積み個数もSTBシリーズと比べほぼ倍増の500個積みとなった。またホールド内は20フィート/40フィートのいずれも積める「ツー・イン・ワン方式」を採用。変動する積載パターンにも柔軟に対応できる。
 主機は最高八万馬力、常用6万8000馬力という世界最大級の出力を誇る最新型エンジン。これ以前に同社船に搭載された最大スペックの8万馬力エンジンと比べ大きさは約半分で済み、スペース効率の面でも大きく貢献している。速力は最大で28.5ノット、サービス・スピードが25ノットと、これも同社のコンテナ船の中では最速を誇る。
 さらに従来は5年に2回だったドック入りを一回で済ませることが可能な仕様も採用された。5年間塗り直し不要の船体塗料の使用と、エンジンの保守を軽減するセントラル・クーリング・システムの導入によるもので、スケジュール遵守が生命線となるコンテナ船にとってアキレス腱ともいえるドック入りの回数を軽減することで、運航効率をより向上させるアイデアだ。
ラッシング・ブリッジ
▲ラッシング・ブリッジ

荷役中
▲荷役中の
「GOLDEN GATE BRIDGE」

 「GOLDEN GATE BRIDGE」は川崎汽船が満を持して投入する新鋭コンテナ船一二隻シリーズの第一船。この大規模な船隊をいかにスピーディーに構築するかも同社にとっては重要な課題だった。
 その面で画期的な役割を果たしたのが、本船を含め7隻を受注した韓国の現代工業蔚山造船所。大型コンテナ船の分野では同社にとっても日本船社にとっても初の外地建造となる積極的な試みに、GGBを含むシリーズ船を一度に五隻連続建造するという世界でも類をみないキャパシティーで見事に対応した。
 川崎汽船では現在、陽明海運(台湾)、コスコ・コンテナライン(中国)、韓進海運(韓国)/セネターライン(ドイツ)グループとの間で新たなアライアンス(戦略的提携関係)の構築を目指しており、これが実現すれば世界最大級のアライアンスが登場することになる。GGBをはじめとするシリーズ一二隻の最新鋭コンテナ船隊の投入は、その配船面においてもフレキシビリティーを高め、より高品質なサービスの実現に大きな役割を果たすものと期待される。
 二代目GGB建造から8年の歳月を経て登場したKラインの新たなフラッグシップは、伝統の船名をさらに高いレベルで継承して、21世紀の国際物流をより力強く、よりしなやかに支え続ける。