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本年上半期の海賊事件発生件数は減少するも、過去2番目の数字
〜 2004年上半期IMB海賊レポートから 〜
 国際商業会議所(International Chamber of Commerce = ICC)の下部組織である国際海事局(International Maritime Bureau = IMB)の海賊情報センター(クアラルンプール)は、2004年上半期に同センターに連絡のあった海賊事件(未遂事件も含む)の報告書を発行した。
 それによると、全世界における2004年上半期の報告件数は182件で、昨年同期の234件から減少してはいるものの、上半期の件数としては2番目に多い数字となった。
 地域別に見ると、東南アジアで全体の49%にあたる89件(うちインドネシア50件、マラッカ海峡20件)が発生しており、依然として世界で最も海賊事件の多い海域となっている。これにアフリカ地域40件、アメリカ地域22件が続いている。
 事件の態様を見ると、海賊の乗り込みによる事件は昨年同期の165件から122件へと減少、またハイジャック件数も9件から8件へと微減した。
 なお、IMBでは、特別な理由がない限り、マラッカ海峡のスマトラ沿岸、特にアチェ沖での錨泊は避けるべきであると注意喚起している。 関係各社におかれましては、政府等関係機関に対し防止対策の強化を要請するためにも、今後とも事件の通報を励行されますようお願いします。
[主な事件の概要]
(1)  2004年1月5日、インドネシア籍プロダクト・タンカーがマラッカ海峡を航行中、銃で武装した海賊の襲撃を受けてハイジャックされた。海賊は13名の乗組員を人質に取った後、身代金の要求を伝えるために船長を解放した。海賊との交渉は1ヶ月間に及んだが、海賊は4名の乗組員を射殺。残る8名の乗組員は海に飛び込み脱出した。

(2)  2004年4月7日、錨泊中のナイジェリア籍ケミカル・タンカーがナイジェリアのEscravos錨地において、マシンガンで武装した5名の海賊の襲撃を受けた。乗組員は海賊に対抗するため、警報を鳴らすとともに甲板上の消化装置で放水しようとしたが、海賊が発砲したため船内に退避してすべてのドアに鍵をかけた。海賊は本船に乗り込むと、舷窓や操舵室の扉に向かって発砲し、船橋に侵入しようとした。乗組員の何人かは船室や機関室に隠れていたが、機関長が船橋に侵入した海賊に人質に取られた。機関長は100米ドルを彼らに渡したが、海賊はこれを放棄して数千ドルを要求した。彼らはそれ以上現金を奪うことができないとわかると機関長を斧で殴り、その後、船内の備品や機材を盗み、30分後に逃亡した。

(3)  2004年4月9日、長刀で武装した海賊が、南シナ海Anambas島付近を航行中の日本籍LPG船に侵入。船内の現金を奪って逃走した。

(4)  2004年5月25日、航行中のシンガポール籍貨物船がマラッカ海峡で海賊の襲撃を受けた。海賊はスピードボートに乗って発砲し、本船を強制的に停船させた。4名の強盗はマシンガンと手榴弾で武装しており、船橋に侵入するとすべての通信機器を破壊した。彼らは船長・機関長を誘拐し、すべての貿易書類を強奪した。また、乗組員に次の寄港地であるBelawanには行かないよう脅したため、本船はマレーシア西部のPulau Angsaに入った。その後、海賊は船長・機関長の身代金を要求した。

(5)  8月9日、台湾籍の冷凍船「Dong Yih」号がマラッカ海峡で海賊に襲撃された。同船は、31名の乗組員でシンガポールへ向かう途中、2隻のボートにより襲撃を受けたもので、これらのボートはタグボートに偽装していたため、船長は注意を払っていなかった。船長が足を撃たれるとともに船舶機器の一部が損傷した。

表-1
海賊発生件数推移

表-2
世界各地域毎の海賊発生件数の比較

表-3
ハイジャック事件発生件数


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