6・3 海事保安問題への対応

 

631 船舶気象通報の情報公開問題

 

世界気象機関(WMO)では、SOLAS条約によって船舶に推奨されている気象観測通報について、その通報項目や通報様式を定めた「篤志観測船(VOCVoluntary Observing Ships)制度」を運用している。同制度に参加した船舶から通報される気象観測データは、全てWMOに集約されることとなっており、各国の気象機関は、WMOの同データベースにアクセスすることで、世界中の気象情報を収集することができる。

しかしながら、ある私企業のインターネット・ウェブサイト上で、同制度で収集された全世界の気象情報が、通報船舶の船名等も含む位置情報として公開されていることが判明したことから、国土交通省より、現状のままでは船舶の保安確保に支障が生じるおそれがあるとして、20059月、船名等を伏せて気象通報を行なうよう、日本船社の船舶保安統括者(CSO)へ勧告が出された。(資料6-3-1参照

 

6・32 船舶保安情報に関する入港前通報の改正

 

20047月に施行された海事保安強化のための改正SOLAS条約では、寄港国は入港船舶に対して、当該船舶が運用している保安レベルや有効な保安証書の所持の有無等、保安に関する情報の提供を要求することができ、これらの情報に不適合が認められる場合は入港を拒否することもできる。しかしながら、同改正条約では具体的な通報項目や通報時期等について特に規定されていなかったこと等から、各国により制度が様々となったことから、条約発効後の200412月に開催されたIMOの海上安全委員会(MSC)において本規則の見直しが検討され、基本となる通報項目や通報時期等が勧告されることとなった。

なお、同会合における検討の際、国際海運会議所(ICS)をはじめとする海運業界団体より、船舶乗組員の業務負担軽減の観点から、従来の入港前通報に保安情報も含めた上で、通報様式や通報時期を統一して運用することが提案されたものの、一般の入港情報と保安情報は区別されるべきとの委員会決定がなされた。

一方、海事保安に関するわが国の国内法である「国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律」においては、入港または入域の24時間前までに、一定の保安関連情報を海上保安庁に通報することとされているが、今回のIMO勧告を参考に、積載危険物および揚げ荷予定貨物の種類・数量等の情報を従来の通報項目に追加する等の改正が行われ、200511月に施行された。

 

633 事業者による旅券の確認義務

テロリスト等の偽造旅券あるいは他人名義の旅券による入国を防止するためには、日本向けの船舶や航空機等に搭乗することを未然に防止することが極めて効果的であるとの観点から、出入国管理および難民認定法の一部が改正され、200512月に施行された。

同改正により、運送業者(あるいは本船船長)に対し、外国人が不法に本邦に入国することを防止するため、運航する船舶に乗船しようとする外国人(乗員、旅客など)の旅券等を確認する義務と、その確認義務を怠った場合の過料(50万円以下)が課せられることとなった。

なお、当協会は、船舶における旅券確認業務を円滑かつ確実に実施するため、法務省入国管理局との間で意見交換会を開催するなどして、ガイドラインの作成に協力した。