[資料1-5-1

 

第二船籍制度創設に係る第6次構造改革特区への当協会提案ならびに国交省回答

 

今治市/当協会提案(2004117日)

1.提案内容

・日本籍外航商船に対するいわゆる日本人船員配乗要件の改廃

日本籍外航商船に対するいわゆる日本人船員配乗要件の改廃、および、外国人船員の海技資格承認試験制度の抜本的見直し等、関連資格の取得手続の簡便化等を図る。

2.提案理由

 わが国外航商船隊1,873隻のうち日本籍船は僅かに103隻(20037月現在)に減少しているが、これは、現行制度のもとでの日本籍船が、船員配乗要件・船舶設備/検査要件・税制の3点を主とする高コスト要因によって国際競争力が大幅に劣るため、日本の外航海運企業・船主は、パナマなど海外に船舶を置籍せざるを得ない状況となっているからである。しかしながら、こうした外国籍船の場合、置籍国(旗国)のおかれている内外の政治・社会情勢の影響を受けざるを得ないことから、日本籍船に比し法的安定性に劣ることは否めず、さらに何かの非常事態が発生しても日本国政府の保護管理の直接的な対象とはなり得ないため、わが国にとって安定的な国際海上輸送力を確保する観点からも問題があると考えられる。日本籍船が外国置籍船並みの国際競争力を保持すれば、船主にとって船舶保全上様々な面で安心感の高い日本籍船志向が強まることは確実であり、また、日本籍船の減少を防止する施策を講ずることは、1996年の第136回通常国会において衆参両院で採択された「海上運送法の一部を改正する法律案に対する付帯決議」(添付1および2参照)の主旨にも合致することとなるので、圏域に海運・造船を中心とした海事産業集積が形成され、圏域の外航船主が500隻近い外国籍外航商船を実質保有する今治市と日本船主協会は、日本籍外航商船を対象に以下3点を実現し、今治市を船籍港とする新たな日本船籍制度(第二船籍制度)を創設し、わが国商船隊に占める日本籍船の比率を増加することとしたい。

 @ 日本籍船に対するいわゆる日本人船員配乗要件を改廃すること。

 A 日本籍船特有の船舶設備・検査要件や売買船に際しての各種手続きおよび規制を国際標準並みとすること。

 B 新造外航商船に関わる登録免許税を外国籍船並みとし、かつ外航商船に対する固定資産税を廃止すること。なお、既存の外国籍船の日本籍船への転籍については、これを促進するため、第二船籍制度創設後5年間は登録免許税を非課税とすること。

これら3点の実現を目指すにあたり、税財政措置にかかわるものは特区として取扱わないこととされているため、従来からBについては特区提案を行ってきていなかったが、今第6次提案にあたっては、Aについても提案に盛り込まず、今回は@「日本籍外航商船に対するいわゆる日本人船員配乗要件の改廃」にみに絞り込んだ提案を行うこととした。これは、第5次提案に対する国土交通省最終回答(@Aとも特区として対応不可とするもの)以降行われた同省と日本船主協会との折衝の中で、Aの船舶設備・検査要件については今後相当程度の規制緩和が期待できる回答が得られたためであり、特区提案をきっかけとする同省の本件に対する前向きな取り組み姿勢を評価したためである。

また今治市は、20051月の今治・越智地域12市町村合併を控え国土交通省に提出していた「海事都市構想推進事業」が、同省の2004年度「広域連携による自律型経済圏形成推進事業」の補助対象に選定されたことを受け、近々「海事都市」創造検討委員会を設立して海運・造船業の特区・地域再生提案での規制緩和の方向性を検討することとしている。今治市としては、本特区提案を地域再生の有効な手段のひとつとしても位置付けており、日本船主協会と協力して今治市をわが国第二船籍制度の船籍港とし、日本有数の地元造船業との相乗効果によって世界でも類例のない“新”今治海事都市創造を目指すこととしたい。

 

(添付1

海上運送法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

衆議院運輸委員会

平成865

 近年の急激な円高の進行等により我が国外航海運の国際競争力が低下した結果、日本船舶及び日本人船員の数は急激に減少し、深刻な事態に立ち至っている。我が国にとって安定的な国際海上輸送力を確保することは、海洋国家として不可欠な重要課題であり、政府は早急に次の事項につき措置を講ずべきである。

