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海賊事件に関する2000年の年次報告について
 国際海事局(International Maritime Bureau: IMB)の海賊情報センター(マレーシア、クアラルンプール)発行の年次報告書(2000年に同センターに連絡のあった海賊事件)からの抜粋を抄訳のうえ、お知らせします。
 同報告書によりますと、昨年が300件であったのに対し469件と報告件数が56%増加しており、このうち119件(約25%)がインドネシアで発生している他、インドネシア、マレーシア、マラッカ海峡が全体の約半数を占めています。
 事件報告は数ヶ月後に報告される場合も多いため、2000年の数字(2000年12月31日現在)については、最終的にさらに増加することが予想されます。 1999年のIMB年次報告書(船主海第21号H.12年2月22日付 船舶通報12-2)では、同年の報告件数が285件となっておりましたが、最終的には300件となっています。
「船舶に対する海賊および武装強盗 2000年IMB年次報告」からの抜粋(抄訳)

 バングラディッシュ、エクアドル、インド、インドネシア、マラッカ海峡、紅海南部において急増。
 マラッカ海峡においては北緯1度〜2度、東経101度〜103度にかけて事犯が増加している。最も危険度の高い海域は北緯2度、東経102度付近の25マイルを半径とする海域内で、同じ海賊により襲撃が繰り返されているとのこと。関係当局は同海峡のパトロールを強化したが、当該海域を通航の際は見張りの強化が必要。
 フィリピンのダバオではBancaと呼ばれるカヌーからロケット砲が船舶に向けて発射されるという事例があったが、最近同じような襲撃が4件報告されている。
 インドネシアは引続き世界で最も危険度の高い国であり、Belawan, Dumai, Jakarta, Merak, Samarinda, Tanjong Priokでは接岸中および錨泊中に襲撃を受けるという事犯が多発している。
 Chittagong, Mongla, Chennaiでは錨泊中の事犯が多い。バングラディッシュでは、船体に取り付けた防食用の亜鉛板が盗まれている。
 北緯13度、東経43度付近の紅海南端 Bab Al Mandebでは、小型高速艇に乗った一味により数隻の船舶が狙われた。本船からの報告によれば、変針するために船舶が速度を落とす交通路の北端で待ち受けていたとのことである。
 ソマリア海域は相変わらずハイジャックの危険度が高い。 沖合を航行する船舶は50マイル以上、できれば100マイル以上沿岸から離れて航行すべきである。ソマリアに寄港しないのであれば、ソマリア沿岸には接近しないこと。船舶/ヨットが高速ボート、ガンボートに乗った武装海賊により発砲、強奪、ハイジャック被害を受けている他、過去には死傷者も出ている。同海域においては、最低限VHF等により通信連絡を密にすべきである。
 エクアドルでは以前にも増して、特に錨地において事犯が増加している他、航行中の船舶も狙われており、武装しているとのこと。

特別に警戒を要する海域(港)

Indonesia全港、Gelasa Str、Bangka Str、Berhala Str.、Sunda Str.、Malacca Str、Singapore Str、Philip Channel、Chittagong Roads、Mongla Anchorage、Colombo Anchorage、Chennai Anchorage、Cochin anchorage、Kandla、Southern Red Sea、Gulf of Aden、Somali coast、Conakry and 、Nigeria各港
 これらの海域に就航する際は海賊防止対策に万全を期すとともに、海賊による襲撃や不審船を見かけた場合にはIMB海賊センターに報告していただきたい。当センターは24時間稼動しており、電話連絡先は ++60-3-201-0014。

