・5 船員・船籍問題への対応

 

151 外航日本籍船の日本人船・機長配乗要件の撤廃

当協会と全日本海員組合(以下「全日海」)は、20057月、外航日本籍船の減少に歯止めをかけるため、新規に登録される日本籍船について、現行の国際船舶に適用されている日本人船・機長配乗要件の撤廃を国土交通省に申し入れた。(船協年報2005年参照)

この労使申し入れを受け、国土交通省は、20059月に官労使と学識経験者で構成する「船・機長配乗要件の見直し等に関する検討会」(座長:野川 忍 東京学芸大学教授)を設置し、見直しに係る課題等の検討を開始した。同検討会では、200511月の第2回検討会および20061月の第3回検討会において、船機長配乗要件を撤廃した場合の国内法令への影響や、海外における配乗要件等の検証作業が行われ、日本籍船における日本人船・機長配乗要件が撤廃された場合でも関係法令への抵触を指摘する省庁はないこと、ならびに海外では外国人船長を認めているケースがあることから、日本の配乗要件の撤廃について国際的な問題はないことが確認された(資料1-5-1-1)。また、これら検討会の議論の中で、制度変更を行うためにはその具体的な効果を示す必要があると指摘されたことを受け、当協会は、20063月、船・機長配乗要件の撤廃が実施された場合、新規に外航日本籍船が20072010年の4年間に46隻建造される見込みであることを明らかにした(資料1-5-1-2)。これら検討会での審議を受け、20064月の最終検討会において、船・機長配乗要件の撤廃に係る法的問題はないとの結論が出された。

その後、国土交通省は、7月の交通政策審議会海事分科会において、2007年度からの新規外航日本籍船の建造・登録に間に合わせるべく、関係通達の改正や承認試験の準備など、配乗要件の撤廃に向けての作業に着手したことを報告した。また、同分科会において国土交通省より、配乗要件撤廃を新規登録船に限定することは制度上困難であるとしつつ、既存の国際船舶は船協加盟船社およびその関係船社所有であることを考慮すると労使で適切に対応すれば担保できると考えられるが、制度を具体化する中で労使合意が実効あるものとなるよう配慮していきたいとの見解が示された。

200610月の第9回「船員・船籍問題労使協議会」では、船・機長配乗要件の撤廃に係る既存船の取扱いについて、前述の交通政策審議会海事分科会における国土交通省見解をふまえ、改正通達の適用までに、既存船の取扱いを別途労使確認することとした。

 

152 外航日本人船員(海技者)確保・育成新スキーム

 当協会と全日海は、外航日本人船員(海技者)の確保・育成新スキームについて、20055月の労使合意に基づき(船協年報2005年参照)、200510月の第5回「船員・船籍問題労使協議会」(以下「協議会」)、20062月の第6回協議会、ならびに協議会の下に設置された作業委員会における検討を経て、同年5月の第7回協議会において『日本人船員(海技者)確保・育成に資するための施策「骨子」』(資料1-5-2-1)を取り纏めた。その後、同年6月の第8回協議会において、新スキームに関する検討の進め方等を確認の上、同月、国土交通省に対し、同「骨子」を実現するための国の支援を要望した。(資料1-5-2-2

これを受けた国土交通省は、20066月、官労使で構成する「外航日本人船員確保・育成に関する新スキームのための検討調整会議」(資料1-5-2-3)を立ち上げ、2007年度より新スキームを実施するための実務的検討を開始した。検討調整会議は、20066月、新スキームの検討にあたり、どの程度の海技者のニーズがあるのかを把握するため、海事関連企業・団体を対象にアンケート調査を実施した。その結果、回答船社174社のうち、66社(38%)より新スキームで育成された人材を「是非活用したい」または「大きな費用負担がなければ活用したい」との回答があった。また、同年8月には、商船高等専門学校5校(大島、鳥羽、富山、広島、弓削)の就職担当教授と新スキームに関する意見交換を行い、新スキームの概要と官労使3者の取り組み状況を説明するとともに、進路先の有力な選択肢のひとつとして学生に紹介してもらうよう要請した。

200610月の第9回協議会では、検討調整会議での検討の進捗を確認するとともに、新スキームにおける育成要員の労働条件等の報告が行われた。