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IMO(国際海事機関)における海賊問題の検討の経緯
1. 1983年11月決議第545(13)号「船舶に対する海賊行為及び武装強盗の防止策」
1) 関係各国政府に対し、最優先事項として管轄海域または隣接海域における船舶に対する海賊行為等の防止・抑制のため必要なあらゆる対策を講ずるよう強調する。

2) 各国政府に対し、船主、船舶運航者、船長等に海賊行為等を防止しまたは被害を最小限とするための助言を行なうよう要請する。

3) 関係各国政府に対し、海賊行為等の発生した場所、その時の状況および沿岸国によって講じられた措置につき報告するよう要請する。

2. 1991年11月決議第683(17)号「船舶に対する海賊行為及び武装強盗の防止並びに抑止」
1) 各国政府に対し、最優先事項として管轄海域または隣接海域における船舶に対する海賊行為等の防止・抑制のための努力を促進するとともに、安全対策の強化を含め、より広範かつ適切な行動をとることを要請する。

2) 近隣諸国政府に対し、海賊行為の防止および抑止のための同等の行動をとることを要請する。

3) 各国政府に対し、海賊行為等の襲撃やその手口に関する情報は、当該水域に入域する通航船舶に提供されることを確保するよう要請する。

4) 各国政府に対し、海賊行為等の被害に遭った自国船籍からの情報を適切かつ詳細にIMOに報告することを求める。

3. 1993年5月
1)MSC回章「船舶に対する海賊行為及び武装強盗の排除のための各国政府への勧告」(MSC/Circ.622)
海賊行為等の正確なデータの把握、撃退のための行動計画策定および訓練、連絡体制の確立、地域協力の発展など実務ベースの内容を網羅

2) MSC回章「船舶に対する海賊行為及び武装強盗の防止並びに抑止にかかる船主、船舶運航者、船長及び乗組員のためのガイド」(MSC/Circ.623)
現金の所持から襲撃時の対応方法の策定と訓練の実施、錨地選定の留意事項、無線通信方法に至る助言まで相当細部に亘る内容が盛り込まれている。

4. 1993年11月決議第738(18)号「船舶に対する海賊行為及び武装強盗の防止並びに抑止に関する方策」
1)自国籍船に対し、海賊行為等の予防策、海賊行為等の発生した場合の早期通報に関する手続きを推奨することを強調する。

2) 近隣国との連携を確立し合同パトロールを含めた協力体制を発展させることを要請する。

3) 海賊行為を防止し、即応するための監視体制、探知技術および対応能力の検討を要請する。

4) 襲撃を受けた場合に救助調整機関等が適切に治安機関に連絡し、緊急対応要領が実行されることを求める。

5. 1997年5月 MSC68

IMO事務局長に対し、最も頻繁に海賊行為等が発生する国々と協議を行い、当事国に専門家の調査団を派遣するよう求めた。これを受け、1998年10月にインドネシア、マレーシア、フィリピン、ブラジルに調査団が派遣された。

6. 1998年6月 MSC69

中南米、東南アジア、西アフリカおよびインド洋の4地域において地域セミナーを開催することが提案され、

1) 1998年6月 ブラジル

2) 1999年2月 シンガポール にて地域セミナーが開催された。

第一号決議「海賊行為・船舶に対する武装強盗の防止・抑圧」

2-1. 沿岸各国に対し、自国の海域・港湾内での海賊行為等を防止し抑圧するために必要なインフラ整備を求める。

2-2. 沿岸国に対し、海賊行為等への対応に関わる煩雑な手続きを減らすことを勧告する。

2-3. 通航船舶に警告を発するための統一的な通信手段の手順・ガイドラインを策定するようIMOに提言する。

第二号決議「海賊行為・船舶に対する武装強盗に対する適切で統一的な罰則」
・海賊事件の捜査と処罰に関するコードの策定

7. 1999年5月 地域セミナーでの決議を考慮し、下記事項を追加したMSC回章(MSC/Circ.622、MSC/Circ.623)の改正案が承認された
1) 被害報告促進のため船舶に不当な遅延や追加経費負担を強いないこと。

2) 海賊行為を犯した者を逮捕し起訴できるよう法制度を確立すること。

3) 襲撃を認知した沿岸国の執行体制確立のための留意事項

4)簡易な通報により他国領海での追跡を可能とする等の地域協力に関する具体的事項

5)船上での予防策、沿岸国当局との連絡手続き、通報フォーマット、安全のための基本事項

8. 2000年5月 英国を事務局として以下を内容とする「海賊及び武装強盗の捜査に関する国際的なコード」策定のためのコレスポンディンググループが設置され、MSC72においてそのコード案が報告された。引続き検討の上、次回MSC73に報告される。
1)捜査の目的、捜査官の経験・技能の重要性等の捜査にかかる重要基本事項

2)人命の救助、犯人の逃走防止、現場保存及び採証等の初動捜査にかかる基本事項

3)採証記録及び証言録取等の具体的捜査にかかる基本事項

(注:「海と安全」平成12年1月号より抜粋)
※MSC : IMO海上安全委員会
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