3・5  OECD

 

351 海運委員会(MTC)

日米欧の先進国を中心とする30ヶ国が経済政策問題を検討しているOECDは、海運委員会(MTC: Maritime Transport Committee)を設置して海運問題を討議している。同委員会にはOECDメンバー政府の運輸当局者が出席し、メンバー国間の海運競争政策の整合性問題や、海運助成措置の削減等の海運政策問題、また、船舶の安全確保問題や海事保安問題などにつき意見交換が行われている。

但し、以下2回のMTCでは、OECD全体の機構改革に伴う本部予算支給打ち切り問題が大きなテーマとなった。

 

(1) 2004114日〜5 海運委員会(MTC)およびワークショップ(WS)会合

 2004114日〜5日に、パリのOECD本部で開催されたMTCWSには日本政府から国土交通省の代表者が出席するとともに、当協会園田国際企画室長も出席した。

各会合の主な結果は以下の通り。

 

MTC(海運委員会)

 @ OECD機構改革とMTCの今後について

12月中旬にOECD理事会が開催され、MTC存廃問題(051月以降の予算配分の有無)に関する結論が出されるが、現時点では、MTCに来年のOECD本部予算は割り当てられず、04年末を以って本部からの予算分配は停止される見込みが強い旨説明があった。その場合、メンバー国(=海運当局)が、これまでのOECD拠出金とは別途に運営資金を拠出すれば、MTC存続も可能(2部予算化)とされたが、席上、これに積極的な意見を表明した加盟国はなかった。

また、Bruce Carlton MTC議長(米国運輸省)からは、MTCにかわる何らかの代替策(例えば既存のCSG(先進国海運担当官会議。先進海運国14カ国の海運担当官によって構成)を利用する方法など)
を模索したい、との発言があり、追って進展あればMTC加盟国政府に連絡することになった。

A 貿易と自由化

 WTO海運交渉の現状等について質疑応答が行われた。

B    海事保安・テロ対策

各国より、ISPSコードの実施状況に関して報告が行われた。

 

<ワークショップ>

MTC非加盟国にも参加を呼びかけた上、最近の定期船・不定期船市況、WTO海運サービス自由化交渉の現状、海事保安問題、サブスタンダード船問題等につき、船社、船社団体(ICSINTERTANKO)海運・港湾当局(米国、ノルウェー、中国、シンガポール、豪州、フィリピン)などが講演・意見交換を行った。

 

(2) 2005526日〜27 海運委員会(MTC)

 2005526日〜27日に、パリのOECD本部で開催されたMTCには日本政府から国土交通省の代表者が出席するとともに、当協会園田企画部長も出席した。

議論は、MTCの廃止・受け皿問題に焦点が絞られた。概要は以下の通り。

 

@ MTC廃止問題

 海運政策問題を検討する国際的なフォーラムが必要であることに関しては、各国意見が一致した。
 前回MTCで議長が示したCSGMTC廃止後の受け皿とする考え方については、CSGより現時点での受け入れは困難であるとの見解が示された旨報告された。
 このため、MTCが活動を継続するには、各国からの新たな資金拠出が必要となるが、資金拠出に前向きなのは一部加盟国に限られたため、運営資金を極力抑え、プロジェクト毎に加盟国が作業を分担するAPEC方式を中心に意見交換が行われた。
 結局、会合では資金問題に関する結論は得られず、今後MTCの活動継続に必要な費用等に関して、OECD事務局が情報を整理した上、各加盟国の拠出可能額等を照会することとした。

 一方、資金問題に目途がついた場合に今後検討を進めるべきとして合意されたテーマは以下3つ。
 (a)海事保安コストの分析(プロジェクトを実施する場合、米国が一定の資金拠出を表明)
 (b)PI間でサブスタ船に関する情報交換を行うにあたっての独禁法上の制約の研究

(c)定航の港湾混雑に関する研究

 

A その他議題

 サブスタンダード船対策の一環として「保険業者間の情報交換に関する競争法上の制約」に関してと、米国の港湾/内陸輸送施設混雑問題等に関し意見交換が行われた。

 

 

36造船協定問題

 OECDでは、1994年、国際造船市場における公正な競争条件の確立のため、主要造船国(日本、欧州、韓国、米国、ノルウェー)の参加によるOECD造船協定が策定された。しかしながら、20017月に米国より、同国議会の承認を得られないため協定の批准ができないとの意思表示がなされ、これまで同協定は発効されないままとなっている。(船協海運年報2003 3.8.2 造船協定問題参照)

 一方で、韓国の造船能力の拡大、中国の台頭など国際造船市場での競争が激化し、造船業における公正な市場規律が不可欠であるとの認識から、20039月のOECD理事会において造船部会に新造船協定特別交渉グループ(SNG)を設置し助成措置規律と船価規律を2本柱とする新造船協定の交渉を行うことが決定、12月より交渉が開始された。(交渉期限は2005年末)

 その後の交渉では、助成規律については、規律が必要とする日本・EC・韓国の造船主要国と、補助金以外の助成措置を規律することに反対する中国とで意見が対立、船価規律については、厳格な規律が必要とするEC、異常な低船価に圧力をかけうる一定の規律は必要とする日本、規律は不要とする韓国・中国で意見が分かれていた。20059月の高級官僚会議において、助成措置規律については歩みよりが見られたものの、船価規律について共通の基盤が形成されなかったことから、新造船協定の内容は纏められぬまま、議長により交渉の中断が提案され各国が了承することとなった。

 

【新造船協定交渉参加国(計30カ国・地域)】

日本、韓国、ECドイツベルギーデンマークスペインフィンランドフランスギリシアイタリアオランダポルトガルイギリススウェーデン、ノルウェー、中国()、台湾()、トルコ、ウクライナ()ポーランド、ルーマニア()、クロアチア()スロバキア、ブラジル()、オーストラリア、カナダ 、メキシコ、ロシア()、フィリピン()

(注1)__は欧州委員会(EC)及びその加盟国を示す。

(注2)*はOECD非加盟国を示す。

 

※参考文献:国土交通省/日本造船工業会資料等