2000年の傾向

 世界中で2000年に報告を受けた事犯は469件に達しており、1999年に比べて56%の増加となっている。これは、1991年の4.5倍である。ほとんどの襲撃は錨泊中か航行中に発生している。武装海賊による暴行も増加しており、乗組員の負傷事例が増加している。1999年の死者の数は3名であったが72名に増加している他、26名がいまだに行方不明となっている。
 インドネシアは最も発生件数が多く、世界全体の1/4を占めている。同国の政治、経済上の問題が起因していると言われているが、同国が本気で対策に取組まない限り大幅に減少する見通しは無い。
 世界で最も船舶が輻輳する海域の一つであるマラッカ海峡は長年比較的安全であったが、1999年が2件であったのに対し2000年は75件の事犯が発生している。王立マレーシア海上警察は海賊対策に取組むため特別部隊を設けた。特別部隊は二つの海賊団を捕らえることができたが、他にも通峡船を襲撃強奪し続けているグループが存在している。同海峡で増加する脅威に立ち向かうためマレーシアは強化策をとったが、インドネシア当局がこれにならうことを期待する。
 バングラディッシュでの発生件数は1999年の倍であり世界で3番目に多い。 海運業界は同港における暴力的な襲撃を憂慮しIMB海賊センターに対策を講じるよう要請し同センターはそれらの行為を阻止するための対策を教示した。
 インドでも実質的に事犯が増加しているが、当局は状況および問題を阻止するためのとるべき手段は心得ている。
 エクアドルおよび紅海南部でも襲撃件数が増加している。
 シンガポール海峡ではシンガポールとインドネシア海軍のパトロールのおかげで、1999年に比べ減少したが、2000年の9月までは発生件数がなかったものの、最後の3ヶ月の間に5件発生した。
 未遂事件もかなり増えており、これは以前よりも多くの船舶が海賊警戒体制をとっていることを示すものであり実被害が防止されている。最も効果的な防止策は見張り体制の維持である。
 ASEAN各国およびSARC各国を中心に日本がイニシアチブをとり何回もの海賊会議が開催されているが、当該域の政府が海賊の撲滅により一層取り組むことが望まれる。日本が開催した会議は地域間の協力を進める上で影響力のあるものであった。

主な事件の概要

469件の詳細はpage20-75のとおり。以下に、そのうちの主な重大事犯の詳細を述べる。

アンダマン海
 2000年2月6日タイの船舶がハイジャックされたとの報が入った。2月6日にロシアのタンカーが北緯11度39.6分、東経95度4.8分において救難信号を受信した。同タンカーは転覆したライフラフトからタイ国籍のPhilin 21 号の乗組員12名を救助した。救助された乗組員によれば、2月6日武装海賊に乗り込まれ銃を突きつけられライフラフトに乗ることを強いられたとのこと。本件に関し、センターは正式な報告は受けていない。また、Philin 21号についてのその他の情報もない。

アンゴラ
2000年5月17日、St.Vincent, Grenadines 籍の雑貨船、Pacific Challenger 号が現地時間0330頃、Luanda anchorage にて錨泊中のところを武装海賊に襲撃された。およそ9名の賊がフックを使い本船によじ登った。当直士官が賊を発見し警報を発したが、賊は2名の乗組員を追い回した上、1名を意識不明になるほど激しく殴打し、もう1人に重傷を負わせた。乗組員との間で格闘が繰り広げられたが武器を持つ海賊に対してはなすすべもなく、縛られた乗組員が海に投げ込まれそうになる場面もあった。本船は当局に連絡を試みたが、何の応答も無かった。

バングラディッシュ
2000年8月9日現地時間0100頃Chittagon 沖錨地において、武装海賊がパナマ籍船 Amethyst 号に乗り込もうとした。乗組員、ワッチマンが銃弾を受けたが乗組員等の抵抗を受け退散した。同船は付近船舶の支援を受け、港湾当局は本船を優先的に着岸させた。
 バングラディッシュの底引き網漁船 Shafiullah号が、2000年10月3日海賊に襲撃され、Sandwip島沖のBauriaで漂流しているところを発見された。9名の遺体が本船の冷蔵室で発見された。冷蔵庫は外から鍵が掛けられていた。犠牲者は殺害された後、冷蔵庫に投げ込まれたものとみられ遺体は検死のためChittagon に運ばれた。
 2000年10月6日0057頃、Chittagon 沖の錨地(北緯22度14.3分、東経91度44分)において、バハマ籍のサプライ船Dea Champion号が襲撃を受けた。約12名のナイフと銃で武装した海賊が2隻のボートで接近し乗込み、これを阻止しようとした二等航海士が発砲され腕および腹部に銃弾を受けた。賊は鍵がかかっていたため居住区に入ることはできなかったが、ストア内の機器類を強奪し、一隻は0132、もう一隻は0142に立ち去った。現地当局に通報が入り、バングラディッシュの海軍船艇が現場に向かった。

