7・2 船員の資格・技能教育と確保問題

 

721 船員教育機関の現況

船員の教育機関の入学状況及び卒業生の求人・就職状況は資料(資料7-2-17-2-2参照)に示すとおりとなっている。

200310月より、東京商船大学は東京水産大学と、神戸商船大学は神戸大学と統合し、独立行政法人となった。両商船大学系の学部及び乗船実習課については、それぞれの新大学の中で新たな学部名で存続しており、これまで通り船舶職員第一種養成施設に指定され運営されている。

海技大学校及び航海訓練所については、2001年度より独立行政法人化されており、既に業務をより効率的かつ効果的に行うという「独立行政法人化」の趣旨を十分に踏まえた運営を行っている。(資料7-2-3参照)

その他に日本船員福利雇用促進センター(以下SECOJ)が、船員の教育・訓練に関する事業を行っている。(資料7-2-4参照)

また、海技大学校及びSECOJでは、後述の通り日本人船員のみならず、外国人船員に対しても教育・訓練に関する事業を行っている。

 

722 外国人船員の海技資格承認制度

外国人船員が、日本籍船(国際船舶)において職員として就労する為に必要な日本国の承認証を得るために、船機長が本船上にて承認対象船員の実務能力の確認を行うことにより承認証を発給する制度(以下新承認制度)200312月に導入されたことで、20001月から導入されてきた承認試験制度では年3回に限られていた承認の機会が、船社の承認船員養成計画に合わせて適宜行えるようになった。

2004年度の承認試験制度では、マニラ(フィリピン)において、200469月及び20051月の計3回の承認試験が実施され、計131名の外国人船員が承認証を取得したが、新承認制度では、同じくマニラで計9回の国内海事法令講習が開催され、計205名の外国人船員が承認証を取得した。この結果、20053月末日現在で有効である承認証の取得者合計は、フィリピン人1,631名、インドネシア人32名とインド人29名の計1,692名となった。(資料7-2-5参照)

当協会は、SECOJと連携し、この2つの承認制度の円滑な運営に努めた。

 

723 危険物等取扱い責任者資格取得の教育

日本人船員に対する危険物取扱い責任者資格の取得は、海上災害防止センターにおいて実施されているが、国際船舶に乗り組む外国人船員に対しては船舶職員法に基づく国内海事法令講習と同様の内容でフィリピンの指定講習機関(3ヶ所)において実施されている。

2004年度におけるこの講習は、マニラにおいて計9回開催され、計185名の外国人船員がこの資格を取得した。

当協会は、SECOJと連携し、この危険物取扱い責任者資格制度の円滑な運営に努めた。

 

724 無線資格取得の教育

1)第三級海上無線通信士(三海通)資格取得の教育

国際船舶に乗組む外国人船員の国土交通省所管の三級海技士(電子通信)資格取得の必要性の高まりを受け、当協会は総務省および国土交通省に対して外国人船員が同資格試験を受験できる制度の創設を要望した。また、この資格を取得するには、国土交通省所管の「船舶職員及び小型船舶操縦者法」に規定される海技免許講習の修了が必要となっているため、当協会は外国人船員の受験資格制度の創設と併せてこれら講習も円滑に行われるよう要望した。

その結果、電波法が20045月に改正され、20053月にマニラで第一回目の三海通養成課程及び船舶局無線従事者証明を取得する為の新規訓練が日本無線協会の主催の下に開催された。また、同年7月には、同じくマニラにおいて国土交通省海技資格課による三級海技士(電子通信)の国家試験および第一回目の海技免許講習が登録講習機関であるSECOJにより実施され、6名の外国人船員がこの資格を取得した。

当協会は、日本無線協会およびSECOJと連携して、これら講習および国家試験の円滑な運営に努めた。

 

2)第一級海上特殊無線技士(一海特)資格取得の教育

わが国では、全ての航海当直職員に一海特以上の無線資格取得が義務付けられている。

2004年度の国際船舶に乗り組む外国人船員に対する一海特取得のための講習は、69月及び20051月の計3回マニラにおいて日本無線協会により実施され、計171(対前年度比4名減)が資格を取得した。

この結果、一海特を取得した外国人船員の合計は、フィリピン人1,435名、インドネシア人23名とインド人3名の計1,461名となった。

当協会は、日本無線協会およびSECOJと連携して、この講習の円滑な運営に努めた。

 

725 船舶料理士資格取得の教育

国際船舶の導入にともない、船舶料理士資格を外国人も取得することとなった。

2004年度の外国人船員に対する船舶料理士試験は、711月及び20052月の計3回マニラにおいてSECOJにより実施され、計104(対前年度比55名減)が資格を取得した。この結果、わが国の船舶料理士資格を取得した外国人船員は、フィリピン人430名とインドネシア人24名の計454名となった。

当協会は、SECOJと連携して、この外国人船員に対する船舶料理士試験制度の円滑な運営に努めた。

 

726 船舶保安職員資格取得の教育

IMO(国際海事機関)において、海事保安対策の一環としてSOLAS条約の改正及びISPS CODEの採択が200212月になされた以降、同条約が発効する200471日までに、国際航海に従事する旅客船及び総トン数500トン以上の貨物船は、船舶保安職員(以下SSO)を乗り組ませなければならないこととなった。このため、当協会はSSO養成制度の創設を国土交通省に働きかけた結果、海技大学校を実施団体とする養成制度が20039月から導入された。

2004年度のSSO資格要請講習は、国内で40回開催され、計1,081(対前年度比124名減)がこの資格を取得した。この結果、この資格取得者合計は日本人2,286名となった。

    

727 日本人船員の確保・育成の為の啓蒙活動

東京海洋大学および神戸大学海事科学部は、両大学の学生に対して、日本海運および海運会社の現状を紹介し、船員になる動機付けを行うことを目的としたセミナーを開催している。

2004年度は、東京海洋大学が2004113日に、神戸大学が同年128日に同セミナーをそれぞれ開催し、当協会は日本人船員の確保・育成のための啓蒙活動の一環として、この両セミナーに対して船社への周知や講師の派遣に努めた。