【資料3-3-1-2

2005510

 

14回アジア船主フォーラム

共同声明

 

14回アジア船主フォーラム(ASF)は、200559-11日、豪州クィーンズランドのサンクチュアリー・コーブにおいて開催された。会合には、豪州、中国、台湾、香港、日本、韓国、アセアン(アセアン船主協会連合会(FASA):インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの船主協会により構成)各船主協会の代表137名が出席した。豪州船協の会長であるDavid Sterrett氏が会合の議長を務めた。

 

ASFは、過去14年間にわたってアジア船主の声を成功裏に調整し、世界海運において一層大きな卓越した存在となるためにアジア船主の意見や見解を述べてきた。5-S委員会の作業を通じ、ASFはアジア船主に影響を及ぼす事項について建設的な意見を提供することができた。

 

昨年に引き続き、ICSINTERTANKO INTERCARGOの代表が、ASF本会議に先立ってASF各国船協団長および5-S委員会委員長に講演した。こうした十分かつ率直な意見交換こそ、世界海運業界が共通課題について意見調整する上での支えとなっている。

 

出席者は、現実的に履行し得る公正な法制度を奨励するためのアジア船主の根拠に基づいた正当な意見や懸念が率直かつ明確な方法で伝わることを確実にするための更なる努力を行うべきであることに合意した。

 

出席者は、昨年12月に起こった津波災害以降数ヶ月間小康状態にあったマラッカ・シンガポール海峡における船舶を狙った海賊および武装強盗事件の発生件数が以前の水準に戻ったことについて、特に強い懸念をもって留意した。さらに出席者は、もし発生した場合は世界経済に甚大な被害をもたらす恐れのある同海峡における国際テロリズムの可能性についても強い懸念を表明した。ASFは、SNEC(航行安全・環境委員会)によって表明された(海賊事件に関する)声明を全面的に支持することを満場一致で合意するとともに、関係国が互いに協力し、同海峡を航行する船舶の安全を確保するために効果的な方策を実施するよう促すものである。

 

シッピング・エコノミックス・レビュー委員会(SERC

 

ASFは、SERCの第16回・17回中間会合が、2004111日に台北で、200544日にペナンでそれぞれ開催されたことに留意した。本委員会の草刈隆郎委員長は、ASF総会への報告の中で以下の事項を強調した。

 

市況の現状と将来の見通し

 

ASFは、ドライバルク市況が数年間は好況であり続け得ること、およびVLCC市況も当面は堅調に推移するであろうことに留意した。また、アジア域内のコンテナ・トレードに関しては、荷動き量は少なくとも数年間は一貫した伸びを見せるであろうこと、そして船腹需給バランスの改善も見込まれるであろうことに留意した。太平洋コンテナ・トレードに関しては依然として続く堅調な荷動きに留意し、同トレードの東航における現在の需給バランスは今後数年は維持されるであろうことに合意した。

 

定期船トレードの現状分析

 

出席者は、増大し続けているコスト要因への懸念を共有するとともに、これらのコストが高品質かつ安定的なサービスを提供するために続けられている船社の能力に重大な挑戦を投げかけるものであることを確認した。出席者は、すべてのCEOがそうしたコスト要因の検討に努め、顧客にアジア域内および太平洋航路の実態を知らせる努力をしていくことが重要であることに合意した。出席者は、各船社および認可された船社間協議協定にとって、有効かつ建設的な対話を通じ、関係荷主との意見交換や協議に取り組んでいくことが絶対的に必要であることを確認した。

 

独禁法適用除外制度

 

出席者は、外航船社間協定に対する独禁法適用除外制度に関し最近EUと豪州で見直しが行われていることに留意した。そして、船社間協定がサービスの品質と効率性の向上に寄与し、現行の除外制度が荷主・船社を含む貿易業界全体の繁栄をもたらす制度であることが認識された。出席者は、船社が、船社間協定の必要性について荷主や政府など関係者の理解を求めるための努力を継続すべきであることに合意した。

 

SERC委員長

 

ASFは、草刈隆郎氏が2001年から務めてきたSERC委員長職を芦田昭充氏(JSA常任理事・商船三井社長)が引き継ぐとのSERCペナン中間会合の決定を承認した。ASFは、SERC委員長としての草刈氏の尽力に対し感謝の意を表した。

 

シップ・リサイクリング委員会(SRC

 

ASFは、SRCの第8回中間会合が200531日に広州で開催され、同中間会合の一環として新会雙水船舶解撤ヤードおよび広州シップヤードインターナショナルへの訪問が行われたことに留意した。また同中間会合には、オブザーバーとして造船、シップリサイクル業界および船級協会からの参加があった。本委員会のDr. Frank Lu議長からは、以下の事項が強調された。

