主な事件の概要
469件の詳細はpage20-75のとおり。以下に、そのうちの主な重大事犯の詳細を述べる。
アンダマン海
2000年2月6日タイの船舶がハイジャックされたとの報が入った。2月6日にロシアのタンカーが北緯11度39.6分、東経95度4.8分において救難信号を受信した。同タンカーは転覆したライフラフトからタイ国籍のPhilin 21 号の乗組員12名を救助した。救助された乗組員によれば、2月6日武装海賊に乗り込まれ銃を突きつけられライフラフトに乗ることを強いられたとのこと。本件に関し、センターは正式な報告は受けていない。また、Philin 21号についてのその他の情報もない。
アンゴラ
2000年5月17日、St.Vincent, Grenadines 籍の雑貨船、Pacific Challenger 号が現地時間0330頃、Luanda anchorage にて錨泊中のところを武装海賊に襲撃された。およそ9名の賊がフックを使い本船によじ登った。当直士官が賊を発見し警報を発したが、賊は2名の乗組員を追い回した上、1名を意識不明になるほど激しく殴打し、もう1人に重傷を負わせた。乗組員との間で格闘が繰り広げられたが武器を持つ海賊に対してはなすすべもなく、縛られた乗組員が海に投げ込まれそうになる場面もあった。本船は当局に連絡を試みたが、何の応答も無かった。
バングラディッシュ
2000年8月9日現地時間0100頃Chittagon 沖錨地において、武装海賊がパナマ籍船 Amethyst 号に乗り込もうとした。乗組員、ワッチマンが銃弾を受けたが乗組員等の抵抗を受け退散した。同船は付近船舶の支援を受け、港湾当局は本船を優先的に着岸させた。
バングラディッシュの底引き網漁船 Shafiullah号が、2000年10月3日海賊に襲撃され、Sandwip島沖のBauriaで漂流しているところを発見された。9名の遺体が本船の冷蔵室で発見された。冷蔵庫は外から鍵が掛けられていた。犠牲者は殺害された後、冷蔵庫に投げ込まれたものとみられ遺体は検死のためChittagon に運ばれた。
2000年10月6日0057頃、Chittagon 沖の錨地(北緯22度14.3分、東経91度44分)において、バハマ籍のサプライ船Dea Champion号が襲撃を受けた。約12名のナイフと銃で武装した海賊が2隻のボートで接近し乗込み、これを阻止しようとした二等航海士が発砲され腕および腹部に銃弾を受けた。賊は鍵がかかっていたため居住区に入ることはできなかったが、ストア内の機器類を強奪し、一隻は0132、もう一隻は0142に立ち去った。現地当局に通報が入り、バングラディッシュの海軍船艇が現場に向かった。
エクアドル
2000年7月3日1930頃 Bolivar 錨地でマルタ籍冷蔵船Minnesota号 6,794DWがおよそ20人のナイフと銃で武装した海賊に乗り込まれ、乗組員が銃弾を受け負傷した。船長はVHFで陸上と連絡を試みたが何の応答も得られなかった。その後、船長は付近の船舶に襲撃されたことを知らせた。海賊が去った後、船長はより安全な海域に移動することを決め他の船舶もこれに従った。本船着岸時、港湾当局によって武装したガードマンが配置された。
ギリシャ
2000年7月27日6時、銃を持った男がヨットErato 号をハイジャックしモロッコのカサブランカに行くよう求めた。同ヨットは出港を強いられ、操縦者および4人の家族は囚われの身となった。コーストガードはヨットを追跡のうえ、ダイバーがヨットを急襲し5人を救出した。銃撃戦の末、犯人は射殺されたが、コーストガードも1人が腹部に銃弾を受け重傷を負った。
ギニア
