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海賊事件3年ぶりに減少するも、凶悪化傾向
〜 2004年の海賊事件発生状況 〜
 国際商工会議所(International Chamber of Commerce=ICC)の下部組織である国際海事局(International Maritime Bureau=IMB)は、2004年に同海賊情報センター(クアラルンプール)に連絡のあった海賊事件(未遂事件も含む)の報告書を発行した。
 また、国土交通省海事局外航課は、わが国外航海運事業者等から2004年に日本関係船舶が受けた海賊行為等による被害状況を調査し、その結果を公表した。
 これらの概要は以下のとおりであるが、関係各社におかれても、政府等関係機関に対する防止対策強化の要請に資するため、事件に巻き込まれた際には、関係先への通報をお願いいたします。

1.2004年IMB海賊レポート概要
 2004年に報告のあった海賊事件の件数は325件で、2003年より120件、約36.9%減り、3年ぶりに減少傾向に転じた。
 地域別に見ると、依然東南アジアでの発生率は高く、世界全体の48%(156件)が東南アジアで発生している。
 また、発生件数が減少する一方で、乗組員が海賊に殺害される件数は30人と2003年の21人から約43%も増え、身代金要求型の人質事件も多発(2003年0件、2004年86件)していることから、より凶悪化している傾向にあるといえる([表1]〜[表3]ご参照)

[主な事件の概要]
(1)  2004年5月25日17時00分頃、シンガポール籍の一般貨物船「Berjaya II」号が、マラッカ海峡でマシンガン等の重火器で武装した4名の海賊に襲撃された。同船の通信機器は全て破壊され、貿易書類が強奪されるとともに、船長と機関長を誘拐して身代金を要求した。

(2)  2004年8月2日04時20分、キプロス籍一般貨物船「Patraikos II」号が、シエラレオーネ(西アフリカ)フリータウン沖停泊中に、銃で武装した10名の海賊に襲撃された。全ての船室ドアが破壊され、乗組員は銃で脅された上、現金と私物を奪われた。襲撃されている間、船長は港湾当局に連絡を取ったが、当局の関係者が到着したのは海賊が逃走してから約2時間後であった。この事件で4名の乗組員が負傷し入院した。

(3)  2004年9月21日、ソマリア・モガディシュ沖約100kmを航行中の一般貨物船が、2隻の高速船に分乗し銃で武装した15名の海賊に襲撃された。海賊は船長に海岸沿いに錨泊するよう命じ、21名の乗組員は近くの村へ連れ去られた。

表-1
海賊発生件数推移

表-2
世界各地域毎の海賊発生件数の比較

表-3
乗組員、乗客の被害状況
注)誘拐については、2003年以前のデータの記載なし。


2.国土交通省わが国関係船舶における海賊被害状況調査
 国土交通省海事局外航課は、わが国外航海運事業者等に対してアンケート調査を実施し、2004年における日本関係船舶(邦船社が所有、運航、用船している外国船舶)が受けた海賊事件について取りまとめた。

(1)被害件数
 2004年において、わが国関係船舶が海賊に襲われた件数は7件で、昨年の12件から減少した。被害船の船籍別内訳は、日本籍1隻、パナマ籍5隻、キプロス籍1隻となっている。また、日本人が乗船していた船舶は1隻であった([表4]ご参照)

表-4
わが国関連船舶の海賊行為被害
(2)発生海域
 地域別に見ると、インドネシア周辺海域を中心に、全て東南アジアで発生している。特に南シナ海での発生が顕著である。

(3)被害状況
 被害事例としては、これまでは錨泊中、停泊中に小型ボートで接近し、襲撃されるケースが多かったが、2004年に発生した事案では、航海中に襲撃されるケースが増えている(7件中4件)。
 また、日中に襲撃されたケース、自動小銃を乱射された事件が報告されている。


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