 

シップ・リサイクリング・ワーキング・グループ

 

ASFは、IMO/ILO/バーゼル条約の共同作業部会の最近の動きについて議論を行った。ASFは、関係業界の特徴と現状を十分に考慮しつつより安全かつ環境に優しいシップリサイクルを達成するには、IMOガイドラインの実施が最も効果的かつ合理的な方策であると信ずるものである。さらにASFは、バーゼル条約はリサイクル予定の船舶には適用されないとの考えである。

 

リサイクル施設への投資

 

ASFは、十分な世界の解撤能力を維持しつつ安全と環境のレベルを着実に改善することを目的としたリサイクル施設への投資の促進が非常に重要であると認識した。この目的を達成するためには、緊密な連携が不可欠であり、ASFとしてもリサイクル国とその他の関係国に対しお互いに協力するよう働きかけることとした。

 

積極的な協力

 

ASFは、アジアの関係者に対し、協調努力しつつ、より積極的に船舶リサイクルの国際会議に出席することを求めるものである。世界トップレベルの海運、造船、シップリサイクル業界ならびに舶用業者がアジアに拠点を置いているにも拘わらず、アジアの国々の声が国際会議で十分に表明されていないと考えられる。

 

航行安全および環境委員会(SNEC

 

SNEC委員長は、20041126日にシンガポールで開催された同委員会の第11回中間会合において議論された諸問題、特に次の事項について最新の情報を提供した。

 

マラッカ・シンガポール海峡における海賊および武装強盗

 

ASFは、今年はじめの2ヶ月間は比較的落ち着いていたマラッカ・シンガポール海峡における海賊の最近の活動について、強い懸念を示した。タンカー、タグボート、はしけが海賊の襲撃を受け、銃やナイフで脅かされて職員や部員が誘拐された。かれらの安全と解放の引き換えに多額の身代金が要求されている。

ASFは、船員および船舶の安全が極度の危険に晒されていることから、このような海賊行為を強く非難するものである。オイル・タンカーに対する攻撃は、本船の座礁や広範囲にわたる油の流出を招き、海洋環境に悪影響を及ぼすといったような深刻な結果を引き起こすであろう。

 

ASFは、沿岸国の政府が同海峡における海賊行為を抑えるために、さらに強固な政策的意志を持って強硬な対策をとるよう強く促すものである。もし、沿岸国が本問題を解決できないのであれば、国際的な援助を要請することについて真剣に検討するべきである。またASFは、沿岸国に対し、管轄権の問題は脇に置いて、至急、多国間協力協定を締結し、これを実施するよう促すものである。

 

MARPOL条約附属書T−シングルハル・タンカーのフェーズアウト

 

ASFは、IMO海洋環境保護委員会(MEPC)によって採択されたMARPOL73/78条約(海洋汚染防止条約)附属書Tの改正が、タンカー業界にとって大きな問題も無く200545日に発効したことに留意した。今のところ、規則で定められた自国の裁量による規定についてIMOに通知を行った国はほとんどない。このためASFは、MARPOL条約附属書Tに関係する全ての国が、早急に自国の方針についてIMOに通知するよう促すものである。

 

MARPOL条約附属書Y−大気に関する規則

 

MARPOL73/78条約附属書Yおよびその議定書が2005519日に発効する予定である。また、2006年にはバルティック海域が、最初の硫黄酸化物(SOx)排出規制海域(SECA)として、燃料油中の硫黄分を1.5%未満とする規定を適用される予定である。

 

ASFは、附属書Yを支持するものの、EU域外において含有硫黄分1.5%未満の燃料油の供給が可能なのかどうか、また、損害や罰金を伴うような、その他運用上の問題、例えば(燃料油の製造過程における油の)分離や処理、異なる硫黄分を含む燃料油の使用、起こりうる潜在的なミスについて懸念を表明した。

 

海運関連業界は、MARPOL条約附属書Yの発効にあたって十分な準備を行うとともに、その過程で生じるであろう諸問題を克服するよう求められる。

 

船員委員会(SC

 

船員委員会第10回中間会合が20041130日(火)にインドネシアのジャカルタにおいて開催された。船員委員長であるリ・シャンミン氏は数々の最近の懸案事項を報告した。特記事項は次の通り。

 

船員の雇用及び訓練

 