2000年5月17日、マルタ籍雑貨船 Venezia号が袋詰めの米揚荷役のためConakry に入港した。通常であれば14日以内で荷役を終えるところを、日常的に盗難があるため59日を要した。2000年7月2日、本船に乗り込もうとしている一味を消火ホースで撃退しようとした際に船長と乗組員が銃弾を受けた。船長は現地当局に助けを求めたが応答が無く、居住区に鍵を掛け中に閉じこもった。結局、救助信号はオランダのコーストガードが受信し、そこからマルタ海軍経由で旗国政府に伝えられた。ギニア外務省は救助のために誰も差し向けなかったが、船主の個人的な繋がりで支援が与えられた。
インドネシア
2000年4月24日2030 頃Bontang 錨地で、インドのバルクキャリア Jag Kanti 号に6名の武装海賊が左舷錨から侵入した。海賊警戒中の当直士官が襲われ手を縛られた上殺意を示され脅かされた。警戒中の他の乗組員が異変に気づき非常警報を鳴らしたが、賊は最初に襲った乗組員の腹部を刺して逃走した。事件は当局に通報され、負傷を追った乗組員は病院に搬送された。
Surabayaでは16,000DWTのバルクキャリアがおよそ20名の賊に襲われている。本船は停泊中武装強盗に備えて防止対策をとっていたため、犯罪者に動揺を与えたようだ。賊は貨物や本船のストアおよび機器を盗むことを目的としていたようだが、後に石や火炎瓶を投げ始め、これにより3本の係船索が燃え、乗組員1人が負傷した。本件は乗組員にとって恐ろしい体験であったが、幸いにして重傷を負った者はいなかった。
Kuching に向け、Port Dickson を出港したマレーシア籍タンカーPetchem号が9月25日2時30分頃、1-40.1N, 106-01Eにおいてハイジャックされた。当時本船はガスオイル2,547mt, ジェット燃料834mtを積載しており、0230頃、甲板手が船橋右舷のドアを開けたところを武装海賊に襲われている。甲板手は逃げようとした際に刀で右膝を切られ、二等航海士とともに暴行を受けたうえ縛られた。顔をマスクで隠した21名の賊は残りの乗組員を集め縛り上げ、本船のコントロールを完全に掌握した。賊は船名および煙突の色を塗り替え、救命艇、救命筏のマークを消去し、マレーシアのJohor南部に向かった。見知らぬタンカーが同日真夜中頃接舷し、本船乗組員二人に協力させて積荷のガスオイルすべてを移送した。無線機器の線がすべて切断されていたため、移送後、賊が立ち去った後も乗組員が丸一日以上拘置された。21名の賊はインドネシア人であると言われている。通信長はなんとかVHFを復旧させ事件を通報した。賊は2,463mtのガスオイルは盗んだが、834mtのジェット燃料には手を付けていない。幸いにして、重傷を負った者はいない。
マラッカ海峡
やし油6,000トンを積載したケミカルタンカー Global Mars号が2000年2月22日マレーシアのPort KelangをインドのHaldiaに向け出港した。本船は2月23日23時頃、銃とナイフで武装した賊にハイジャックされた。賊は部屋に鍵をかけ閉じこもった乗組員に対しては威嚇の発砲を行うなど、金庫を壊し、金品等を強奪。乗組員は目隠しをされたうえ2月24日ボートに移乗させられた。13日間拘束された後、3月7日機関付きの小型ボートに移乗させられ西に向かうよう指示された。3月8日機関が故障したが、修理後は東に向かい、9日夜漁船に救助され翌日上陸した。 5月30日、IMB情報に基づき調査を進めていた中国当局は、Zhuhai近くのDangan島沖で錨泊している本船を発見した。船名がBulawanと書き換えられており、比人11名、ビルマ人9名の乗組員が逮捕され、ピストル1丁と弾丸189発が押収された。その後乗組員は釈放されているがインターポールを通じて、ギャング一味の行方を追っているところである。本船は船主に返還された。IMBは、香港当局(SAR)が船舶の捜索で果たした役割および法を執行させ速やかに行動し船舶を拘束したことに感謝している。