1 日本船舶と日本人船員の減少を防止するためには、我が国外航海運の全体的な基盤強化が急務であり、政府は関係者に一層の努力を求めるとともに、国際競争力強化のための有効な施策を講ずること。

2 我が国の国民生活・経済活動の安定、海上輸送における安全性と技術の確保、海洋環境の保全等の観点から、我が国船員の優秀な技術を今後とも維持していくことが必要であり、そのための有効な施策を講ずること。

 

(添付2

海上運送法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

参議院運輸委員会

平成8613

近年の急激な円高の進行等により我が国外航海運の国際競争力が低下した結果、日本船舶及び日本人船員の数は急激に減少し、深刻な事態に立ち至っている。我が国にとって安定的な国際海上輸送力を確保することは、海洋国家として不可欠な重要課題であり、政府は早急に次の事項について万全の措置を講ずべきである。

1 我が国外航海運の全体的な基盤強化を図るため、政府は関係者に一層の努力を求めるとともに、日本船舶と日本人船員の減少を防止するための国際船舶に係る措置の拡充等有効な施策を講ずること。

2 我が国の国民生活・経済活動の安定、海上輸送における安全性と技術の確保、海洋環境の保全等の観点から、我が国船員の優秀な技術を今後とも維持していくことが必要であり、そのための有効な施策を講ずること

右決議する。

 

国土交通省回答(2004128日)

構造改革特区制度は、地域等の提案により構造改革特別区域を設定し、当該地域の特性に応じた規制の特例措置を設けることにより、地域の活性化を図り、国民生活の向上及び国民経済の発展に寄与することを目的とするものである。したがって、特例措置の適用により、当該地域にメリットがあり、地域の活性化につながることが前提となっており、また、当該特区において効果が検証された場合には、全国に適用される制度改正を行い、構造改革を進めることが想定されているとともに、税の軽減などの財政措置を伴うものは対象としないこととされている。

これらのことも踏まえ、さらに以下の理由により、本提案は特区制度の趣旨になじまない。

  なお、船主協会等からの要望のあるいわゆる「第二船籍制度」を、西欧諸国等の制度に照らして、我が国で創設するのか、創設する場合にはいかなる要件とすることが適当であるのかについては、現在、国土交通省及び社団法人日本船主協会とが共同で「外航海運政策推進検討会議」を設置し、検討を行っている。

 

1 .本特区提案は、以下のとおり、税収増や雇用の創出につながらず、具体的に「地域にメリットがあり、地域の活性化につながる」ものとは考えられない。
(1)仮に、特区に船籍をおく船が増えたとしても、
 @登録免許税は国税であり、市町村の税収にはならない。
 A 船舶は船籍を置くのみであり、寄港の義務等はない。このため、

・現行の制度の下では、船舶の固定資産税は寄港回数を基に按分されるものであるため、船籍地に税収が入る見込みは少ない。

・船舶が寄港しなければ、雇用の増加や燃料・水の購入等の経済効果も期待できない。

(2)なお、船舶が置籍されると、船体及び船舶に備置される証書等に船籍港の名称   が記載されるが、船籍港の知名度の上昇等による観光客の来訪促進等の地域活性化効果があるとも考えられない。

(3)さらに、本提案が特区として実現されたとしても、税制の軽減措置は採られないので、便宜置籍船に比べてコスト競争力が著しく劣ることに変わりはなく、どの程度船舶の置籍が発生するかは疑問。

2 .また、船員の配乗要件については、条約にも準拠して船舶の航行の安全確保の観点から必要な資格・人員が定められた安全規制に係るものであり、船舶は船籍にかかわらず、いずれの場所においても航行できるため、特別の地域に限定して特例措置を講じる性格のものではない。なお、この配乗要件は、日本人船員確保の観点も踏まえ、労使も十分に協議を行い、決定されたものである。したがって、日本人船員の配乗要件については、日本人船員の確保・育成のあり方等様々な観点にも関連するので、全日本海員組合等の意見も幅広く聞きながら、十分な議論を重ねることが不可欠である。