エクアドル
 2000年7月3日1930頃 Bolivar 錨地でマルタ籍冷蔵船Minnesota号 6,794DWがおよそ20人のナイフと銃で武装した海賊に乗り込まれ、乗組員が銃弾を受け負傷した。船長はVHFで陸上と連絡を試みたが何の応答も得られなかった。その後、船長は付近の船舶に襲撃されたことを知らせた。海賊が去った後、船長はより安全な海域に移動することを決め他の船舶もこれに従った。本船着岸時、港湾当局によって武装したガードマンが配置された。

ギリシャ
 2000年7月27日6時、銃を持った男がヨットErato 号をハイジャックしモロッコのカサブランカに行くよう求めた。同ヨットは出港を強いられ、操縦者および4人の家族は囚われの身となった。コーストガードはヨットを追跡のうえ、ダイバーがヨットを急襲し5人を救出した。銃撃戦の末、犯人は射殺されたが、コーストガードも1人が腹部に銃弾を受け重傷を負った。

ギニア
 2000年5月17日、マルタ籍雑貨船 Venezia号が袋詰めの米揚荷役のためConakry に入港した。通常であれば14日以内で荷役を終えるところを、日常的に盗難があるため59日を要した。2000年7月2日、本船に乗り込もうとしている一味を消火ホースで撃退しようとした際に船長と乗組員が銃弾を受けた。船長は現地当局に助けを求めたが応答が無く、居住区に鍵を掛け中に閉じこもった。結局、救助信号はオランダのコーストガードが受信し、そこからマルタ海軍経由で旗国政府に伝えられた。ギニア外務省は救助のために誰も差し向けなかったが、船主の個人的な繋がりで支援が与えられた。

インドネシア
 2000年4月24日2030 頃Bontang 錨地で、インドのバルクキャリア Jag Kanti 号に6名の武装海賊が左舷錨から侵入した。海賊警戒中の当直士官が襲われ手を縛られた上殺意を示され脅かされた。警戒中の他の乗組員が異変に気づき非常警報を鳴らしたが、賊は最初に襲った乗組員の腹部を刺して逃走した。事件は当局に通報され、負傷を追った乗組員は病院に搬送された。
 Surabayaでは16,000DWTのバルクキャリアがおよそ20名の賊に襲われている。本船は停泊中武装強盗に備えて防止対策をとっていたため、犯罪者に動揺を与えたようだ。賊は貨物や本船のストアおよび機器を盗むことを目的としていたようだが、後に石や火炎瓶を投げ始め、これにより3本の係船索が燃え、乗組員1人が負傷した。本件は乗組員にとって恐ろしい体験であったが、幸いにして重傷を負った者はいなかった。
 Kuching に向け、Port Dickson を出港したマレーシア籍タンカーPetchem号が9月25日2時30分頃、1-40.1N, 106-01Eにおいてハイジャックされた。当時本船はガスオイル2,547mt, ジェット燃料834mtを積載しており、0230頃、甲板手が船橋右舷のドアを開けたところを武装海賊に襲われている。甲板手は逃げようとした際に刀で右膝を切られ、二等航海士とともに暴行を受けたうえ縛られた。顔をマスクで隠した21名の賊は残りの乗組員を集め縛り上げ、本船のコントロールを完全に掌握した。賊は船名および煙突の色を塗り替え、救命艇、救命筏のマークを消去し、マレーシアのJohor南部に向かった。見知らぬタンカーが同日真夜中頃接舷し、本船乗組員二人に協力させて積荷のガスオイルすべてを移送した。無線機器の線がすべて切断されていたため、移送後、賊が立ち去った後も乗組員が丸一日以上拘置された。21名の賊はインドネシア人であると言われている。通信長はなんとかVHFを復旧させ事件を通報した。賊は2,463mtのガスオイルは盗んだが、834mtのジェット燃料には手を付けていない。幸いにして、重傷を負った者はいない。

