2・1  地球温暖化防止問題

 

211 気候変動枠組条約

人類の活動の拡大に伴い、二酸化炭素やメタンなどの「温室効果を有するガス」が人為的に大量に大気中に排出されることで温室効果が強まり、地球が過度に温暖化する惧れがある。このため、1992年、気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガス濃度を安定化させることを究極的な目的として、国連において気候変動枠組条約が採択され、1994年に発効した。20052月現在、締約国は189カ国になっている。

1997年の第3回締約国会議(COP3)において採択された議定書(いわゆる京都議定書)では、先進国の温室効果ガス排出量について法的拘束力のある削減目標が設定され、わが国については2008年から2012年において基準年(原則1990年)比6%削減することとされている。また、これを達成するため市場原理を活用した柔軟な国際的仕組みとして京都メカニズム(共同実施、クリーン開発メカニズム、排出権取引)の導入などが規定された。

1)京都議定書の発効

京都議定書の発効要件は、@締約国の55カ国以上の批准、かつA批准した先進国の温室効果ガス排出量が先進国全体の55%以上あることとされ、この要件を満たした後、90日後に発効することとなっている。

わが国では、200111月の第7回締約国会議(COP7)における京都議定書の運用に関する細目を定めた「マラケシュ合意」の採択を受け、京都議定書締結に向け、同議定書の国内担保法となる「地球温暖化対策の推進に関する法律」を改正し、20026月、京都議定書を批准した。

その後、20041118日、ロシアが本議定書を批准したことにより、上記発効要件を満たしたため、同議定書は2005216日に発効した。

 

2)日本経団連環境自主行動計画

日本経済団体連合会(日本経団連)は、温暖化対策について産業界として実効ある取り組みを進めるべく、1997年より各業界の環境自主行動計画を取りまとめており、2006年には60業種・企業が参加した。その結果、2005年度のCO2排出量は1990年度に比較して0.6%減少(昨年度比で0.5%増加)した。その要因として、生産活動量が増加してCO2排出係数が悪化したものの、活動量あたりの排出量の削減効果がこれを上回っており、各業種・企業による省エネなどのCO2排出削減対策が効果を挙げているとした。

なお、当協会もこの取り組みに賛同し、環境自主行動計画を策定しており、外航船舶を対象に、2010年度における輸送単位当たりのCO2排出量(排出原単位)を1990年度より10%削減するとの目標を立てている。調査の結果、2005年度については1990年度比20.7%減(昨年度比で2.5%減少)となった。

 

年度

1990

2000

2002

2003

2004

2005

CO2排出原単位

1.00

0.86

0.80

0.78

0.81

0.79

注)排出原単位は、輸送貨物1トン当たりのCO2排出量で、1990年度を1とする。

 

212 IMOの動向

国際船舶からの地球温暖化ガス(GHG)削減については、京都議定書に「国際民間航空機関(ICAO)および国際海事機関(IMO)を通じて作業することにより、航空機用および船舶用の燃料からの温室効果ガスの排出の抑制または削減を追及する」と規定されており、IMOにおいて検討が行われている。

20057月の第53回海洋環境保護委員会(MEPC53)では、各国の思惑が交錯しながらも、GHG排出指標(インデックス)算定のための暫定ガイドラインが策定された。

同ガイドラインについては、2008年までの間、各締約国は試行的にこれを用い、実測によるデータをIMOに報告することとなっている。

20063月のMEPC54では、同ガイドラインの実測データの報告の他、排出権取引に関する提案があり審議が行われた。

1GHGインデックス算定のための暫定ガイドライン

インドおよびINTERTANKOよりGHGインデックスの実測データが報告された。同報告では、同型船舶であってもインデックスが大きくばらつくため、GHG排出量の基準値を検討するためには、統計学的にも多くのサンプル数が必要となることが示されており、既にインデックス実測データ収集作業実施中の国々からも、同様の傾向がある旨報告された。

また、バラスト航海の扱いや、貨物量(単位)などについて、再検討する必要があるとの意見があり、一部見直しの必要性が確認されたが、MEPC53の決定に従い、2008年までは、本ガイドラインに基づきデータ収集を行うことが合意された。

なお、原油、石油製品などの貨物から発生する揮発性有機化合物(VOC)についても温暖化効果が懸念されることから、GHGインデックスの対象物質にそれら物質を加えるべきとの意見があったが、対象物質は京都議定書に定められた6物質(※1)に限定すること、特にCO2排出に重点を置くことが確認された。

1CO2、メタン、一酸化ニ窒素、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、六フッ化硫黄(SF6

 

2CO2排出権取引

陸上においては、CO2の排出量削減に排出権取引が有効に機能しており、また次の理由からも、船舶におけるCO2排出権取引制度を導入すべきとの提案があった。

@      IMO総会で定められたCO2排出削減に関する作業が大幅に遅れていること

A      欧州連合、国際連合あるいは事業者の団体などが、国際海運に対するGHG削減に関する規制の検討を開始する可能性が大きいこと

B      この場合、船舶の運航が考慮されない非現実的な内容となる可能性があること

 

同提案に対しては主に発展途上国が反対しており、その反対の理由は、GHGに関する世界的な合意は、京都議定書内において規定されている京都メカニズム(※2)だけであり、同メカニズムと国際海運との関係が不明確な状況においては、排出権取引の導入について合意できないというものであった。

審議において、排出権取引を含む市場原理に基づく削減方法の検討は、将来的課題であることが確認され、具体的な検討は行わないこととなった。

2:京都議定書において定められた、自国以外でのCO2削減の取組みを認めるなど温室効果ガス削減を柔軟に行うための経済的メカニズム