2・3 油汚染事故および海上災害防止への対応

 

231 官民合同流出油防除訓練の実施

 19977月に東京湾中ノ瀬で発生した大型原油タンカーの底触による原油の流出事故を契機に、東京湾における大規模な油流出事故に即時に対応できるよう、官民で構成する東京湾排出油防除協議会が設立された。当協会は同協議会に加盟し、毎年1回実施される大規模な油流出事故を想定した訓練に参加している。

 2005年度は122日、横浜海上防災基地において机上訓練が実施された。

 今回の訓練では「京葉シーバース着岸中の大型タンカーと千葉港向け航行中の貨物船が衝突、大型タンカーから積荷の原油が流出した」との事故を想定し、東京湾内各地区の流出油防除協議会との連絡体制の確認を中心に約2時間にわたり机上訓練が実施された。なお、今年度の訓練については、より現実に即した内容とするため、日本郵船が大型タンカー運航船社役として参加した。

 

232  OPRC-HNS議定書の批准に向けた動きへの対応

海上保安庁は、「2000年の危険物質及び有害物質による汚染事件に係る準備、対応及び強力に関する議定書(OPRC-HNS議定書)」(資料2-3-2-1)の批准に向けて、200510月、「HNS汚染事故への準備及び対応に関する調査研究委員会」(委員長:藤野正隆東京大学名誉教授)において、同議定書に基づきわが国が整備すべき有害液体物質(HNS)汚染事故への準備対応体制に関する「提言」を取り纏めた。同提言では、「有害液体物質や危険物による汚染事故に対処するためには、船長や船舶所有者が講ずべき措置をあらかじめ明確化する」ことが望まれ、また、「専門的な能力を有する防災機関を有効活用する必要がある」との内容が含まれている。(船協海運年報2005年参照)

  この提言を受け、わが国は、20056月、「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」(海防法)を一部改正し、HNSをばら積みで搭載し一定海域を航行する船舶の所有者に対し、防除資機材の備付と、要員の確保の義務付け等を行うこととした。(海防法改正の概要は、資料2-3-2-2

  海上保安庁は、20067月、同改正において新たに義務付けられることとなったHNSおよび特定油以外の油の防除のために必要な資機材および器械器具、防除に関する必要な知識を有する要員の具体的内容を中心に、わが国が整備すべき体制について検討を行うため、「HNS国内体制整備検討委員会」(委員長:藤野正隆東京大学名誉教授)を設置した。(同委員会メンバーは資料2-3-2-3)同委員会は、10月の第2回委員会を経て、11月の第3回委員会において、船舶所有者が備え付けるべき資機材の種類、確保すべき要件等に関する「提言」(資料2-3-2-4)を取り纏めた。この提言を受け海上保安庁は、HNS防除資機材備付の対象海域と船舶や資材の種類等について、以下を内容とした国土交通省令を定めることとしている。

HNS防除資機材の備付および要員の確保について>

 対象となる船舶: 特定油以外の油またはHNSを輸送する総トン数150トン以上の船舶

 対象となる海域: 東京湾、伊勢湾および瀬戸内海

 資材を備付け等する場所: 原則2時間以内に事故船舶の所在する場所へ到着できる場所

 資材および機械器具: 特定油以外」の油や有害液体物質の基本的な挙動に応じ、それぞれに必要となる資材等について、船舶所有者がその判断において必要な数量を確保すること

 要員に求められる能力: 4級海技士以上の免状を授有し、必要な講習を終了していること

 

233 海上災害防止センターへの対応

(独)海上災害防止センター(以下「センター」)防災部は、(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(旧 石油公団)からの受託事業(年間2億円)が2007(平成19)年度で終了し、2010(平成22)年度からは赤字を計上することが見込まれている。そのためセンターは、20056月、防災部の財政基盤強化策を検討することを目的として、各方面の有識者で構成する「海上防災事業に係る検討委員会」(委員長:谷川 久 成蹊大学名誉教授。当協会からは、川崎汽船 大津 明 取締役・油槽船グループ長が委員として参加。)を設置した。(船協海運年報2005参照)同委員会は、20056月の10月の会合を経て、20062月、センターが、自らの財政基盤を強化するため、新たな事業(@HNS対応業務、A火災対応業務、B臨海部防災対応業務)を展開していくことなどを確認し、その旨の提言(資料2-3-3)を取り纏めた。

以上