【資料3-3-2-6

2007110

 

アジア船主フォーラム(ASF)船舶保険・法務委員会

 10回中間会合 共同声明

 

アジア船主フォーラム(ASF)船舶保険・法務委員会(以下、委員会)第10回中間会合が、2005311日(金)、香港において開催された。

会合には、中国、台湾、日本、香港の各船主協会およびアセアン船主協会連合会を代表してインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポールの各船主協会が参加した。

委員会は、元香港船主協会会長、及び第12ASF総会議長を努めたTai Chong Cheang Group会長K.H.Koo氏のご逝去に接し、深い哀悼の意を表した。

委員会は、船舶からの故意による油濁事例の全てについて遺憾の意を表した。しかし、船舶に起因する海洋汚染に対する刑事罰についてのEU指令案が採択されたことにより、偶発的な油濁をも罰することとしたEU議会の決定に深い憂慮を示した。特に、委員会は、“serious negligence”という語句が使用されていることを強く懸念する。この語句はEU加盟国の法制度のなかで共通した定義が存在せず、異なる解釈を生じることにもなりかねない。委員会は、指令案の規定がMARPOL条約に整合していないことに留意し、こうした地域規制は世界的な貿易業務に携わる船舶の運航に混乱と障害を招くだけであると評した。

 

さらに、EU諸国のなかには自国海域を航行している船舶に対し、極めて根拠が希薄な証拠に基づき取締りを行っている国もあり、委員会はこうした行為に対し懸念を表明した。こうした行為は、監視航空機が高度から撮影した写真による判別ではなく、より確実な証拠が伴う場合に限り行われるべきである。

 

委員会は、運航上生じた油濁に対する米国環境保護局の捜査活動が成果をあげていることに留意し、一方で、違法な作業を報告した乗組員に与えられる高額な“告発者”報酬について懸念を表明した。多くの国でのこうした報酬は、自分達の経済的利得を目的に運航会社が違法な作業を隠蔽する誘因になるというのが委員会の見解である。この点について、委員会は、船員供給国のなかには、違法な作業の証拠を基に船員のライセンスを取消すこと、及び環境問題への訓練の向上を図る企てがあることに大いに力づけられた。

 

さらに委員会は、カナダ渡り鳥法(1999)とカナダ環境保護法(1994)の改正を求めるカナダ法案C-15に留意し、海事グループ連合(CoMG)の活動を全面的に支持する。当該改正は、MARPOL条約の範囲を超えて、実際にカナダの200マイルの排他的経済水域内における偶発的な油濁を犯罪行為とみなしており、油濁防御に関するカナダ国内体制の抜本的な変更をもたらすことになる。CoMGによると、改正は適切な協議が開催されることなく、急ぎ早に進められている。少なくとも、いかなる改正でもカナダ海運法のなかで行われるか、またはIMOに対しMARPOL条約の改正を提案するのが道理ではないかと考える。

 

委員会は、1974年アテネ条約の2002年改定議定書がもたらす潜在的影響について前回会合に引き続き議論を行い、高額な強制保険に対し保険の引受けが可能なのか、そして“テロリスク”を本議定書、及び同様の規定振りをしている他の条約にどう適切に取り入れるのかについて、IMOコレスポンデンス・グループの中で意見の一致が見られていないようであったことに留意した。委員会は、コレスポンデンス・グループの中で、議定書の批准を“現行のまま”押し進め、そして業界自身に解決策を模索させようとする意見が一部にあることを非常に懸念している。改定議定書が完全に効力を及ぼす前に、現実的に運用可能なものとすることが不可欠であるというのが委員会の見解である。

 

委員会は、国際海上物品運送法条約改正草案の検討状況に留意し、いくつかの主要な問題について議論した。メンバーは、船主の権利、免責を変更しようとする提案には断固として反対するよう、審議の推移を注視し続けることとした。また委員会は、航海過失免責について、少なくともパイロットの過失免責は維持すべきことで意見が一致した。

 

委員会は、国際油濁補償基金作業部会が314から23日に開催され、最も重要な議題の一つとして、CLCFCを改正すべきか否かについて結論を出すこととしていることに留意した。委員会は、全ての政府関係者に対し、条約を“現行のまま”維持し、そして最近改正された責任限度額の引上げと追加基金設立の効果を検証するための十分な時間が与えられるよう促した。委員会は、均等な拠出分担に関する油受取人の懸念に答えるため、条約の枠組外で実行可能な解決策を見出そうとする国際P&Iグループの試みを支持する。

 

委員会は、サブスダンダード船排除に対する責任を再確認した。そしてOECD海運委員会へ提出されたテレス・コリンによる報告書の結論の大部分を支持する。委員会は、国際P&Iグループが、報告書に書かれた提案の多くに関連し、見直しの可能性について議論していることに留意し、この活動を支持する。

 

委員会は、海洋航行の安全に対する不法な行為の防止に関する条約等(ローマ条約またはSUA条約)の改正に関する議論が、現在IMO法律委員会で進行中であること、特に、131日から24日にかけて開催された中間会合の結果と条約改正の外交会議の開催が200510月に予定されていることについて留意した。メンバーは、刑事罰を伴いかねない新規定については明確かつ正確にドラフトされるべきであり、また乗船に対する明確な根拠と条約に盛り込むべき適切なセーフガードが必要であるとする海運業界の立場を支持した。

 

委員会の次回会合は、2005510日、ASF14回総会に先立ちオーストラリアで開催される。