日本船主協会
ほっかいどう丸(貨物フェリー/川崎近海汽船)
RORO船 先進のコンセプトで
モーダルシフトの時代を拓く
日本最速・最大の貨物フェリー
ほっかいどう丸 主 要 目
ほっかいどう丸 全 長 199.00m
全 幅 24.50m
深 さ 10.43m
満載喫水 6.80m
総トン数 12,520G/T
積載台数
 トラック(8.5m)
 乗用車


200台

46台
主機出力
(最大)
32.400ps
×2
航海速力 30.00knot

 最先端の設計技術を駆使したスリムな船体に最新の4サイクル中速エンジン2基を搭載し、30ノットという大型フェリーとしては日本最速を実現した川崎近海汽船の貨物フェリー「ほっかいどう丸」が、同型船の「さんふらわあ とまこまい」(ブルーハイウェイライン)とともに、苫小牧と東京を結ぶ共同運航サービスを開始したのは1999年9月。その高速性とトラック(8.5メートル換算)200台、乗用車46台という日本最大の積載能力を生かした革命的ともいえるハイレベルな輸送サービスに対し、今年1月6日に、「99年日経優秀製品・サービス賞」の「最優秀賞 日本経済新聞社賞」が授与された。
 この賞は、「日経優秀製品・サービス賞」の最高位に当たるもの。今回で18回目となる同賞の歴史のなかでも、物流サービス分野では初めての受賞となる。受賞理由は、東京/苫小牧の所要時間を30時間から20時間に短縮し、2隻による1日1便体制を確立。トラック輸送から海上輸送へのモーダルシフトの可能性を高めたことだった。さらに「ほっかいどう丸」は4月27日に日本造船学会に「シップ オブ ザ イヤー'99」をも受賞している。受賞理由は「日経優秀製品・サービス賞」とほぼ同様だ。
 地球温暖化対策としてのCO2削減は、今や世界的な緊急課題となっている。モーダルシフトとは、英語では「形態の転換」を指すが、運輸業界では、国内貨物の輸送を、CO2やNOxの排出量が大きいトラック輸送から、より環境負荷の少ない海運や鉄道による輸送にシフトする政策を意味し、国と業界がいま積極的に推進している重要課題の一つだ。今回の受賞により「ほっかいどう丸」の高速輸送サービスが、地球規模の環境保全に貢献するものとして高く評価されたわけで、輸送モードとしての海運の新たな可能性をアピールする点からも、その意義は大きい。
 「ほっかいどう丸」には、高速性以外にも多くの優れた特徴がある。荷役面では、上部デッキ、下部デッキにそれぞれ1基ずつランプウェイを持たせ、2つのデッキでの荷役を独立して行えるようにした二層同時荷役システムがユニークだ。従来は船内への貨物の出入りはすべて下部デッキから行い、上部デッキへの移動は船内のランプウェイ(傾斜路)を使っていたが、これだと船内で貨物の渋滞が起こりやすい。この新方式の採用により、荷役効率は大きく改善され、停泊時間は6時間から4時間にまで短縮した。
 両舷中央部の水面下に装備されたフィンスタビライザーは航海中の横揺れを90%減少させ、輸送中の貨物の安全性を高めた。冷蔵庫用の電源供給設備も92個と充実し、生鮮食品の輸送に威力を発揮する。さらにGPSやレーダー情報と連動し、迅速な航路計画の立案機能や航行監視機能を提供するECDIS(電子海図情報システム)を始めとした最新のブリッジシステムは、航海の安全性を大きく向上させている。
 定時運航の正確性もまた、高速性と大量輸送能力に加えて、特筆すべき点だ。就航以来欠航は一度もない。運航スケジュールは「ほっかいどう丸」と「さんふらわあ とまこまい」の2隻で日曜日を除く1日1便のデイリーサービス。東京を23時45分に出航し、翌日の20時15分に苫小牧に入港、苫小牧を出航するのは23時30分で、東京には翌日の20時50分に着く。これにより、荷主サイドは当日深夜までの集荷が可能になり、翌日の夜に到着する貨物は翌々日の早朝に周辺地域へ出荷できる。こうした正確で効率の良いスケジュールによって、東京の集荷エリアは関東からさらに東海地方までカバーできるようになった。

▲ECDISを中心に統合された
最新のブリッジシステム
 モーダルシフトへの貢献度を明らかに示す数字が、就航以来の同航路での輸送台数の増加だ。1999年度下期の輸送台数累計は3万9378台で、前年同期の約1.6倍。サービスを開始した99年9月から12月の間だけに限れば、1隻当たりの輸送量は前年同期の約2.5倍となる。東京/苫小牧間の海陸を合わせた物流量にさほどの変化がないことを考えれば、増加分のほとんどは陸から海への貨物の移動によるものと言える。
 また今年3月末に始まった有珠山の噴火で、周辺の道路や鉄道が一時不通になったが、その際の代替輸送機関として、同航路の輸送サービスが大きな役割を果たしたことは注目される。この間、車や鉄道で運ばれていた貨物が大量にシフトし、災害に強い輸送機関としての海運の優れた特性が改めて印象づけられた。
 長距離・大量輸送という海上輸送の優れた特性に、さらに高速性という新たな付加価値を加えた、「ほっかいどう丸」の先進のコンセプトは、物流部門における地球環境への貢献という21世紀に向けた大きな課題への力強い回答といえよう。

▲一基で32,400馬力の
強力エンジン(二基搭載)