5・4 輸出入・港湾諸手続の簡易化・電子化問題 

 

541 輸出入・港湾諸続の簡素化について

 

船舶がわが国の港へ寄港する際には、関係省庁の法令や地方自治体の条例に基づき、入出港届や乗組員名簿の提出など様々な諸手続が必要となっている。これらの手続は、諸外国に比し簡素化・合理化が進んでおらず、加えて申請手続が電子化されていない、あるいは電子化されていても省庁縦割りのシステムのため、同様な情報を二重・三重に入力する必要となっている。

当協会は、わが国港湾の国際競争力の阻害要因であるこの煩雑な輸出入・港湾諸手続を解消すべく、日本経団連と連携し、規制緩和要望等を通じてこれら手続の簡素化、これを推進するためのIMO(国際海事機関)のFAL条約(国際際海上交通の簡易化に関する条約)の批准、申請書類の電子化などを関係省庁へ要望してきた。

その結果、関係する省庁は、一回の入力・送信で複数の手続を可能にするとしたシングルウィンドウシステムを20037月に導入したものの、実態は、諸手続が複数省庁にまたがり調整が困難だったことから、FAL条約の批准はもとより各種申請・手続の見直しや簡素化は何ら行われず、各省庁縦割りで開発されたシステムを接続しただけであった。このため、同システムの利用率は低迷しており、現状の諸手続は、財務省関税局の通関情報処理システム(Sea-NACCS)や国土交通省港湾局の港湾EDIシステム等による個別の電子申請と、FAXによる送信や窓口申請が混在する等煩雑な業務を余儀なくされている。(図5-4-1-1参照)

 

そのため、当協会と日本経団連は、利用者の立場から各種申請をゼロベースで見直し、現行の申請書類を徹底的に簡素化するなど、諸手続全般の業務改革を行い、一回の入力・送信で全ての申請を可能とする真のワンストップサービスの実現に向けて関係省庁へ更なる要望を続けてきた結果、ようやく政府は20043月に策定した「規制改革・民間開放3カ年計画」において、FAL条約の批准をはじめ各種申請書類や申請事項の削減、既存の業務・システムの最適化計画の策定等を実施していくことを盛り込んだ。

 

その後、政府は、輸出入・港湾手続関連府省連絡会議(財務省、国交省をはじめ9府省)において、第一段階としてFAL条約の対象である入港時の各種諸手続の見直しや、同条約の対象外ではあるが入港前諸手続の見直しも併せて検討し、関税法、港湾法等の関係法令改正法案およびFAL条約批准法案を本162回通常国会に提出、これら法案はそれぞれ2005330日、517日、615日の参議院本会議において可決・成立した。これにより、111日より国内で効力が発生することとなる。

これら法案成立の結果、従来関係省庁や港湾管理者により異なっていた諸手続が画一・簡素化され、入出港届は申請項目数が約5割減、入港前申請は5種類の書類が一本化され申請項目数が約4割減、夜間入港許可申請や入港通報等が廃止されることとなったほか、これら書類ベースでの改正にともなうSea-NACCS、港湾EDIシステムおよびシングルウィンドウシステムのプログラム改正も行われることとなった。(これらシステムの改正は作業時間の関係から200511月と20063月の2回に分けて実施される)(図5-4-1-2図5-4-1-3参照)

このように、関係省庁の本格的な取組みにより、港湾諸手続の申請書類・項目数の削減・廃止が実現されるとともに、申請書類の画一化が図られるなど簡素化に向けた動きが一歩前進したが、これで全ての問題が解決されたわけではない。今回の見直しは、あくまでFAL条約の締結にともなう、いわば書類ベースの簡素・画一化とそれにともなう各種電子申請システムの改正を行ったことが主な対応である。

そのため、財務省・国土交通省をはじめとした関係省庁は、更に第二段階として、2005年度末までに策定する既存の業務・システムの最適化計画に基づき、2007年度〜2008年度に予定されている次期Sea-NACCSをはじめとする各種申請システムの見直しを実施し、次世代シングルウィンドウシステムの構築へ繋げることとしており、現在、財務省をはじめ関係各省庁等において新たな輸出入・港湾諸手続システム構築のための本格的な検討が行われている。

当協会は、これら次世代のシステムが、真のワンストップサービスに繋がるよう、財務省、国土交通省をはじめとした関係省庁と意見交換を実施するとともに、関係委員会等に委員として参画し、船主意見の反映に努めている。

 

542  FAL条約への対応

 

IMO32回簡易化(FAL)委員会が、200574日から8日までロンドンにおいて開催され、FAL条約の改正等が審議された。わが国は、現時点ではFAL条約の批准国ではないためオブザーバーとしての参加となった。

今次会合では、昨年7月に開催された第31FAL委員会で合意された、FAL条約の改正を主な議題として審議されたほか、港湾諸手続きの電子情報交換メッセージガイドライン(案)等について審議された。

審議概要は次の通りである。

(1) FAL条約の批准状況について

事務局より、20047月に開催された第31FAL委員会以降、5カ国が新たにFAL条約を批准し、20056月現在締約国が合計102カ国となった旨報告がなされた。これに対して、わが国より本年6月の通常国会においてFAL条約批准法案が承認され、本年11月にも同条約がわが国おいて効力が生ずるよう批准手続きを行う予定である旨報告がなされた。また、一昨年にIMO事務局により行われた各国のFAL条約の批准状況に関するアンケートに対してわが国は相違通告数(注)を約40と回答したが、今回の批准にともない相違通告数は9となる旨訂正報告がなされた。

