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海賊事件は世界全体で3年連続減少、バングラデシュ海域では急増
―2006年の海賊事件発生状況―
 国際商工会議所(International Chamber of Commerce=ICC)の下部組織である国際海事局(International Maritime Bureau=IMB)は、2005年に同海賊情報センター(クアラルンプール)に連絡のあった海賊事件(未遂事件も含む)の報告書を発行しました。
 また、国土交通省海事局外航課は、わが国外航海運事業者等から2006年に日本関係船舶が受けた海賊行為等による被害状況を調査し、その結果を公表しました。
 これらの概要は以下のとおりですが、関係各社におかれても、政府等関係機関に対する防止対策強化の要請に資するため、事件に巻き込まれた際には、関係先への通報をお願いいたします。

1.2006年IMB海賊レポート概要
 2006年に報告のあった海賊事件は239件で、昨年より37件、約13%減り、3年連続の減少となった。世界各地域で海賊発生件数は減少傾向にある。
 世界全体の約35%を占めた東南アジア地域での発生件数は、昨年の102件から83件と約19%の減少となった。特に世界で最も海賊事件発生件数の多いインドネシアにおいて、件数が昨年の79件から50件に減少した。これは海賊に対するインドネシアの法的執行機関および海軍の存在が、発生件数減少に大きく起因していると報告書では分析している。
 昨年、事件が急増したソマリアを含むアフリカ地域も61件の発生と昨年から約24%の減少となったが、ソマリア沿岸での身代金目的のハイジャックやナイジェリアの誘拐等、生命を脅かす凶悪な事件は依然として発生している。
 世界各地域で海賊発生件数が減少する一方、インド亜大陸地域では、昨年の36件から53件へ唯一発生件数が増加している。この53件の内、47件の海賊事件がバングラデシュで発生しており、インドネシアの50件に次ぐ世界第2位の海賊事件発生国となった。特にバングラデシュ・チッタゴン港で、停泊・錨泊中の船舶が襲撃されるケースが急増していることから(46件)、報告書では、同港を世界で最も危険な港として警戒するよう呼びかけており、バングラデシュ政府の事件への対策が十分でないとしている。([表1〜3]参照)

[主な事件の概要]
(1)  2006年7月2日、インドネシア時間の9時30分頃、航行中のインドネシア籍「Pacific Spirit」号が、マラッカ海峡において、重火器で武装した海賊に襲撃された。同船は、インドネシア・北スマトラLhokseumaweへ国連の津波救済物資を運ぶチャーター船であった。軍の作業着を着た6名の海賊は、貨物書類を見せるように要求し、現金と乗組員の私物等を奪い立ち去った。その際、船長に対し、この件を報告した場合、次回同じ航路を通過する際に殺害すると脅した。
 翌日の7月3日、ほぼ同じ場所で同じような時刻に、国連津波救済物資輸送船「Bintang Samudra」(インドネシア籍)が12人の海賊に襲撃され、現金、燃料等を奪われた。海賊はアチェ州独立派のゲリラである自由アチェ運動(GAM)のメンバーを名乗っていた。


(2)  2006年2月17日20時55分頃、シンガポールの貨物船「Name Withheld」号が、バングラデシュ・チッタゴンに錨泊中、10名の海賊に襲撃された。海賊は乗組員1名を人質に取り、暴行を加え、縛り上げた上、喉元にナイフを突きつけ脅した。当直の航海士が警報を鳴らし乗組員が集められたが、海賊はロッカーを壊し、船用品を奪って逃走した。船長は沿岸警備隊と港湾当局にこの件を報告したが、沿岸警備隊が捜査のためにやって来たのは翌日であった。
 また、同船は同年3月4日深夜、同じ場所で錨泊中に12名の海賊に乗船されそうになり、一旦は退けたものの、約4時間後に再び襲撃され、海賊に乗り込まれた。この件に関しても、沿岸警備隊および港湾当局に報告している。


(3)  2006年11月1日19時30分頃、セントキッツ&ネーヴィス籍の一般貨物船「MV Veesham I」号が、ソマリアElmann沖を航行中に武装した海賊にハイジャックされた。海賊は同船をObbia(北方)へ向かわせ、船長以下14名の乗組員と同船の解放の見返りとして身代金を要求した。
 11月7日、イスラム法廷連合(The United of Islamic Court)の民兵が、銃撃戦の末、海賊から同船を奪い返した。この銃撃戦で海賊2名が負傷したが、乗組員に怪我はなく、同船は船長に引き渡された。この件に関し、身代金は払われてはいない。


表1海賊発生件数推移



表2世界各地域毎の海賊発生件数の比較



表3主要5か国・地域の海賊発生件数





2.国土交通省わが国関係船舶における海賊被害状況
 国土交通省海事局外航課は、わが国外航海運事業者等から報告のあった、2006年における日本関係船舶(邦船社が所有、運航、用船している外航船舶)の海賊等の被害状況について取りまとめた。

(1) 被害件数
 2006年において、わが国関係船舶が海賊に襲われた件数は8件で、昨年の9件から減少した([表4]参照)。被害船の船籍別内訳は、パナマ籍7隻、バヌアツ籍1隻となっており、日本籍はなかった。また、被害船舶のうち、日本人が乗船していた船舶は2隻であった。

わが国関係船舶における海賊行為等による被害発生件数の推移

(2) 発生海域
 地域別に見ると、バングラデシュとタンザニア沖で1件ずつ発生した事案以外は、インドネシア周辺海域で発生している。

(3) 被害状況
 海賊行為等による死者、行方不明者および負傷者はなかったが、海賊に縛り上げられ金品を強奪される事件があった。また、昨年は航行中に襲撃されるケースが多かったが、2006年は錨泊中、停泊中に襲撃されるケースが8件中6件であった。

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