3.4 アジア船主フォーラム

 

341 アジア船主フォーラム総会

15回アジア船主フォーラム(ASF)総会が、2006529日に当協会の主催(議長:鈴木邦雄当協会会長)により長野県軽井沢町で開催された。同総会には、アジア7地域、12船協(日本、韓国、中国、台湾、香港、ASEAN(インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)、豪州)から122名の代表が出席し、当協会からは鈴木会長、宮原・前川・神田・宇佐美各副会長、芦田常任理事他が参加した。当協会からの出席者は資料3-4-1-1のとおり。

ASFは、1992年に第1回会合を当協会主催で東京で開催して以来、メンバー国/地域の船主協会が北から南の順で議長を回り持ちしながら毎年開催しており、毎年の年次総会の間に5つの”S”委員会(シッピング・エコノミックス・レビュー、シップ・リサイクリング、船員、航行安全および環境、保険法務)が夫々の中間会合を開催している。昨2005年の豪州総会でローテーションが二巡し、今回の会合は三巡目の最初の総会となる。5S委員会の構成および各委員会への当協会代表は資料3-4-1-2 のとおりである。

今回の会合では、まず各5-S委員会が個別早朝会合を開催し、本会合で委員長が報告する内容の最終確認等を行った。

本会合では、議事に先立ち、本ASF会合直前にインドネシア・ジャワ島で発生した大地震による犠牲者に黙祷を捧げ、引き続き、鈴木当協会会長が今次総会の議長として開会の辞を述べた。その中で、鈴木議長は、ASFは結成後14年を経て成熟してきており、アジア船主間の相互理解が進んできていること、世界経済に目を向けると製造業の拠点がアジア―特に中国―に移ってきており、輸送量も伸びているなかアジア海運の果たす役割は益々重要になってきていることなどに言及した上で、海運業にとって航行安全・環境保全は大前提であること、一方、環境保全の名のもとに地域的・一方的な規制を導入することには反対すべきであること、海賊対策の重要性、WTOにおける海運交渉の進展への期待、外航船社間協定に対する独禁法適用除外制度堅持の必要性などに言及し、必要に応じ関係政府間機関や民間団体と適宜協力してこれらに適切に対応する必要があると述べた。

その後、各委員会委員長から1年間の主な活動報告が行われ、最近の諸問題について率直かつ活発な意見交換が行われた。

また、本会合に先立ってASF常設事務局に関する特別会合が開催され、ASF常設事務局の具体案検討に向けてワーキング・グループ(WG)を設置し、規約・設置場所・財源等詳細について検討することが合意され、同WG20075月に開催予定の第16ASF総会に常設事務局についての提案を行うこととされた。

529日の本会合終了直後には、ASF参加者と国際海運団体で組織するラウンド・テーブル(ICS/ISF, BIMCO, INTERTANKO, INTERCARGO)との対話が開催され、活発な意見交換が行われた。

その後開催された共同声明完成・採択会議にて、資料3-4-1-3の共同声明が採択された。

 次回第16回会合は、20075月に韓国船主協会の主催で韓国で開催されることとなった。

 

3.4.2 委員会における検討状況

(1)アジア船主フォーラム(ASF)シップ・リサイクリング委員会(SRC)の第8回中間会合

200636日に台北(台湾)でASFシップリサイクリング委員会(SRC)第9回中間会合が開催された。同会合には、台湾、中国、日本、香港の船主協会が出席したほか、オブザーバーとして台湾より船級協会が参加、当協会からは新井解撤幹事長(川崎汽船)が出席した。

同会合では、当協会および香港船協の報告に基づき、今後の世界の解撤需要やIMOのシップリサイクル条約案について活発な議論が行われたほか、中国船協より同国の解撤業界の現状について報告があった。

報告に引き続き、近い将来にシップリサイクル需要の増加が見込まれることに注目し、世界における十分なリサイクル能力を確保しつつリサイクル業界の現状を改善するには、海運・造船・リサイクル業界の現状を考慮した新たなルールづくりが必要であり、この意味でIMOにおけるシップリサイクル条約の策定作業をSRCとして支持すべきとの認識で一致し、これらを踏まえた共同声明(資料3-4-2-1)が採択された。

(2)船舶保険・法務委員会

アジア船主フォーラム船舶保険・法務委員会(ASF SILC)第11回中間会合が200643日に香港において開催された。

同会合には、アジア9船主協会から17名が参加し、日本からは同委員会委員を務める宮原副会長(日本郵船社長)の代理として、中島日本郵船法務グループグループ長、および事務局より伊藤企画部課長代理が参加した。

今次会合では、George Chao委員長(香港船主協会)の下、JWCによるマラッカ海峡の危険区域リスト、欧州・米国・カナダにおける船舶に起因する海洋汚染の取締り規制、国際油濁補償制度の見直しの帰結、アテネ条約改定議定書の問題点、船主の民事責任と金銭的保証に関する欧州委員会の指令案の影響、国連国際商取引委員会(UNCITRAL)での運送法など、海事関連規則・条約等に関する審議状況について審議・意見交換が行われた。