マラッカ海峡
 やし油6,000トンを積載したケミカルタンカー Global Mars号が2000年2月22日マレーシアのPort KelangをインドのHaldiaに向け出港した。本船は2月23日23時頃、銃とナイフで武装した賊にハイジャックされた。賊は部屋に鍵をかけ閉じこもった乗組員に対しては威嚇の発砲を行うなど、金庫を壊し、金品等を強奪。乗組員は目隠しをされたうえ2月24日ボートに移乗させられた。13日間拘束された後、3月7日機関付きの小型ボートに移乗させられ西に向かうよう指示された。3月8日機関が故障したが、修理後は東に向かい、9日夜漁船に救助され翌日上陸した。 5月30日、IMB情報に基づき調査を進めていた中国当局は、Zhuhai近くのDangan島沖で錨泊している本船を発見した。船名がBulawanと書き換えられており、比人11名、ビルマ人9名の乗組員が逮捕され、ピストル1丁と弾丸189発が押収された。その後乗組員は釈放されているがインターポールを通じて、ギャング一味の行方を追っているところである。本船は船主に返還された。IMBは、香港当局(SAR)が船舶の捜索で果たした役割および法を執行させ速やかに行動し船舶を拘束したことに感謝している。
 キプロス籍コンテナ船Tiger Bridge号が8月29日0230頃シンガポールからPort Kelangに向かう途上1-54.7N, 102-18.9E において襲撃された。 マスクをした6名の武装海賊は左舷後部から居住区を経て船橋に侵入し、二等航海士とその妻に手錠をかけ、二等航海士に船長を船橋に呼ぶよう命令し、従わない場合は彼の妻を殺すと脅かした。船長は刀を持った賊の一人に襲われ、左手の指二本に深い傷を負った。船長と二等航海士は船長室に閉じこめられ、金庫から23,000USDを奪った他、船長の所持金、所持品を奪った。マスクをとった海賊一人はどう猛な形相を呈していた。わずか15分の出来事であり賊が立ち去った後、船長は関係当局に通報し、海上警察が到着し事情聴取を行った。

シンガポール海峡
 2000年10月1日 0130頃、インドネシア籍のバルクキャリアHazel 1号が錨地(1-13.5N, 103-34.39E)において、ナイフとピストルで武装しマスクをしたおよそ21名の海賊に乗り込まれた。乗組員全員が縛られ猿ぐつわを噛まされたうえ、金品が強奪された。海賊は本船要目のリストをとり貨物について尋問し、船長に船を動かすよう指示した。エンジンが修理のため開放されていたため、動かすことはできなかったが、本船をハイジャックする意図があったものと思われる。賊は0240本船を去った。

ソマリア
 2000年1月27日 13-03N, 48-41E、オーストラリアのヨットGone Troppo号が船体が青色で開放型のボートに乗った5人の賊から自動小銃により発砲された。ヨットのクルーの一人であるオーストラリア人女性が怪我を負い、船体水面上が被弾した。賊はヨットに乗り込み 中短波無線機その他を取り外し奪い去った。ヨットに対する同種の事件は3ヶ月前から発生しており今回で3度目である。
 2000年7月4日、フランス籍Mad Express号が錨地にてハイジャックされた。本船はBargalの北東部近くに機関故障のために錨泊していたところを襲撃され、9名の乗組員が銃を持った賊に拘束された。ソマリアは内戦状態が続いており実効的な政府は無いが、Puntland州の自主暫定政権は乗組員を救出するため軍隊を派遣した。海賊は彼らをおそれ、いったんはBargalに連れ去った乗組員を船に返した。 海賊は本船および乗組員を解放する代わりに身代金を要求した。 二つの発電機や米など本船から略奪されたものはBargalの街角で売りに出されていた。Puntland当局は何とか人質、本船、貨物を取り戻した。