ASFは、教育を受けよく訓練された若者をこの産業に取り込もうとASFメンバーが努力していることに留意した。ASFは、更に200410月に上海で開催されたAMETIAP(アジア太平洋地区海事教育・訓練機関連合会議)セミナーの結果について留意した。このセミナーでは海運が取り上げるべき海事教育・訓練に関して、6つの重大関心事項が明らかとなった。ASFは、現在の世界的な最低基準の適用は部分的な効果をあげているにすぎず、今もさまざまな基準が存在し、訓練学校卒業生の能力に差があるという状況について意見が一致した。ASFとしては、海事教育及び訓練において、産業界が地域別及び世界的に必要としている能力を認識することが不可欠であるとの結論に至った。

 

ILO海事統合条約

 

ASFは、新たな統合条約に詳細な検討を加えるためにジュネーブで20049月に開催されたILO海上技術準備会議および20054月に開催されたILO特別会議に、多くのASFメンバーが参加したことについて留意した。ASFは、条約草案を最終化するために開催された特別会議に参加した代表団の作業を高く評価した。ASFは、全ての国が進んで批准しうるような草案の作成に向けて、各国政府が積極的かつ誠実に取組むよう求めるものである。ASFは、世界の大多数の船員を訓練し供給するアジア諸国の希求と関心を反映させた条約策定に向け、2006年に開催される最終会議にASFメンバーが積極的に参加することを奨励するものである。

 

アジア船員の労働条件

 

ASFは、最近の船員の労働条件に関する交渉の進展について留意し、議論した。

SCは、現在及び将来の船員の労働および福利の発展について、アジア船主の利益とアジアの船員雇用安定の観点から、アジアの船主が声を糾合することが重要であると考える。ASFは、船員の雇用条件は居住国の生活水準及び経済状況に見合ったものであるべきであり、雇用条件は雇用者と船員供給国の代表との協議を通して決定されるべきであると再度唱えた。

 

保険法務委員会(SILC

 

残念ながら、健康上の理由から船舶保険・法務委員会の委員長であるジョージ・チャオ氏は出席することができなかった。欠席の委員長に代わり、副委員長のジャカ・シンギー氏は、船舶保険・法務委員会が2005311日に香港で第10回中間会合を開催した旨報告するとともに、諸問題に関する最新の進捗状況について出席者へ報告した。特に以下について報告した。

 

船舶に起因する海洋汚染

 

ASFは、世界のいたる場所での船舶からの故意の油濁事例全てについて遺憾の意を表した。ASFは、EUとカナダをはじめとしたいくつかの国で、偶発的な油濁を罰するとともに各々の司法管轄で異なる解釈を生じさせる不明確な法概念を用いる規制が導入されようとしていることに痛惜の念を示した。

 

特にASFは、偶発的な油濁に対し厳格責任を導入するとしたカナダの法案C-15の条文に対し重大な懸念を示した。ASFは、船舶に起因する海洋汚染の根絶に向け、船員訓練を見直しし、船舶機器の見直しにIACSが加わることを促すことに合意した。

 

1974アテネ条約2002年改定議定書

 

ASFは、1974年アテネ条約の2002年改定議定書がもたらす潜在的影響について前回会合に引き続き議論を行い、高額な強制保険に対し保険の引受けが可能なのか、そして“テロリスク”を本議定書、及び同様の規定振りをしている他の条約にどう適切に取り入れるのかについて、IMOコレスポンデンス・グループの中で意見の一致が見られていないようであったことに留意した。ASFは、コレスポンデンス・グループの中で、議定書の批准を“現行のまま”押し進め、そして業界自身に解決策を模索させようとする意見が一部にあることを非常に懸念している。改定議定書が完全に効力を及ぼす前に、現実的に運用可能なものとすることが不可欠であるというのがASFの見解である。

 

サブスタンダード船

 

ASFは、クオリティー・シッピングとサブスタンダード船防止に対する自らの責任について再確認しつつ、OECD海運委員会に提出されたテレンス・コリン氏による報告書の結論の多くを支持する。 ASFは、報告書に書かれた提案の多くに示された潜在的変更点を議論している国際P&Iグループの活動に留意するとともにこれを支持する。

 

次回会合

 

日本船主協会の草刈隆郎会長から、第15ASF会合は200652830日に日本で開催するとの発表があった。

 

 

出席者は、オーストラリアでの第14ASF会合におけるASAの卓越した手配とDavid Sterrett議長の効率的な議事運営に感謝の意を表した。

 

以 上

 

編集者注 :

アジア船主フォーラム(ASF)は、アジアの地域/国からの12船協(豪州、中国、台湾、香港、日本、韓国、アセアン(インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム))から構成されている。ASFの目的は、アジア船主業界の利益を促進することである。ASF年次総会の間には、5-S委員会(シッピング・エコノミックス・レビュー、船員、シップ・リサイクリング、航行安全および環境、保険法務)により継続した作業が遂行されている。ASFの船主および船舶管理者は、世界商船船腹の約40%を支配・運航していると推定されている。