 

今治市/当協会 国土交通省回答への意見(20041215日)

日本籍船がゼロに近づく懸念の中、外航船舶の大部分を外国法制に委ねることの潜在的リスクを問題視し、同リスク回避には第二船籍創設が有効とする提案に対し、今回も明確な見解が示されているとは思えないので、特区および外航海運政策推進検討会議での迅速な検討を再度要請する。約2,000隻の日本商船隊に含まれる外国籍船のうち、約470隻の船主は今治市民(海運会社)であり、現行制度のもとでは登録免許税や固定資産税の税収が船籍地に入らないとしても、これら船舶が日本の法律で守られるようになることは、市民である船主の利益につながり、ひいては法人市民税の増収も期待できると考える。詳細は補足資料を参照されたい。

 

(補足資料)

平成161215

(内閣官房構造改革特区推進室に提出)

 

わが国外航商船の第二船籍制度創設に関する意見(補足資料)

愛媛県 今治市

()日本船主協会

 

1.-1)国土交通省は、今治市と日本船主協会の提案に対し、「特区として対応不可」と回答している。しかし、近い将来、日本籍船が限りなくゼロに近づく恐れがある状況下、日本海運界が安全・安定輸送を確保していく上で、ほとんど全ての外航船舶を便宜置籍国の法制に委ねてしまうことの潜在的リスクについて問題意識をもち、そのリスクを回避する為に第二船籍を創設することが有効かつ必要な方策として、200311月の第4次特区提案以来提案していることに対しては、今回も明確な見解が示されていないと考えるので、「特区」および「外航海運政策推進検討会議」において迅速な対応をお願いしたい。また、約2,000隻のわが国商船隊に含まれる便宜置籍船のうち、約470隻の船主は今治市民(海運会社)である。現行制度のもとでは登録免許税や固定資産税の税収が今治市に入らないとしても、これら船舶を今治市にフラッギングバックすることによって日本の法律で守られ、安全かつ安定的に運航することができれば、市民である船主の利益につながり、ひいては法人市民税の増収も期待できるものと考えている。

1.-2)今治市では、平成17年に実施する合併後(平成17116日に12市町村が合併)のまちづくりの大きな柱のひとつに海事都市構想を掲げ、造船・海運業の集積(合併後は世界有数)やその背景となった地域の歴史・文化を生かしながら、観光も含め内発的で持続可能な発展を目指している。既に、本構想は国の支援も得ながら取り組む中でマスコミ等も注目しており、日本で初めて外航船の第二船籍地となることは、海運業を振興するだけでなく、本市の目指す地域資源を生かした個性的なまちづくりを大きく推進することになる。

1.-3)税制の問題が同時に解決されることが望ましいのは言うまでもないが、時間を要することから、不十分かもしれないが取り敢えず今回の特区提案を認め、その効果を見てみることも、特区制度の持つ試行的役割ではないかと思われる。

2.日本籍船については、今回の特区提案内容に加え、税制面での便宜置籍船並みが実現できればその減少に歯止めがかかり、増加に転ずるものと確信している。近年、日本籍外航新造船の登録は皆無に近い状況にある。日本の海運界では、日本籍船は国際競争力に欠ける船と同義語に近い受取られ方をしており、新造船の国籍を決定する際、ほとんどその検討対象にさえなっていない。現在、大手外航海運企業では、向こう数年に亘り莫大な船舶設備投資を計画しており、一旦船籍の決定が便宜置籍船の前提でなされ、建造準備段階に入ってしまうと、様々な面で日本籍船に変更することには困難を伴う。登録を促進しうる日本籍船の制度が迅速に作られることが望まれる。

3.日本人外航船員の減少が続いて久しいが、これは日本籍船減少の問題とは何ら関係がない。日本の海運企業は一般的に、日本人船員については海上での経験を陸上における船舶管理者を養成する為の訓練の場と捉えており、その限りで日本籍船と便宜置籍船とに全く差はない。各企業は上記の方針の下、自社の経営方針と自己責任に基づいて自己完結的に船員の雇用を図っている。その結果広く海事産業全体を見ると、船員の経験をもった海事技術者に不足がでるとの意見も存在するかもしれない。しかしながら、自社の必要とする以上の日本人船員を雇用することは、各企業の能力と責任を超えたものであり、それ以上の点については、国及び関係者が協議して海事産業全体として必要とされる海技技術者数を想定するなどし、わが国海事産業にとって必要な方策の内容を議論してはどうか。

