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Homeプレスリリース&トピックス2007年 > 日本船主協会創立60周年記念式典 鈴木会長挨拶(6月29日)

プレスリリース

平成19年6月29日
社団法人 日本船主協会

日本船主協会創立60周年記念式典 鈴木会長挨拶

日本船主協会創立60周年記念式典にあたりまして一言ご挨拶申し上げます。

 本日は、公務ご多忙にもかかわりませず、冨士原国土交通省海事局長を始め、来賓各位、会員の皆様のご出席をいただきましたことに、まず厚く御礼申し上げます。

 当協会は、本年6月に還暦を迎えました。思い返せば、昭和22年6月に占領軍の軍政のもと、極めて混乱した社会・経済状況の中で設立され、日本海運復興の大前提である「民営還元」を第一義に活動を開始しました。当時は、戦争で船腹量の9割近くを失うという壊滅的な打撃を受け、また、占領軍からは強力な海運の存在は潜在的な戦力と見なされて保有船腹量に過度な制限を加えられるなど、非常に過酷な状況からの再出発であったといえます。

 爾来日本海運は、船舶金融制度や海運税制などを得て、船隊を再建し、戦前の航路・航権を回復して、昭和39年には日本産業史上まれに見る集約合併を経験しましたが、その後の昭和40年代は、技術革新に対応して船舶の大型化、専用船化に努めると共に、コンテナ化による輸送革新を推進し、わが国産業の発展や経済の高度成長に重要な役割を果たしました。
 その後、ニクソンショック、二度のオイルショック、さらにはプラザ合意以降の急激な円高があり、昭和50年代は日本籍船の配乗船員の少数化により競争力を回復するため船員制度の近代化に取り組みましたが、昭和60年以降は、激烈な円高により、企業の存続すら危ぶまれるなか、ドルコスト化と合理化を推進し、全日本海員組合の理解も得て、マルシップ混乗や国際船舶制度の推進で日本籍船の維持を図ろうとし、血の出るような苦しみの中で緊急雇用対策も実施いたしました。

 また、その間、中東地域を中心に戦争・紛争が繰り返され、加えてテロや海賊など、日本経済・国民生活の生命線である海上輸送を担う船舶の安全運航への大きな脅威ともなりました。

 こんにち、日本の外航海運は、これらの困難を関係者の努力で克服し、約2200隻、8900万総トン、また、内航海運は約6100隻、350万総トンを運航するまでに発展いたしました。
 日本船主協会は、この60年間、国内においては、時代に対応した海運政策の提言や、国際競争力確保のための様々な提言を行うとともに、国際的にはIMOをはじめとする国際機関において適宜適切な発言を行うなど重要な役割を果たしてきております。また、アジア船主フォーラムなどによってアジア諸国船主との協調促進を図ってきているほか、国民の祝日「海の日」の実現にも大きな役割を果たすなど、業界のかじ取り役を担ってきました。

 この間は、まさに激動の60年と言えるのではないでしょうか。本日、60周年の記念式典を挙行することができましたのも、海運業界の諸先輩がご苦労を重ねられて果たされてきた偉業のお蔭であると、改めて敬意を表するとともに感謝申し上げる次第であります。

 現在、中国経済の進展などによる荷動きの増大により、海運市況は活況を呈しており、外航海運企業は好業績を享受しております。わが国海運企業は、この好業績に慢心することなく、引き続き経営の効率化を図るべく自助努力して参りますが、この好景気のもと、国際競争力のうえで、種々の海運強化策を講じている諸外国海運とは、厳然たる差が生じていることも事実であります。わが国海運企業が安定した輸送サービスを提供し続けていくためには、国際競争力を確保することが不可欠であります。そのため、現在、トン数標準税制の導入に向けて全力を挙げて取り組んでいるところです。

 また、わが国海運による安定的な輸送サービスの提供のためには、国際競争力を確保した上で、日本籍船の建造や日本人海技者の確保・育成を図っていく必要があると考えております。

 国内産業・国民生活を支える内航海運につきましては、市況の低迷や燃料油高騰に加えて、内航船員不足問題が深刻化しております。内航海運が引き続き国内物流の大動脈としての役割を担っていけるよう、関係団体とも協力して経営基盤の改善を図ってまいる所存です。

 最後に、海運業界にとりまして船舶の安全運航は、もっとも重要であり、かつ当然の責務であることはいまさら申し上げるまでもありません。今後は地球規模での環境問題が大きくクローズアップされるでしょう。こうしたグローバルな命題にも応えつつ、わが国海運に付託されている良質で安定した輸送サービスを提供して参りたいと存じます。

 海運業は、経済活動・社会生活を行ううえで不可欠なものであり、益々重要性が増すであろう成長産業であると確信をいたしております。日本船主協会といたしましても、還暦を迎えた今年、今一度原点に還って来るべき将来に向かって益々の発展を期するとともに、関係の皆様の引き続きのご指導・ご鞭撻ならびにご協力をお願い申し上げまして私のご挨拶とさせていただきます。

 本日はありがとうございました。

以上

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