注)FAL条約の締約国政府は、同条約で求められる諸手続きと異なる内容を国内で採用する場合、IMO事務局長に対してその旨を通知することにより、条約で定められた義務を免れることが出来る制度。その場合、IMO事務局長はその内容を加盟各国へ通知することとなっている。わが国はFAL条約批准にあたって相違通告数を先進国並みの数にすることとしていた。なお、主な国の相違通告数は、米国が最大で22、英国が13、フランスが11、ドイツが4となっている。

(2) FAL条約の改正について

20047月の第31FAL委員会において、ISPSコード等他の条約や通関・入出港に関するセキュリティ対策および電子申請の進展等に照らし、FAL条約で定められている一般申告書(入出港届に相当)等のFALフォーマットおよび関連規程の見直しを実施することとし、オランダを議長国とするコレスポンデンスグループで検討して行くこととした。今次会合においては、コレスポンデスグループでの検討結果がオランダより紹介されるとともに、ワーキンググループを結成し検討した結果、概要以下の改正をすることに合意した。

@一般申告書(入出港届)の改正

Name and description of ships Name and type of ships,IMO number,call signに変更。

Nationality of shipsFlag state of shipsに変更

Port arrived fromLast port of callに変更

Name and address of ship’s agentName and contact details of ship’s agentに変更。

The ship’s requirement in terms of waste and residue reception facilitiesを追加。

A積荷目録の改正

一般申告書の改正に該当する個所の改正のほか、可能であればHSコードを記入することとした。

B船用品目録、乗組員携帯申告書および乗組員名簿の改正

一般申告書の改正に該当する個所の改正を行うこととした。

C旅客名簿の改正

一般申告書の改正に該当する個所の改正のほか、Serial number of identity document(パスポートナンバーに相当)、Transit passenger or not等を新たに追加することした。

D危険物積荷目録の追加

題記フォーマットを新たに追加することとした。

EFALフォーム改正にともなう関連規程の改正

上記@からDのFALフォーマット改正にともない、FAL条約関連規程の改正をした。

F条約の発効

これら改正は、条約締約国の3分の1の否決通知がIMO事務局に提出されない限り200611月に発効することとされた。

(3) その他

・港湾諸手続の電子情報交換メッセージガイドライン(案)(MIGMessage implementation Guideline)や船上での麻薬密売抑止に関するモデルコースの見直し等についてそれぞれWGを結成し検討した結果、コレスポンデスグループを結成して今後とも検討することとした。

 

543 ACL業務(船積確認事項登録業務)利用率の促進

 

近年、港湾における一層の物流効率化の必要性が叫ばれるなか、わが国外航コンテナ船社は国際海上輸送の担い手として、早くからシステム化・EDI化に取り組んでおり、その一環として、Sea-NACCS参加船社は199910月の更改NACCSの稼働に際して自社システムを大幅に改編して対応し、これに要する多大な投資を行った上で、輸入の上流業務である積荷目録登録をほぼ完全に実施しているが、輸出の上流業務であるEDI化が著しく低いため、下流業務を行うこととなる船社はB/L作成のために必要な情報をほとんど電子情報で入手出来ず、未だに紙のドックレシートから入手せざるを得ない状況にある。

そのため、当協会は、20033月財務省関税局および通関情報処理センターに対して、積荷目録情報のベースとなるSea-NACCSが提供している船積確認事項登録業務(ACL業務)の利用促進を図るための協力を要請し、当協会と通関情報処理センターは共同で、貨物情報のスタートの立場にある海運貨物取扱業者との意見交換会を実施した。その後、更に効果的活動を行うために外国船舶協会をはじめとした関係団体に働きかけ、当協会、外国船舶協会、(社)日本通関業連合会および日本海運貨物取扱業会の関係4団体で本活動を推進し、財務省関税局および通関情報処理センターがこれに協力することとなった。

当協会をはじめとする4団体はこれまで財務省関税局および通関情報処理センターと協力してターミナル関係者、海運貨物取扱事業者への説明会を実施してきたが、2005年度には、日本貿易会、日本荷主協会に対して利用促進の要望を行ったほか、日本インターナショナルフレイトフォワーダ−ズ協会(JIFFA)と意見交換会を実施するなど、昨年に引き続きACL業務利用率向上のための活動を行った。

また、通関情報処理センターに対しては、ACL利用率向上のための施策として、貨物情報が存在しない場合でも処理の対象とするプログラム変更を働きかけ、こうした機能が追加されることとなった。

こうした活動を行った結果、ACL利用率は以下の通りとなった。(昨年同月に比べ、邦船全体で7.5%、外船全体で10.3%、邦外船全体で6.6%、それぞれ利用率が上がった)

20054月港別EDI化率

 

仙台

東京

横浜

清水

名古屋

四日市

大阪

神戸

門司

博多

その他

全国

 

邦船全体

53.9%

44.9%

25.1%

56.0%

76.5%

38.6%

20.1%

40.5%

5.5%

51.7%

86.0%

47.0%

 

外船全体

27.6%

33.9%

15.6%

36.6%

56.6%

43.0%

24.9%

34.7%

12.5%

24.9%

9.3%

29.5%

 

邦外船全体

37.5%

36.6%

18.0%

41.5%

61.6%

40.0%

23.4%

36.2%

9.7%

32.5%

34.9%

33.8%

 

注 邦船全体とは、日本郵船、商船三井および川崎汽船の3社、外船全体とは、エバーグリーン、OOCL、韓進海運、P&Oネドロイド、マースク、APL、ハパグロイド、現代、MISC9社で集計平均化した数値。