4.国土交通省の回答は、全てを「外航海運政策推進検討会議」での検討に委ねるとの意向であると思えるが、同会議における日本船主協会の基本的考え方を整理しておくためにも、以下付言する。

@特区提案では税制改正が対象にならず、税制抜きの特区提案がたとえ満額回答であっても魅力ある船籍制度としては不十分であることは十分理解している。しかしながら、日本籍船の競争力回復については長年政策的な手当てを受けておらず、その結果将来ゼロになると予想される事態を迎えている。幸い政府主導で「特区制度」ができ、従来の方法とは異なる道が開かれたのでわれわれは特区に提案するものであり、政府内部で省庁の垣根を越えた協力を期待するものである。

A固定資産税については、現在の如く寄港地に対し寄港回数で按分する複雑な分配方法が合理的とは思えず、将来の課題として、船籍港に重く配分する方法も検討されて然るべきと考える。

B配乗要件の緩和だけでも実現すれば、日本籍船誘致に大きな前進になるものと思われる。全日本海員組合の意見が必要であるなら、国土交通省として日本船主協会と全日本海員組合との話し合いの場を設け、両者の意見を聴取してから判断すべきと考える。

 

国土交通省再回答200517日)

日本籍船への船舶職員の配乗に係る現在の法制度は、船舶の航行の安全確保の観点から条約に準拠した必要な資格を取得した者を配乗させることを求めているのであって、国籍に係る要件はない。しかしながら、当該資格を取得しているのは実態としてほとんど日本人であるところ、現在の日本人船員の配乗に関する取扱は、日本人船員の確保の観点も踏まえ、労使とも十分に協議を行い、決定されたものである。したがって、この配乗に関する取扱について検討する際には、日本人船員の確保・育成のあり方等様々な観点にも関連するため、全日本海員組合等の意見も幅広く聞きながら十分な議論を重ねることが不可欠である。

なお、提案主体より提出された意見において、「当省の回答において、船主協会等の提案に対して明確な見解が示されていない」とのことであるが、検討要請に対する回答において述べたとおり、日本船主協会等からの要望であるいわゆる「第二船籍制度」については、創設する場合にはいかなる要件とすることが適当であるのか等、既存の「国際船舶制度」との関係も踏まえて、現在、国土交通省及び社団法人日本船主協会とが共同で「外航海運政策推進検討会議」を設置し、検討を進めているところである。この会議の場においては、今回提出された意見及び補足資料において趣旨が明確でない多くの点も含め、検討を行っているところであり、引き続き、船主協会の要望も踏まえて十分に検討を深めてまいりたい。

また、第二船籍制度の導入が地域に与えるメリットについて、便宜置籍船が今治市にフラッギングバックすることにより「市民である船主の利益につながる」及び「ひいては法人市民税の増収も期待できる」とあるが、検討要請に対する回答において述べたとおり、本提案の内容では税制の軽減措置は採られないので、便宜置籍船に比べてコスト競争力が著しく劣ることに変わりはなく、どの程度船舶の置籍が発生するかは疑問であり、外航海運企業もフラッギングバックを行うことを約束できるのかも疑問である。また、仮に便宜置籍船が今治市にフラッギングバックしたとしても、単に船籍が今治市に置かれるだけで、船主の利益につながり、法人市民税の増収につながることになるとは言えない。

 

今治市/当協会 国土交通省再回答への意見(2005114日)

「条約に準拠した必要な資格を取得した者」であれば、国籍に拘わらず「船舶の航行の安全確保の観点」上の問題はないというのが現在の法制度であると解してよいか。また、従ってその観点に関する限り、日本人船員配乗要件を廃止しても問題はないと解してよいか。

