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海賊事件は2000年に次ぐ高い水準
〜 2002年の海賊事件発生状況 〜
 国際商業会議所(International Chamber of Commerce = ICC)の下部組織である国際海事局(International Maritime Bureau = IMB)の海賊情報センター(クアラルンプール)は、2002年に同センターに連絡のあった海賊事件(未遂事件も含む)についての報告書を発行した。その概略は以下のとおりですが、関係各社におかれては、政府等関係機関に対し防止対策の強化を要請するためにも、事件に巻き込まれた際には関係先への通報の励行をお願いします。

 2002年に報告のあった海賊事件の件数は370件で、2001年より35件、約10%増加したほか、過去最高を記録した2000年の469件に次いだ高い水準となった。2001年に比べ、海賊に乗り込まれたケースが増加したことから、IMBは、多くの船舶が海賊対策に油断している可能性があるとして、厳重な見張りを励行するよう警鐘を鳴らしている。
 地域別に見ると、東南アジアで153件(41%)が発生し、依然として世界で最も海賊事件の多い地域となっており、これにアフリカ(78件)、アメリカ(65件)、インド等(52件)が続いている。東南アジアの海賊事件のほとんどはインドネシアで発生(103件)している。マラッカ海峡は2000年には75件を記録したが、2001年、2002年はそれぞれ17件、16件と低く抑えられている。
また、ハイジャック事件が増加傾向にあり、2001年の16件から2002年は25件に増加した。このうち20件は東南アジアで発生しており、パームオイルや燃料油を輸送するタグボート/バージなどの小型船が多く狙われているとしている。

[主な事件の概要]
(1)  2002年3月15日、1950トンの燃料油を積み、ヤンゴン(ミャンマー)に向けシンガポールを出港したベリーズ籍タンカー「ハン・ウェイ」号(2,890トン)が、出港2日後にタイ・プーケット沖で何者かに乗っ取られた。2ヵ月後、同船に酷似した船がバンコク南東沖のシー・チャン島付近に錨泊しているのが発見された。船名が変えられ、ホンジュラスの旗を掲げ、船体の色が塗り替えられていたが、備品や造船所プレート等より「ハン・ウェイ」号であることが確認された。積載貨物は抜き取られていた。同号の乗組員13人は小型ボートへ移乗させられ、漂流中のところ、インドネシア・アチェにて救助された。

(2)  同年6月15日、2万トンの塩化カリウムを積載した貨物船が、スエズ運河を通過し、機関修理のためソマリア北方海域で停船中、13人の武装集団に乗り込まれ、占拠された。要求された身代金が支払われ、7月3日、船舶および23人の乗組員は解放された。その間、IMBの要請によりドイツ艦船がソマリア領海外で待機していた。なお、この事件と同時期にソマリア沿岸では同様の海賊事件が2件発生した。

(3)  同年9月28日、マレーシア籍油タンカーが2900トンの燃料油を積載し、Labuan(ブルネイ)へ向けMelaka(マレーシア)を出港後、マラッカ海峡南のPulau lyu Kecil付近において10数人の武装集団に襲撃された。全乗組員は船室内に監禁されたまま、貨物の燃料油を他の船舶に抜き取り逃走。幸いにして乗組員に負傷者なし、船舶の通信機器は破壊されていた。

(4)  同年11月24日、マラッカ海峡において、インドネシア Aceh州のLanagsaからマレーシアのPenangへ向かうマレーシア籍貨物船を武装集団が襲撃。同船のエンジンを破壊し、船長以外の乗組員12人とともに漂流させた。船長はAcehへ連行され身代金が要求された。身代金が支払われた後船長は解放されたが、船舶および12人の乗組員は以前行方不明。

海賊事件発生件数推移

国・地域別海賊発生件数

ハイジャック事件発生件数


海賊発生の上位10港
港名 件数 港名 件数
チッタゴン
(バングラデシュ)
25 ホーチミン
(ベトナム)
9
バリクパパン
(インドネシア)
21 ジョージタウン
(ガイアナ)
9

ラゴス(ナイジェリア)
12 ガイアキル
(エクアドル)
8

サマリンダ(インドネシア)
11
ベラワン(インドネシア)
8
ジャカルタ-ウジュンパンダン
(インドネシア)
11 リオハイナ
(ドミニカ共和国)
7
チェンナイ
(インド)
7


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