5・5 国際港湾問題
5・5・1 スエズ・パナマ運河問題
(1)料金改定問題
(a)パナマ運河
2005年2月、パナマ政府はパナマ運河庁が04年12月に発表したコンテナ船に対する通航料の課徴方法の変更案を決定した。同変更案の内容はオン・デッキ・コンテナ・キャパシティの設計上の容積を本船のパナマ運河トン数(PCNT)に加算して徴収するという現在の課徴方法を変更し、TEU当たり42jの通航料を課徴するというもので、本年5月1日より発効し、以降、課徴額を06年1月1日に同49j、07年1月1日に同54jへと3段階で引上げる内容となっていた。但し、同政府が決定した変更は、値上げ額については原案のまま承認したものの、06年、07年の値上げ実施時期をそれぞれ5月1日に修正している。
当初、パナマ運河庁は04年8月にICS等に対しオンデッキ・キャパシティ部のPCNTへの加算を廃止し、オンデッキ・コンテナ・キャパシティについてTEU当たり40jを徴収し、05年初より実施しようとする案を非公式に打診してきた。
当協会は関係定期船社(3社)より同案が実施された場合の影響額を聴取し、前年度比60〜70%のコスト増が見込まれること、及び同運河の通航料が02年と03年に2年連続で引上げられたこと、今回の改定の影響額が大きいこと等を理由にICSに対して改定は絶対に受け入れることができない旨を連絡した。
04年10月開催のICS及びWSCとパナマ運河庁との会合において、パナマ運河庁は実施時期の猶予については話し合いに応じる方向を示すものの、オンデッキ・キャパシティ全体への課徴の意向を示した。
WSCは、コンテナ船について、パナマ運河トン数ベースの課徴方法に替わり、TEU当たり40jの課徴方法とすること及び、引上げは段階的なものとすることを求める旨の意見書をパナマ運河庁に提出、これを受け当協会はICSに対しWSCを支持するように要請した。
その後、パナマ運河庁は04年12月に上記改定案を公表し、05年1月に公聴会を開催した。ICS及びWSCは公聴会等を通じて、引上げ幅の圧縮等を要請したが、結局、05年2月にパナマ政府が正式に改定を認証し、課徴方法の変更が決定したものである。
この間、当協会はICSを通じて意見反映に務めるとともに、草刈会長より駐日パナマ大使に対し善処を申し入れるなど意見反映に努めた。
(b)スエズ運河
スエズ運河庁は、2005年2月1日から通航料の改定を実施した。
同運河通航料の全面改正は、94年以来11年振りであり、その内容は船種により値上げ率は異なるものの、約3%程度の引上げとなっている。また、値上げと同時に、大量原油を輸送する船主に対する値引きの取り止め、一部地域からの空荷通航船舶に対する割引制度についても変更がなされている。
今回改正の公表が04年12月と実施の直前であったこと、改定の理由が示されていなかったことから、当協会はICSの理事会において、スエズ運河庁は、改定の根拠を明らかにするとともに十分ユーザーに対する交渉/周知期間を設けるべきこと、同運河庁がICSと定期会合を開催すること等を求める旨の意見書の提出について提案を行った。
(2)運河通航実態調査
当協会は、毎年会員各社の社船及び用船(外国用船を含む)について、両運河に係る通航実態並びに通航料支払実績の調査を実施している。
調査対象期間は、従来より各運河の運営団体の会計年度に合わせて、スエズ運河については2003年1月1日より同年12月31日まで、パナマ運河については2003年4月1日より2004年3月31日まで調査してきており、本年度においても同期間とした。
[スエズ運河]
今回の調査によると、スエズ運河の利用状況は通航船社数が前年比3社増の14社となった。利用隻数は23.0%の増加(2003年:1,036/2002年:842)し、G/Tベ−スでは18.4%の増加(51,047/43,125/千G/T)するとともに、D/Wベ−スでも3.4%の減少(48,224/39,342千D/W)となった。
また、料率の基本となるスエズ運河トン数(*1 SCNT : Suez Canal Net Tonnage)ベ−スでは11.3%の増加(47,737/42,898千トン)となったことから、全体の通航料も28.6%の増加(243051/189,060千米ドル)となった。(表5-5-1-1参照)
船種別で見ると、タンカ−が大幅な増加を示すとともに、バルクキャリア及びコンテナ船が増加する一方、自動車専用船、在来定期船が減少した。タンカ−はSCNTベ−スで85.4%の増加(723/390千トン)と大幅な増加となった。自動車専用船はSCNTベ−スで33.9%の減少(13,140/15,831千トン)となり、昨年の増加から減少に転じた。通航料も28.9%の減少(79,157/14,142千米ドル)となった。(表5-5-1-2参照)
[パナマ運河]
2003年度のパナマ運河の利用状況は、通航船社数が2002年比較で6社増となったが、利用隻数は7.6%の減少(2003年:835/2002年:904)、G/Tベ−スでも4.9%の減少(32,525/34,191千G/T)となったが、D/Wベ−スでは2.0%の増加(27,883/27,285千D/W)となった。一方、料率の基本となるパナマ運河トン数(*2 PCNT : Panama Canal Net Tonnage)ベ−スでは8.8%の減少(32,525/35,680千トン)となったが、2002年10月と2003年7月からの通航料の二段階引上げの影響を全面的に受けて、全体の通航料は1.9%の増加(102,157/100,293千米ドル)となった。(表5-5-1-3参照)
船種別について見ると、コンテナ船が昨年に引続き大幅に増加するとともに、在来定期船が増加したが、自動車専用船が大幅に減少するとともにその他の船舶の指標は概ね減少した。コンテナ船は、PCNTベースでは271.0%の増加(14,915/5,506千トン)、通航料も305.2%の増加(58,284/14,383千米ドル)と大幅な伸びを示した。在来定期船はPCNTベ−スで32.3%の増加(266/201千トン)、通航料も42.0%の増加(1,066/751千米ドル)した。
一方、自動車専用船はPCNTベースで34.2%の減少(14,915/22,654千トン)、通航料でも8.0%の減少(58,284/63,364千米ドル)、また、バルクキャリアーは、PCNTベースで3.1%の減少(6,597/6,791千トン)、また、通航料でも8.4%の減少(17,373/18,956千米ドル)となり4期連続で減少となった。(表5-5-1-4参照)
*1 スエズ運河トン数 (SCNT : Suez Canal Net Tonnage)
1873年の万国トン数会議で定められた純トン数規則をもとに、スエズ運河当局独自の控除基準を加えて算出する。二重底船の船底にバンカー油を積載した場合その部分の控除を認めない等、パナマ運河や各国の規則とも異なる独特のもの。
*2 パナマ運河トン数 (PCNT : Panama Canal Net Tonnage)
1969年のトン数条約による国際総トン数の算出に用いた船舶の総容積に、パナマ運河当局独自の係数をかけて算出する。船舶法に定める総トン数、純トン数とは異なる。