6.5 貨物の積付けおよび安全輸送

 

6・5・1 危険物の運送

 

1.海洋汚染物質の判定基準の取り入れ

化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHSに基づき策定された「海洋汚染物質の判定基準」が国連勧告に取り入れられたことに伴い、同判定基準の国際海上危険物規定(IMDGコード)および海洋汚染防止条約(MARPOL条約)附属書Vへの導入について、20039月のIMO8回危険物、固体貨物およびコンテナ小委員会(DSC8)から検討が行われており、20059月のDSC10においても継続して審議が行われた。

DSC10においては、GHSに基づく「海洋汚染物質の判定基準」をMARPOL条約附属書VおよびIMDGコードに導入することが合意され、同附属書Vの改正案が作成された。同改正は、20063月の第54回海洋環境保護委員会(MEPC54)で承認、200610月のMEPC55において採択され、201011日に発効する予定である。

また、IMDGコードの改正については、20069月のDSC11において引き続き検討が行われ、次回IMDGコード改正時にその内容が盛り込まれることとなった。

 ※GHS:世界的に統一されたルールに従って、化学品を危険有害性の種類と程度により分類 

     し、その情報が一目でわかるよう、ラベルで表示したり、安全データシートを提供し

     たりするシステム

 

2.IMDGコードの改正

20059月に開催されたDSC10において、IMDGコード第33回改正について審議が行われた。主な審議概要は以下のとおりである。

なお、第33回改正分は、200811日に発効することとなるが、陸空における危険物国際運送規定の改正が200711日から発効し、陸空と海上において発効時期のずれが生じることから、IMOでは陸海空間での運送規定の差異による不都合を解消し、円滑な危険物運送を行うため、2008年の発効に先立ち、200711日からIMDGコード第33改正の内容を適用するよう推奨している。わが国においても200711日に同コード第33回改正に基づいた国内法の改正が行われる予定となっている。

 @陸上関係者の教育訓練要件

 危険物運送にかかるすべての陸上関係者に教育訓練を強制化すべきとの英国提案について審議が行われた。審議において、多数の国より支持があったが、陸上関係者への教育訓練は国際労働機関(ILOInternational Labor Organization)の所管であり、同コードに当該要件を規定することができるのか疑問を呈する意見や、国内法の整備について問題があるといった意見があった。

 新規作業となる同提案に基づくIMDGコードの改正は、海上安全委員会(MSC)からの改正作業に関する指示が必要となることから、20065月のMSC 81における審議の結果を待って引き続き20069月のDSC 11にて検討を行うことが合意された。

 A 隔離要件“away from”の主管庁による免除

 現行IMDGコードでは、3m以上の隔離要件(away from)が必要な危険物は、相互の間に3m以上の水平距離を保てば、同一船倉内に積載できるが、同一コンテナ内に当該危険物を積載する場合には、同一船倉内に積載した場合と同等の安全性の確保が必要となり、主管庁の許可が必要となる。

 オランダは、同一コンテナ内においても、水平距離3m以上隔離すれば、同一船倉内に積載した場合と同等の安全性が確保できるとして、主管庁の許可なしに当該危険物の同一コンテナへの混載を可能とするよう提案を行った。

 審議において、韓国、フランス、ノルウェー等数カ国より支持があったが、わが国をはじめ多くの国から、コンテナと船倉ではスペース的に大きな相違があり、コンテナ内では船倉と同様に3 mの間隔を保っていたとしても漏洩事故などによる相互の危険物の接触の危険性が著しく異なること等が指摘され、本提案は合意されなかった。

B      有機化酸化物(クラス5.2)の標札

 クラス5.2の標札が改正された。ただし、現行標札については、20101231日まで使用できることとなっている。

 

62 固体ばら積み貨物の運送

 

バルクキャリアの安全性を高めることを目的として、「固体ばら積み貨物の安全実施規則(BCコード)」の強制化が、20045月のMSC78において合意された。

20059月のDSC10では、同コードの強制/非強制規定の選別および通風要件について検討が行われた。

1.BCコードの強制/非強制規定の選別

 DSC10の審議において、同コードには、強制化に適した記述と適さない記述が混在しており、詳細な検討および全体的な書き直しが必要であることが確認されるとともに、本文については第1章(定義)から第10章(固体廃棄物のばら積み運送)を原則的に強制化することが合意された。

 また、付録1(貨物の個別エントリー)について、わが国より、Group C(化学的危険性を有せず液状化の危険性の無い貨物)の要件を勧告とし、また、Group A(液状化する貨物)およびGroup B(化学的危険性を有する貨物)については必要と思われる要件のみを部分的に強制化すべき旨主張したが、他の国からの支持は得られず、審議の結果、付録1については、全面的な見直しを前提として、原則的に全体を強制化することとなった。