キプロス籍コンテナ船Tiger Bridge号が8月29日0230頃シンガポールからPort Kelangに向かう途上1-54.7N, 102-18.9E において襲撃された。 マスクをした6名の武装海賊は左舷後部から居住区を経て船橋に侵入し、二等航海士とその妻に手錠をかけ、二等航海士に船長を船橋に呼ぶよう命令し、従わない場合は彼の妻を殺すと脅かした。船長は刀を持った賊の一人に襲われ、左手の指二本に深い傷を負った。船長と二等航海士は船長室に閉じこめられ、金庫から23,000USDを奪った他、船長の所持金、所持品を奪った。マスクをとった海賊一人はどう猛な形相を呈していた。わずか15分の出来事であり賊が立ち去った後、船長は関係当局に通報し、海上警察が到着し事情聴取を行った。
シンガポール海峡
2000年10月1日 0130頃、インドネシア籍のバルクキャリアHazel 1号が錨地(1-13.5N, 103-34.39E)において、ナイフとピストルで武装しマスクをしたおよそ21名の海賊に乗り込まれた。乗組員全員が縛られ猿ぐつわを噛まされたうえ、金品が強奪された。海賊は本船要目のリストをとり貨物について尋問し、船長に船を動かすよう指示した。エンジンが修理のため開放されていたため、動かすことはできなかったが、本船をハイジャックする意図があったものと思われる。賊は0240本船を去った。
ソマリア
2000年1月27日 13-03N, 48-41E、オーストラリアのヨットGone Troppo号が船体が青色で開放型のボートに乗った5人の賊から自動小銃により発砲された。ヨットのクルーの一人であるオーストラリア人女性が怪我を負い、船体水面上が被弾した。賊はヨットに乗り込み 中短波無線機その他を取り外し奪い去った。ヨットに対する同種の事件は3ヶ月前から発生しており今回で3度目である。
2000年7月4日、フランス籍Mad Express号が錨地にてハイジャックされた。本船はBargalの北東部近くに機関故障のために錨泊していたところを襲撃され、9名の乗組員が銃を持った賊に拘束された。ソマリアは内戦状態が続いており実効的な政府は無いが、Puntland州の自主暫定政権は乗組員を救出するため軍隊を派遣した。海賊は彼らをおそれ、いったんはBargalに連れ去った乗組員を船に返した。 海賊は本船および乗組員を解放する代わりに身代金を要求した。 二つの発電機や米など本船から略奪されたものはBargalの街角で売りに出されていた。Puntland当局は何とか人質、本船、貨物を取り戻した。
南シナ海
2000年8月8日1330、シンガポールから北東224kmの海上で台湾籍漁船Shuenn Man No.12号がインドネシア海軍を装った賊に襲撃され船長が射殺された。軍服に身を包んだ賊は本船に停止を命じた後飛び乗ったが、何も損傷を与えることなく立ち去った。他の23名の乗組員(5名の台湾人、18名の中国本土人)は無事であった。
スリランカ
2000年6月26日0200頃、食品貨物、セメント等を積載するMercs Uhana号がPoint Pedroの東北東50マイル沖において(スリランカ東海岸)数隻の小型船から襲撃を受けた。爆発物を搭載していた一隻が本船に激突し、機関室が浸水し火災が発生した。本船は同日夕刻沈没した。ライフジャケットを装着した27名は退船し、内22名がライフラフトに乗り移ったものの残りの5名が行方不明となった。賊はタミルの虎と呼ばれる過激派組織と言われており、行方不明の乗組員は彼らに引き上げられた可能性がある。
イエメン
2000年10月12日、アデンにおいて、爆薬を搭載したテロリストのボートが米国軍艦USS Cole号に体当たりし、17名の乗組員が死亡し、32名が負傷を負った他、船体に穴があくなどかなりの損傷を与えた。 |