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Homeプレスリリース&トピックス2007年 >日本船主協会 第60回通常総会 前川会長挨拶(6月29日)

プレスリリース

平成19年6月29日
社団法人 日本船主協会

日本船主協会 第60回通常総会 前川会長挨拶

この度、皆様のご推挙により、会長職を務めることになりました前川でございます。何分非力の身でございますので、皆様のお力添えを賜り、大いに汗をかいてこの大任を果たしていきたいと存じます。ご支援、ご指導を賜りたく、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 鈴木前会長におかれましては、トン数標準税制導入実現に向け、平成19年度与党税制大綱において、平成20年の通常国会における法整備を前提に実質的に導入に近い位置づけとなるまでに大きく一歩を踏み出すという成果を残して頂きました。また、水先法の改正によりひとつの到達点をみた水先制度の抜本改革、公益法人支援への対応など、実行力あるリーダーとして海運業界を牽引くださった2年間でありました。引き続きご指導賜れば心強いかぎりです。また、常勤副会長として大きな課題に取り組んでいただいた宇佐美前副会長にも厚く御礼申し上げます。
 さて、現在、外航海運業界にあっては、過去に経験したことのない好業績が継続しておりますが、好況を享受しているのは日本の海運だけではありません。 好況期にキャッシュを積み上げた外国企業の脅威に日本の海運が曝される場面は十分に予想され、先行きを楽観視することは厳に戒めなければなりません。  私は、日本の船社が、特に外航海運が国際競争力を持ち続けることが、日本経済ひいては世界経済に資すると考えております。そのための制度的改革、改善を要するものに積極的に取り組む所存です。
 海運業界の使命は、経済活動の基本インフラとして、安定的で良質な輸送サービスを提供することで、国民生活の向上と経済の発展に貢献することであります。一方で、事業の推進により環境に与えてしまう負荷についても認識し、国民生活への貢献のみならず国際社会の一員として地球環境保全対策の推進に一層貢献していかなければならないことを肝に銘じたいと思います。  なお、本日の総会決議におきまして、私どもが取り組むべき最重要課題を列挙しておりますが、これら諸項目を実現していくために、私が特に強調しておきたい点を以下に簡単に申し述べます。

 第一にトン数標準税制の実現をはじめとするわが国外航海運の競争力強化です。
 トン数標準税制につきましては、昨日開催されました交通政策審議会海事分科会国際海上輸送部会において、「中間とりまとめ」の最終審議が行なわれ、第一義的には、国際競争力確保のためにトン数標準税制を導入するという共通認識になりました。部会長および国土交通省、そしてご発言等を通じサポート賜りました石油連盟、電気事業連合会、日本鉄鋼連盟をはじめ委員の皆様に対して御礼申し上げます。
 今後は、ご尽力くださっている国会議員の先生をはじめ関係の皆様の一層のご支援も賜り、平成20年度の税制改正において、事業者にとり使い勝手の良いトン数標準税制が実現されるよう全力を尽くしてまいります。
 本年4月より開始した「外航日本人船員(海技者)確保・育成スキーム」への取り組みを含む日本人海技者の増加につきましては、もとより努力する所存でありますが、個々の日本の船社が競争力を持つことが何よりも、我が国経済・国民生活のライフラインの維持に資するものと確信しております。トン数標準税制の2008年4月導入により、国際競争力を確保し、資源・エネルギーをはじめとする日本経済に欠くことのできない物資の安定的な輸送を今後もきちんと提供できる体制を確実なものとするよう、固く決意する次第です。
 また、海運企業にとり、低利かつ長期安定資金を確保できる政策金融は不可欠ですので、必要に応じて対応していく所存です。

 第二に水先制度改革の仕上げに邁進いたしたく存じます。
 水先制度改革については、平成18年5月に改正水先法が公布され、本年4月1日に施行されましたが、料金の上限認可制への移行は今年度中となっております。  4月よりスタートした水先人養成制度や水先業務の運営の透明性を高めることに今後とも注意を払っていくことはもちろんのこととして、ユーザーが納得できる水先料金となる必要があります。特に本年度を水先制度改革の仕上げの年として、努力してまいる所存です。

 第三に国際船員問題への対応です。
 日本商船隊に乗り組む外国人船員の2008年からの労働条件に関し、先月よりITF(International Transport Workers' Federation、国際運輸労連)との交渉がIBF(International Bargaining Forum)の場で開始されたところです。本交渉に直接携わるのは国際船員労務協会(国船協)となりますが、当協会としても国船協との緊密な対話・連絡および同協会への支援により、船員居住国の経済の実情を反映した、現実的な交渉結果となるべく取り組んで参ります。
 より長期的には、国船協とも協同しながらフィリピンを初めとする船員供給国の官民の関係者との相互理解を深め、日本商船隊への良質な外国人船員の確保と雇用の安定に寄与したいと考えています。

 第四は、外航船社間協定に対する独禁法適用除外制度への取り組みです。
 外航船社間協定に対する独禁法適用除外制度については、わが国公正取引委員会の研究会において、制度の廃止を前提とした議論が進められましたが、本問題は、「現行の適用除外制度は適正に機能している」という認識を表明している国土交通省において引き続き検討が続けられることになっております。
 また、先月末に釜山で開催されたアジア船主フォーラム第16回総会においても、改めて独禁法適用除外制度の必要性が確認されました。
 産官学の海事関係者による検討も継続しておりますので、欧、米、アジアなど諸外国の動向を含めた分析を通じ、海運業界にとって適用除外が必要であることを引き続き当協会から訴えていく所存です。

第五に安全運航に引き続き力を尽くしていきたいと考えます。
 決議項目の筆頭にも挙げたとおり、「安全運航の徹底」は船社の基本であり、船舶の構造・設備基準にかかる国際的な合意に向けた検討への積極的な参加はもちろんのこと、ハード・ソフト両面から取り組んでまいります。
 また、マラッカ・シンガポール海峡の航行安全問題に対しても積極的に取り組みます。海峡の安全と環境を維持するため沿岸国、海峡利用国等が責任を共同して担うべきであると考えますので、関係国が参加する実効ある国際協力体制の構築に向けて、わが国政府と協調して対応していきます。

第六に環境保全への貢献です。
 船舶からの排出ガス規制やバラスト水排出規制など、船舶に対する環境規制の検討が継続して行われています。規制の基準が地域によって異なることは好ましくなく、実行可能な対策が着実に推進されるよう、国内外の検討に積極的に参画していきます。

 なお、安全運航と環境保全に関連しては、ロンドンにある当協会の欧州地区事務局に技術系の専門家を1名常駐させることにより、IMO対応の強化を図り、日本船社の影響力を高めるよう努力いたします。

 最後に内航海運問題についてふれさせていただきます。
 内航海運につきましては、内航船員が高齢になりつつあるため、船員確保対策が喫緊の課題であります。また、最近の燃料油価格高騰に伴う運賃転嫁も、いまだ十分とはいえません。日本内航海運組合総連合会がすすめている事業を側面から支援するとともに、当協会としても、内航部会を中心に業界がかかえる諸問題を鋭意検討し、国会方面をはじめ関係先に働きかけ、解決につなげていきたいと考えますので、内航の皆様のご協力をお願いいたします。

 今年で、当協会は創立60周年を迎えました。本日、全会一致をもって採択されました総会決議に掲げられた諸施策を実現するべく、微力ながら全力を尽くすことを、この節目の年に誓いたいと思います。当総会にご出席くださりました皆様はじめ関係各位のご指導、ご支援を賜りますよう重ねてお願い申し上げます。

以上

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