「フラッギングバックしたとしても今治市に船籍が置かれるだけで法人市民税の増収につながるとはいえない。」という回答に対する当方の意見は次の通りである。即ち、今治市に会社を置かない船主については、船籍が置かれるだけで市にとってメリットはない。だが、外航商船隊の四分の一を占める船主は今治市民である。この市民である船主が、日本籍を有することで安心、安定的に船舶を運航できることによって利益を上げられれば、当然市民税・法人市民税として市に還元される。もちろん、配乗要件の緩和だけでは不十分な第二船籍制度ではあるが、世界屈指の海運・海事産業が集積する今治市で日本の船主を代表する日本船主協会と共に、取り敢えず第二船籍制度の試行に取り組みたい。

当方は、日本籍船が減少していくことの潜在的リスクを懸念し、特区制度の活用による迅速な対応を求めており、提案の早期実現に向けた前向きな検討を再度要請する。また、「外航海運政策推進検討会議」においてもより迅速な検討を要請する。

 

国土交通省最終回答(200529日)

日本籍船への船舶職員の配乗に係る現在の法制度では、船舶職員及び小型船舶操縦者法に基づく必要な資格を取得することを求めているのであって、すでに回答しているように国籍に係る要件はない。しかしながら、現在の日本人船員の配乗に関する取扱は、これも再検討要請に対する回答で述べたとおり、日本人船員の確保の観点も踏まえ、労使とも十分に協議を行い、決定されたものであり、労使協約にも位置づけられている。したがって、この配乗に関する取扱について検討する際には、日本人船員の確保・育成のあり方等様々な観点にも関連するため、全日本海員組合等の意見も幅広く聞きながら十分な議論を重ねることが不可欠である。

今回の再意見も含め、いわゆる第二船籍制度導入についての提案主体の主張は、抽象的・情緒的であり、その趣旨・メリットは依然として不明確なままである。日本船主協会と国土交通省が共同して別途設置した『外航海運政策推進検討会議』においては、抽象的・情緒的な議論では検討を進捗させることはできないとの認織の下、より具体的・実証的な議論を目指しており、会議の一方の当事者である船主協会も同会議におけるそのような検討状況について十分認識されているはずである。

第二船籍制度の趣旨・メリットについて、これまで提案主体からは「便宜置籍船には潜在的リスクが存在する」等の主張がなされているが、そもそも潜在的リスクの具体的な内容について未だに説得力ある説明がなされていない。また、今回の再意見において示されている「安心、安定的に船舶を運航できる」との主張についても、この「安心、安定的」とする具体的内容が何かも不明である。さらに、配乗要件の緩和のみで、フラッグバックし、「利益を上げられ」「当然市民税・法人市民税として市に還元される」ことがいかなるメカニズムで実現されるのか、合理的な説明が見出せない。このように、提案主体の要望には不明確な点が多々あると言わざるを得ない。

また、「『取り敢えず』、第二船籍制度の施行に取り組みたい」とあるが、構造改革特区は杜撰な論拠で特例を容認しようとするものではなく、その意義や効果について最低限の検討を行うことは当然必要であり、『取り敢えず』行うといいた安易な考え方は適当とは思われない。特に、船舶は船籍地外のいずれの場所においても航行できる性格を有するものであり、仮に今治市に限定して特例措置を講じることによって何らかのデメリットが生じた場合には、その影響は今治港外にも及ぶことが十分考えられる。したがって、今治港内のみで航行する船舶を対象とするといったような制限を置くのでもない限り、特区制度になじむものではないことは、これまでの回答でも指摘しているところであるが、この点について提案主体から具体的な考え方は何ら示されていない。

さらに、これまでの回答においても再三述べているが、冒頭に触れたとおり、いわゆる第二船籍制度については、現在、目本船主協会と国土交通省とが共同で外航海運政策推進検討会議を設置して具体的・実証的な検討に努めているところであり、国土交通省としては第二船籍についての議論を避けるつもりはなく、同会議において真摯に議論に取り組んでいるところである。提案主体である日本船主協会は、同会議の一方の当事者でもある。しかし、今回の再意見は、同会議における検討内容と矛盾したものであり、このような再意見を提出した日本船主協会の意思決定について、理解できない。