 付録2(各種試験法)については、特定の試験法のみに限定しないことが合意され、関係する規定(第6章、第8章および第9章)を見直すこととなった。

 また、付録3(ばら積み貨物の特性)〜7(船舶の閉囲区画への立ち入りに関する勧告)および付録9(ばら積み貨物の索引)は強制化しないことが合意され、付録8(殺虫剤の安全使用勧告)については、今後、継続して審議を行うこととなった。

 

2.通風要件

 BC コードでは、水と接触すると水素などの引火性ガスを発生する貨物に対して、船倉内に滞留した当該ガスによる爆発の危険性を除去するため、連続通風が要求されている。また、この通風を行う装置の要件として、開口部からの水の浸入を防ぐため、当該開口部は甲板上から十分な高さ(船首近傍では4.5m以上)を確保することが要求されている。

 しかしながら、通風装置の開口部の位置を高くすると、荒天時などにおいて船倉内への水の浸入を防ぐため開口部を閉鎖する必要性が生じた場合、容易に閉鎖することができないという問題がある。

 そのため、わが国は、船倉内に滞留した引火性ガスによる爆発の危険性を除去するための手段として、連続通風に替え、船倉内のガス濃度を計測し、その結果に基づいて通風を行うこととするようなBCコードの改正を提案した。

 審議において、数カ国よりわが国提案に支持はあったものの、引火性ガスなどを発生する貨物については、連続通風要件が必要であり、また、ガス濃度測定は天候等により実施できない場合があるとの意見が大勢を占め、わが国の提案は受入れられなかった。

 

3.BCコード強制化のための今後の検討

 BCコードを強制化するためには、内容の詳細な検討および全体的な書き直しが必要であることから、コレスポンデンス・グループ(CG)にて、引き続き検討が行われることとなり、わが国および豪州がCGの取り纏めを行うこととなった。

 なお、CGへの付託事項は次のとおり。

 @ 強制化に即した「前文」の書き換えおよび現行BCコードの 「総論」、第1章(定

   義)および「適用」に係る規定を含む新第1章の作成

 A 原則的に強制化する範囲(第1章〜第10章及び付録1)の詳細な見直し

 B BCコード強制化に係る海上人命安全条約(SOLAS条約)改正案の作成

 C Seed Cake(植物の種子採油後のしぼりかす)の運送要件の見直し

D Direct Reduced Iron Fines(還元鉄の粉末)の運送要件の検討

 

653 ばら積み液体貨物の運送

 

IMOでは1990年代前半から有害液体物質の汚染分類の見直しを検討してきたが、20037月のMEPC49において、現行の5分類方式から3分類+無害の4分類方式とすることが合意され、附属書Uが全面改正されることとなった。

これに伴い各物質の汚染分類および船型要件等を定めている「危険化学品のばら積み運送のための船舶の構造および設備に関する国際規則(IBCコード)」も改正された。改正附属書Uおよび改正IBCコードは200410月のMEPC52において採択され、200711日発効の予定である。

なお、現行IBCコードにおいて、規則の適用を受けない植物油が、改正IBCコードでは汚染分類Y類となり、ダブルハル構造が要求されることとなった。  

船型要件の変更により、植物油輸送の影響が懸念されたことから、植物油の輸送に関する免除規定を策定することとなったが、一方でフェーズアウトしたシングルハル油タンカーによる植物油の輸送は認めないことが合意されたことから、実質的には損傷時復元性要件のみが免除される緩和規定が策定された。

 

654 コンテナ検査のためのガイダンスの策定

 

20049月のDSC9において策定されたコンテナ検査のためのガイダンスが20055月のMSC80において承認され、締約国にIMO CSC/Circ.134として回章された。

 承認されたコンテナ検査基準は表−1のとおりとなっている。

 

[表―1 コンテナ検査基準]

部材名

危険と判断される基準

Top Rails

部分的な凹みが60mm以上

または、部分的な割れ目の大きさが45mm以上の場合

Bottom Rails

部分的な凹みが100mm以上

または、部分的な割れ目の大きさが75mm以上の場合

Headers

部分的な凹みが80mm以上

または、亀裂がある場合にはその大きさが80mm以上の場合

Sills

部分的な凹みが100mm以上

または、亀裂がある場合にはその大きさが100mm以上の場合

Corner Posts

部分的な凹みが50mm以上

または、亀裂がある場合にはその大きさが50mm以上の場合

Corner and Intermediate FittingsCastings

すみ金具の欠落または、亀裂がある場合にはその大きさが25mm以上、または溶接部分の亀裂が50mm以上の場合

Understructure

2以上の床はり(クロスメンバー)の欠落

Locking Rods Assemblies

施錠用ロットに1つ以上の損傷がある場合