南シナ海
 2000年8月8日1330、シンガポールから北東224kmの海上で台湾籍漁船Shuenn Man No.12号がインドネシア海軍を装った賊に襲撃され船長が射殺された。軍服に身を包んだ賊は本船に停止を命じた後飛び乗ったが、何も損傷を与えることなく立ち去った。他の23名の乗組員(5名の台湾人、18名の中国本土人)は無事であった。

スリランカ
 2000年6月26日0200頃、食品貨物、セメント等を積載するMercs Uhana号がPoint Pedroの東北東50マイル沖において(スリランカ東海岸)数隻の小型船から襲撃を受けた。爆発物を搭載していた一隻が本船に激突し、機関室が浸水し火災が発生した。本船は同日夕刻沈没した。ライフジャケットを装着した27名は退船し、内22名がライフラフトに乗り移ったものの残りの5名が行方不明となった。賊はタミルの虎と呼ばれる過激派組織と言われており、行方不明の乗組員は彼らに引き上げられた可能性がある。

イエメン
 2000年10月12日、アデンにおいて、爆薬を搭載したテロリストのボートが米国軍艦USS Cole号に体当たりし、17名の乗組員が死亡し、32名が負傷を負った他、船体に穴があくなどかなりの損傷を与えた。

Piracy News

Shiplock
 ShipLockが改良された。月レンタル費用は280ドル。発見されにくいところに設置され、主電源および非常用バッテリーで作動する。 船主はウェブサイト上から本船位置を確認することができる(極軌道を周回する衛星を利用しているため、本船位置にもよるが一日最高15回位置情報を送信する)。 襲撃やハイジャック時のみならず、本船の動静を把握することで船舶管理上のツールとしても使用できる。 詳細はwww.shiploc.comまで。

アジアでの海賊会議
 海賊問題を検討するため11月13日〜15日、マレーシア・クアラルンプールで13ヶ国が集まり会議を開いた。
 これは日本が資金援助を行いマレーシアが開催したものであり、シンガポールおよび日本で開催された一連の海賊会議のフォローアップである。参加各国は沿岸国が多国間およびニ国間で協力を行うことが極めて重要であることに同意し、定期的に会合を持つことや情報交換を行うことが提案された。
 日本は地域のコーストガードの士官を海上保安学校に受入れることを申し出た。
 マレーシアのNational Security Division DirectorであるMr.Abdul Rahim Hussinは、本会合は海賊対策のための地域的な努力の一部であると語り、“海賊は特にマラッカ海峡等において脅威となった。当該地域における海賊事犯の驚くべき増加が沿岸国および海運業界に海賊問題への取組みを促した。本件に我々はより首尾一貫した方法で取組まなければならない。誰も単独でできることではない。マレーシアは海峡におけるパトロールを強化し、近隣諸国や国際機関とともに海賊の脅威に立ち向かう。“と述べた。
 船主は海賊の防止、抑止のために沿岸国がより協調して尽力することを求めており、マラッカ海峡およびインドネシアのシーレーンを通航する船舶に対して襲撃が増加していることを憂慮している。
 マレーシア船主協会は、海賊が乗組員の生命を脅かすだけではなく、船舶が航行不能に陥り他船と衝突すれば油その他の有害物質等が海上に流出することになり、海洋環境を脅かすものでもあると述べた。

