1・1 外航海運政策推進検討会議への対応

 

(1)「トン数標準税制等の新外航海運政策に係る調査研究」アドバイザリーグループへの対応

@    これまでの経緯等

国土交通省海事局と当協会は、新たな外航海運政策の立案に向けて、海運税制、第二船籍制度等について検討を行うため、20046月に共同で「外航海運政策推進検討会議」設置し、同年11月に以下の通り中間的な論点整理を行った。【船協海運年報2004参照】

 

【中間的な論点整理(200411月)】

日本において他産業とは異なって独自の税制を導入するためには、外航海運業の特質、日本商船隊の意義、邦船社の意義、日本籍船の意義等を踏まえ、相当に強固な理論構築を行う必要があるという前提で議論を行ってきた。その中で、相当に煮詰まった事項としては、他の産業にはない外航海運業の特質を明らかにしたことがある。具体的には、@基本設備資産である船舶は可動性を有し、その価額は国際マーケットで決定され、売買が容易であること、A収入の基礎である運賃・用船料が国際マーケットをベースとして決定されること、B資本移転及び労働移動が国際的に高水準で自由になっていること、C関税等の制度的な参入障壁が存在しないこと等である。さらに、トン数標準税制の要望に向けて、国民経済に対する外航海運産業の貢献を明らかにするとともに、それについての認識を深めていくことが必要であること、また、日本籍船保有の意義についても検討を深める必要があることを確認した。

 

また海事局と当協会は、新たな外航海運政策に係る成案を得るために、更なる検討を進めることで認識が一致し、200412月に早急に調査すべき事項として下記項目を取りまとめるとともに、この調査を行うに当たっては、海事局・当協会が協力するのみならず、外部調査機関や有識者の力を借りることも必要であるとした。

この調査の一環として当協会は、下記調査事項、即ち「トン数標準税制等の新外航海運政策に係る調査研究」について外部に委託調査を行うこととし、複数のコンサルタント会社の企画案を審議した結果、(株)日通総合研究所及び(株)野村総合研究所の共同企業体に委託することとした。6月〜7月を目処に中間報告書を、また12月までに最終報告書を取りまとめてもらうこととしており、中間報告書を受領した段階で、平成18年度の税制改正要望等に反映させることが可能かを、その他の諸状況も勘案しつつ見極めることとしている。

 

【主な調査事項等】

@外航海運業の特質、A国際競争力の比較、B日本商船隊の意義、C邦船社の意義、D日本籍船の意義、E諸外国の外航海運政策、及びF税制の7項目等についての調査検討を通じ、トン数標準税制等の新たな外航海運政策導入に向け、データや実例を用いた実証的な理論構築を行う。なお、調査検討手法としては関係者へのヒアリング、海外制度調査、各種シミュレーションを含むものとする。

 

A    アドバイザリーグループの設置

当協会は、日通総研及び野村総研への委託調査の報告書が、業界の考え方に偏ったレポートと受け取られることのないよう、有識者等の第三者にも関与していただき、広く社会一般に通用する内容とするため、委員会(「トン数標準税制等の新外航海運政策に係る調査研究」アドバイザリーグループ)を設置することとした。

この委員会では、海事局及び当協会の他、学識経験者等に参画願い【資料1-1-1参照】、レポートについて専門的かつ公正な見地からの指摘や評価をしていただき、報告書の客観性を高めることとする。

また当協会は、アドバイザリーグループの運営等についても客観的かつ公正なものとするため、業務ノウハウのある(財)日本経済研究所に運営など一切の業務を委託し、同研究所にアドバイザリーグループを設置していただいた。

なお、アドバイザリーグループは決定機関ではなく、文字通り、調査研究内容に助言するグループであり、何らかの事項を多数決で決定するというような性格のものではない。委員各位の意見を踏まえ日通総研及び野村総研が調査報告書を作成するが、可能であれば、最終報告書をまとめる際に、各委員の意見との相違があれば、その点を盛り込まなかった理由も含め分るようにしたいと考えている。

 

B    第1回アドバイザリーグループの開催

題記アドバイザリーグループ第1回会合が、331日(木)15時から18時に当協会会議室において開催され、「外航海運政策推進検討会議」におけるこれまでの検討経緯等について確認するとともに、日通総研及び野村総研の調査研究手法等について意見交換を行った。

 

C    第2回アドバイザリーグループの開催

題記アドバイザリーグループ第2回会合が、425日(月)15時から18時に当協会会議室において開催され、前回に引き続き、日通総研及び野村総研の調査研究等について意見交換を行うとともに、海事局提案の説明があった。

 

(2)海事局提案海事局提案(新外航海運政策に係る施策案)への対応

国土交通省海事局は、平成17420日、当協会に対し、外航海運に係る5つの施策案を提案した。本提案について当協会は、政策委員会および幹事会を中心に検討を行い、最終的には常任理事会において当協会としての考え方を取りまとめ、同年69日、海事局に回答した。

 

@    海事局提案に至った背景等

当協会は、平成166月、海事局と共同で「外航海運政策推進検討会議(以下、検討会議)」を設置し、トン数標準税制の導入等についての検討を行っている。

検討会議は、同年11月末、これら政策課題を進める上での基本的論点、即ち、外航海運業の特質、及び邦船社・日本商船隊・日本籍船の意義等に関する論点を整理した。

当協会は、この論点整理を踏まえ、現在、外部調査機関および学識経験者の助力も得て、トン数標準税制等の政策実現のため、実証的な理論構築に向け鋭意作業を続けている。【船協海運年報2004及び上記(1)参照】

一方、海事局は、「これまで検討会議において当協会と検討を重ねてきたが、現時点では、トン数標準税制等を要望できる理論構築がなされたとはいえず、このため早期導入は厳しい状況。」との認識のうえで、「邦船各社の危機感、即ち、トン数標準税制等のある外国船社とのキャッシュフローの差が大きくなる恐れ、またMA(企業の合併・買収)の対象になってしまう恐れ等、については十分認識している。」とし、このことから現時点で措置可能と考えられる施策について、平成17420日に開催した第4回検討会議において「新外航海運政策に係る施策案について」として下記5つの施策を提案してきた。【資料1-1-2参照

 

提案(1):優遇税制の適用を受けた外国海運事業者による不当に低い運賃設定が行われた場合の対応

提案(2):優遇税制の適用を受けた外国海運事業者によるMAにより荷主等への悪影響が生じた場合の対応

提案(3):船籍選択の自由度を高めるための措置

提案(4):外航船舶に係る税制の見直し等

提案(5):船社間協定の独禁法適用除外制度の適正な運用

 

海事局は、この5つの提案について当協会の賛意が得られるならば、施策導入の可否を理論面(法改正が必要なものについては法制上の問題点をクリアする等)、及び実態面(関係者に理解が得られる施策の必要性や切迫の度合等)につき見極めた上で、所要の制度設計を検討する、とした。

また海事局からは併せ、これら施策を進めるにあたっては、それなりのリスク(例えば関係国や当該外国船社からの反発が起こる可能性があること等)があるとの説明があった。

 

A    当協会の対応等

本提案について当協会は、平成17512日付で会員全社に対して意見を照会するとともに、518日開催の政策委員会・政策幹事会合同会議、および525日開催の常任理事会において、施策案毎のメリット・デメリット等をも踏まえ、当協会としての対応等についての意見交換を行った。

その後、会長、副会長、政策委員長等関係者間で、戦略的な観点等も勘案しつつ、回答文書案を取りまとめ、68日、常任理事会において審議・決定し、翌69日、当協会の芦田政策委員長が海事局に提出した。【資料1-1-3参照