特に、マラッカ海峡における危険区域リストの問題については、沿岸国による対策強化によるセキュリティの向上、および多くの保険者が既にAPの適用を行っていないにも拘らず、JWCがマラッカ海峡をリストから除外していないことに出席者の多くから懸念が表明され、今後ともJWCへマラッカ海峡のリストからの除外を求めていくことを確認した。

この他、国際的な海事規則、条約の改定や草案の審議については、今後とも当委員会を通じてアジア船主のポジション形成に努めていくことを確認するとともに、当委員会の見解を取り纏めた共同声明(資料)を採択した。

 

 

 

(資料)

200643

 

アジア船主フォーラム(ASF)船舶保険・法務委員会

11回中間会合 共同声明(仮訳)

 

アジア船主フォーラム(ASF)船舶保険・法務委員会(以下、委員会)第10回中間会合が、200643日(月)、香港において開催された。

 

会合には、中国、台湾、香港、日本、韓国の各船主協会およびアセアン船主協会連合会を代表としてインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポールの各船主協会が参加した。

 

委員会は、マラッカ海峡が戦争保険に係るJWCの危険区域リストから除外されていないことに失望した。委員会は、マラッカ海峡での海賊事件の発生が著しく減少していること、およびテロ攻撃が発生していない状況が続いていることを歓迎した。保険者の多くはマラッカ海峡の船舶への割増保険料率(Additional Premium)の請求を取り止めまたは引き下げていることからみても、マラッカ海峡をリストに含む必要はないと考える。委員会は、マラッカ海峡のセキュリティ向上のために沿岸国で進められた対策が、効果的に働いていることにも留意した。委員会は、JWCJoint War Committee)が同リストからマラッカ海峡および同様の地域を外すよう促すとともに、20065月に開催される次回ASF総会でもこの問題を取り上げることとしている。

 

委員会は、船舶からの故意による油汚染の事例全てについてあらためて遺憾の意を表すとともに、既存船の運航者の責任と義務を喚起し、また新造船および既存船に対するエンジンルームの油水管理システムのガイドライン改訂に尽力した様々な業界団体と国際機関の活動を支持した。委員会は、海運関係団体の連合体が行ったEUの新指令に対する訴訟提起の進捗状況に留意し、不慮の油濁事故へ刑事罰を課すとした指令の潜在的な影響について引き続き懸念を表明した。委員会は、EU加盟国が指令に関する国内法上の措置を採る際に直面するであろうMARPOL条約および国連海洋法条約(UNCLOS)の条文と指令との矛盾の問題について欧州各国の注意を喚起した。

 

さらに委員会は、EU加盟国のなかには、自国海域を航行している船舶に対し極めて根拠が希薄な証拠に基づき取締りを行っている国もあり、こうした(国家の)行動に対し懸念を表明した。こうした活動は、監視航空機が高度から撮影した写真だけで判断するのではなく、より確実な証拠が伴う場合に限りなされるべきである。

 

委員会は、カナダ法案C-15の採択によるカナダ渡り鳥法(1999)の改正に留意し、カナダ船主が表明した懸念を共有した。この点について、委員会は、カナダ政府に対し法律の改正を再考し、船員の人権に影響を及ぼす条文を取り消すことを検討するよう促した。

 

委員会は、国際油濁補償基金が現時点でCLC条約とFC条約を改正しないと合意したこと、および作業部会が終結したことに留意した。委員会は、更にSTOPIATOPIAの両協定と、船主と油受取人による今後10年間に渡る補償負担割合が55%を超えた場合は調整を行うとする見直しのメカニズムに留意した。委員会は、油の海上輸送に対するクオリティシッピングを推進するため技術面以外での対策を更に検討する小作業部会へ支持を表明した。

 

委員会は、1974年アテネ条約の2002年改定議定書がもたらす潜在的な影響について前回会合に引き続き議論を行い、2つの問題が未解決であることに留意した。戦争危険/テロ問題について、委員会は、批准国がテロ行為を除外することを容認する“留保条項”に対し、保険業界がIMO法律委員会へ提出した文書を支持した。戦争危険/テロ問題が解決したあかつきには、 “総額”の問題が進捗すると委員会はみている。この点について、委員会は、P&Iクラブ間で総意が得られない可能性もあることに留意し、各クラブに対し全クラブメンバーの事情を考慮した解決策を見出すよう促した。委員会は、それらの問題が解決するまで批准を見合わせるとした各国の意向を歓迎した。委員会は、議定書発効前に現実的に実行可能であることが大前提であると考える。

 

委員会は、欧州議会と欧州閣僚理事会に提出された船主の民事責任と金銭的保証に関する指令案により生じる影響について懸念を表明した。委員会の抱いている懸念は、例えば、補償の上限額まで迅速に被害者へ賠償することを確実にしているP&I保険の証書と責任制限の役割について混乱が生じることなどがあげられる。また委員会は、遺棄船員に関する提案は不明瞭で、新たに採択されたILO海事統合条約に委ねるのが最善の策との印象を持った。

 

委員会は、国際海上物品運送法条約改正草案の検討現状に留意し、いくつかの主要な問題について議論した。メンバーは、船主の権利、免責を変更しようとする提案には断固として反対するよう、審議の推移を注視し続けることとした。

 

委員会の次回会合は、2006529日、ASF15回総会に先立ち日本で開催される。