国際協力を促進する合同訓練
 11月8日に実施された日本とインドのコーストガードによる合同訓練、11月15日に実施された日本とマレーシアのコーストガードによる合同訓練は、海賊問題の国際協力に向け歩を進めるものとして注目された。
 合同訓練の考えは、2000年4月に東京で開催された国際会議の場で日本が提案し、最近では2000年10月にボンベイで開催されたASEAN Regional Forum on combating piracyにおいて検討されたものである。
 海賊および武装強盗問題はすでに国連総会の議案にのっており2001年5月に検討される予定である。本問題をお互い協力して解決するため、容易ではないが最終的には国連安保理決議としたい向きもある。
 協力すること自体に何ら異存はないものの、特にアロンドラレインボー号、グローバルマーズ号ハイジャック事件において協力することの有効性が証明された後も、多くの国がいまだにとるべき方策をためらっている。国家の主権の問題が立ちはだかっており、高速艇や機器など物質的な支援の申し出は歓迎するものの、他国の権限が及んだり領海に海軍が入ることを快く思わない国があることは明らかである。
 日本の海上保安庁は早急に協力が必要と考えアジアの海事当局と積極的に協力を推し進める用意があると述べた。
 他方、英国政府は海上安全確保に向けIMOとともに動き始めた。英国外務大臣のPeter Hainは、海賊は正当な貿易の安定化に対する脅威であるとして、より有効な行動をとるため各国へのロビー活動を始めた。また、同国外務省は主導的役割を担うことを決め、ブラジル、中国、インド、およびフィリピンと緊急に連絡を取り始め、すでにいくらかの進展があったと述べている。

ASEAN Regional forum meeting in Mumbai, October, 2000
20ヶ国から国防および海軍の関係者が本会議に参加した。海賊対策が真摯に議論され、パトロールの増強や処罰を厳しくする方法を調査した。
 中国は、死刑および終身刑が犯罪の抑止力になると述べ、これまでにも死刑執行や5年から終身刑までの厳しい刑罰を課すなど、前向きに海賊との戦いに取り組んでいる。
インドのコーストガードのDirector General, Vice Admiral John Desilvaによれば、中国が厳しい姿勢をとっていることで、海賊や犯罪組織は貨物の処分地としてインドやイランに目を向けていると語った。海軍やコーストガードによる強い警察力とパトロールおよび犯罪者に対する抑止的刑罰が悪を根絶すると述べた。昨年、インド海軍とコーストガードはアラビア海で2日間にわたる追跡の後ハイジャックされた船舶を捕らえている。
 Vice Admiral Dedilvaは各国代表者に対して、インドコーストガードは、空からの監視のための新しい双発の軽量ヘリコプター、武装化し外洋において32ノットの能力を有するアルミ製パトロールボートの導入により近代化を図ると語った。
 各国代表者は、海賊被害のない国を含め各国に対し一層の協力を要請した。  米国第7艦隊のCommander Toto Duaは、米国は当該海域に常時軍事勢力を有しており、米国が直面している問題ではないが海賊対策を全面的に支持すると述べた。第7艦隊はアジア太平洋地域において反海賊パトロールを実施する。
 在インドのフランス海軍駐在武官Commander Jean Armandは、欧州連合の国々は、自国の商船が種々なアジアの航路を航行していることから、海賊の脅威に懸念を有していると述べた。

捕らえられた海賊
 王立マレーシア警察は10月と11月にインドネシア人からなる2つのギャング団をマラッカ海峡で捕らえた。
 海上警察のCommander SAC II Muhamad Mudaによれば、当一味は以前より手配されていた者達であり商船や漁船を標的としていたとのこと。
 最初の事例では、海上警察がボートに乗る6名の海賊を発見、追跡し、逃走する海賊の逮捕に至った。次の事例では、10名の海賊が逮捕されたが、海賊が警察のパトロールボートに体当たりした際に3人の海賊が負傷した。
 海上警察の調査によって、一味がこれまでに海峡内で数隻の船を襲撃していることが明らかになった。引続き取り調べを行い余罪等を追及する。
 マレーシア警察の功績が讃えられた。

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