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海賊事件さらに増加、2000年に次ぐ高水準
〜 2003年の海賊事件発生状況 〜
 国際商業会議所(International Chamber of Commerce = ICC)の下部組織である国際海事局(International Maritime Bureau = IMB)の海賊情報センター(クアラルンプール)は、2003年に同センターに連絡のあった海賊事件(未遂事件も含む)の報告書を発行した。
 また、国土交通省海事局外航課は、わが国外航海運事業者(201社)を対象に2003年に日本関係船が受けた海賊行為等の被害状況を調査し、その結果を公表した。
 これらの概要は以下のとおりであるが、関係各社におかれても、政府等関係機関に対する防止対策強化の要請に資するため、事件に巻き込まれた際には関係先への通報をお願い致します。
1. 2003年IMB海賊レポート
 2003年に報告のあった海賊事件の件数は445件で、2002年より75件、約20.3%増加したほか、過去最高を記録した2000年の469件に次ぐ高い水準となった。
 地域別に見ると、東南アジアで170件(38%)が発生し、依然として世界で最も海賊事件の多い地域となっており、これにアフリカ(93件)、インド等(87件)、アメリカ(72件)が続いている。東南アジアの海賊事件のほとんどはインドネシア(121件)で発生している。マラッカ海峡は2001年(17件)、2002年(16件)と、ここ数年減少傾向にあったが、2003年は28件と増加した。
また、ハイジャック事件は、ここ2、3年、増加傾向を示していたが、本年は19件であり、昨年の25件から減少した。([表1]〜[表3]ご参照)

[主な事件の概要]
(1)  2月7日、ウクライナ籍タンカーがブラジル沖で、重火器で武装した10名前後の海賊に襲われた。警報が鳴ったため全乗組員が集まったところ、海賊が発砲し、チーフ・オフィサーが頭部を撃たれて死亡、セカンド・オフィサーも重症を負った。その後、海賊は乗組員の私物を盗んで逃走した。

(2)  2月25日、マレーシア籍ケミカルタンカーがインドネシア沖を航行中に、4隻のボートに分乗した8名の海賊に襲撃された。海賊はマシンガンを発砲し、本船は右舷に被弾、ブリッジのVHFラジオ等が損傷した。チーフ・エンジニアが頭部を負傷したが、海軍のボートに救助され病院に搬送された。

(3)  4月8日、インドネシア籍貨物船がマラッカ海峡を航行中に、3隻のボートに乗った海賊に襲われた。海賊は本船の両側から発砲するとともに、船長に停船を命じて乗り込んだ。その後、全乗組員を甲板上に集め、本船の書類や機器を奪い、船長、チーフ・オフィサー等を誘拐して去った。

(4)  5月13日、香港のコンテナ船がインドネシアを航行中に海賊に襲撃された。銃およびナイフで武装した海賊が船首から乗り込み、乗組員1名を人質にとってブリッジまでくると、ピストルでチーフ・オフィサーの頭部に発砲した。その後、本船にあった現金および機器、船長等の私物を強奪して去った。

(5)  8月9日、台湾籍の冷凍船「Dong Yih」号がマラッカ海峡で海賊に襲撃された。同船は、31名の乗組員でシンガポールへ向かう途中、2隻のボートにより襲撃を受けたもので、これらのボートはタグボートに偽装していたため、船長は注意を払っていなかった。船長が足を撃たれるとともに船舶機器の一部が損傷した。

(6)  11月3日、航行中のカンボジア籍貨物船「MV Victory」がインドネシア沖で海賊に襲撃された。木製のスピードボートに乗った7人の海賊が同船に近づき、そのうち5人が長刀を持って船尾から乗船した。彼らはブリッジにいた乗組員をロープで縛ると船用品を盗み、その後船室で船員の金品や所持品を盗み、船長にも襲い掛かったが、チーフオフィサーがアラームを鳴らしたため逃走した。

(7)  11月28日、バハマ籍貨物船「CEC Copenhagen」がナイジェリアのLagos港に錨泊中に海賊に襲撃された。ナイフで武装した海賊4名が漁船から同船に乗り込み、乗組員に襲い掛かった。アラームが鳴り乗組員が集まってくると、海賊は船内の物品を盗んで逃走した。船長はLagos港湾局に連絡を取ろうとしたものの応答がなかった。

表-1
海賊発生件数推移

表-2
世界各地域毎の海賊発生件数の比較

表-3
ハイジャック事件発生件数


2.国土交通省
    わが国関係船舶における海賊被害状況調査

 国土交通省海事局外航課は、わが国の外航海運事業者(201社)に対してアンケート調査を実施し、2003年におけるわが国関係船舶(邦船社が所有、運航、用船している外航船舶)に対する海賊事件について別表のとおり取りまとめた。
(1) 被害件数
 2003年において、わが国関係船舶が海賊に襲われた件数は12件で、昨年の16件から減少した。被害船の船籍別の内訳は、パナマ籍11隻、香港籍1隻となっており、日本籍船は認められていない。また、日本人が乗船していた船舶は1隻であった。


(2) 発生海域
 地域別に見ると、従来と同様、インドネシア周辺を中心として東南アジア海域で11件(91.7%)発生している。


(3) 被害状況
 被害事例としては、銃器の発砲を伴う事件や日中に発生しているケースも報告されており、事件の凶悪化が伺える状況となっている。錨泊中または停泊中の船舶に小型ボートで密かに接近し、錨鎖をよじ登って甲板上に設置された救命いかだや倉庫内の船用品を盗むケースが多く見受けられるが、乗組員が負傷したケースも2件報告されている。


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