5・3 港湾整備関係

 

531 交通政策審議会港湾分科会の動き

交通政策審議会港湾分科会では国土交通大臣の諮問に応じて以下の項目が審議されることになっている。

1)港湾の開発、利用及び保全並びに開発保全航路の開発に関する基本方針

2)港湾計画

3)港湾整備5ヵ年計画

4)特定港湾施設整備事業の整備計画

5)広域臨海環境整備センターの基本計画

6)港湾及び航路に関する重要事項

2005年度に開催された港湾分科会(16〜17回)においては、主に安全で経済的な港湾施設の整備・維持管理システムのあり方並びに東京港、神戸港、大阪港、博多港等の港湾計画改訂・一部変更についての審議がおこなわれた。当協会からは平野裕司政策委員会副委員長(港湾担当)が委員に就任し、船社意見の反映に努めた。

 

港湾分科会での主な審議内容

第16回(20051118)

1)大阪港、博多港、釜石港、敦賀港、唐津港、八代港の港湾計画の改訂及び一部変更(承認)

17回(2006213)

1)安全で経済的な港湾施設の整備・維持管理システムのあり方について(高度経済成長期に建設された港湾施設の老朽化への対応策を提言)

2)災害復旧の考え方について(事務局より報告)

3)東京港、横浜港、神戸港等の港湾計画の改訂について(承認)

東京港では中央防波堤外側埋立地に水深1516Mのコンテナターミナル3バース、11M 1バース、横浜港では南本牧2期で16M超級コンテナターミナル2バースの建設が計画されている。

 

532 スーパー中枢港湾政策

20047月に国土交通省がスーパー中枢港湾に京浜港(東京港・横浜港)、伊勢湾(名古屋港・四日市港)、阪神港(大阪港・神戸港)の3地域を正式に指定し、各港の港湾管理者に指定書を交付してから1年が経過した200571日に第6回ス−パー中枢港湾選定委員会が開催され「港湾の管理・運営のあり方に関する検討部会」における検討成果報告、スーパー中枢港湾育成プログラムの実施状況、国の支援策および今後の課題についての説明があった。国の支援制度の創設として2005512日に「港湾の活性化のための港湾法等の一部を改正する法律」が可決成立し、改正された港湾法は200571日に施行され、特定国際コンテナ埠頭の運営者に対して以下の支援制度の創設がなされた。

@    特定国際コンテナ埠頭を構成する行政財産(岸壁およびヤード敷地)等の運営者への貸付制度。

A    特定国際コンテナ埠頭において運営者により整備される荷捌き施設等の整備に係る無利子貸付制度と税制特例措置(固定資産税軽減等)

 

 200574日には国土交通省がスーパー中枢指定港を港湾法上の指定特定重要港湾に指定(法制上でのスーパー中枢港位置づけ)したのを受け、指定特定重要港湾の港湾管理者である横浜市、名古屋港管理組合、神戸市、大阪市は特定国際コンテナを運営する為設立された各港のメガターミナルオペレーターを認定運営者として認定した。

その後2005127日に第7回スーパー中枢港湾選定委員会が開催され、第6回以降のスーパー中枢港湾プロジェクトの取り組み状況と今後の取り組み(外貿埠頭公社改革の推進・鉄道積替施設の整備・内航フィーダー輸送の効率化に向けた社会実験・港湾の広域連携強化(一開港化、入港料の低減等)等について説明議論された。

 尚、国土交通省港湾局はスーパー中枢港湾政策推進の為2005年度港湾局予算(港湾整備事業予算)新規事項として、特定国際コンテナ埠頭となる名古屋港飛島埠頭南側コンテナターミナル第2バースと大阪港夢島コンテナターミナルC12の新規着工予算を、又、2006年度予算では神戸港ポートアイランド2期コンテナターミナルPC18東側の新規着工予算を確保した。

 

533 港湾の活性化のための港湾法等の一部改正

前掲5.3.2の通り、港湾の運営の効率化による国際競争力の強化、及び規制の見直しによる利便性の向上を通じて港湾の活性化を促進することを目的に、「港湾の活性化のための港湾法等の一部を改正する法律」が2005512日に可決成立した。これにより港湾法の一部、及び港湾運送事業法の改正がなされ、港湾運送事業法は2006515日に改正された法律が施行された。当協会は法律改正を審議するための国土交通省主催の各種委員会に参加し、船社意見の反映に務めてきた。

 

港湾運送事業法の改正では主要9港以外の地方港における一般港湾運送事業等、及び検数事業等の規制緩和(需給調整規制を廃止し、事業参入を免許制から許可制に、運賃・料金規制を認可制から事前届出制に改めること)が実施された。

尚、地方港における規制緩和に伴い、港湾運送の安定化措置(セーフティネット)の一つとして地域毎(全国を12地区に区分)に関係者が集まり、港湾の安定化並びに振興策について意見交換するための「地区港湾安定化協議会」の設置が決定していたが、2005119日に協議会の構成メンバー、運営方法などの枠組みを検討するための中央検討会が開催され、港湾協議会清水委員長が委員として出席した。検討会では協議会の構成メンバーにユーザーである船社を加えることが強く要請されたが、当方の主張により、「メンバーは港湾運送事業者、労働組合、港湾管理者、地方運輸局、地方整備局等で構成し、必要に応じオブザーバーとして関係省庁地方組織、その他関係者等の出席を求める」こととなり、船社はオブザーバーとしての「その他関係者等」という記述に止められた。20066月末までに北海道地区を除く11地区で「地区港湾安定化協議会」が設置されたが、船社がオブザーバー参加を要請された事例はない。

 

534 特定外貿埠頭の管理運営に関する法律(埠頭公社の民営化問題)

「港湾の管理・運営のあり方に関する検討部会」(当協会からも委員が参加)でスーパー中枢港湾の適切・効率的な管理運営についての検討がおこなわれ、20054月に報告書が取纏められたが、その中で埠頭公社の組織見直し(民営化、公社・公共埠頭の一元管理化)、公社下物資産(岸壁、埠頭用地)の公共化及び広域連携強化等についての検討を進め、これらの施策を速やかに具体化することが求められた。

 

その後国土交通省港湾局より、埠頭公社の民営化を可能とする民営化スキーム案が出され2006年度の制度化を目指して関係者で検討が開始された。スキームには、@港湾管理者の無利子貸付金の出資金への振替、A無利子貸付金の償還期限の延長、B業務範囲の拡大、C埠頭公社の資産に対する税制上の優遇措置、無利子貸付措置の継続、D民営会社に対する国の関与の緩和、更にはE公社資産のうち下物部分の公共化等が盛り込まれていた。

 

これに対して我々は、@現行の埠頭借受契約と同等なサービスが履行され、専用借受・利用が継続されること、A少なくとも現在より利用者負担が増加しないこと、B必要とされる国の財政支援措置がとられることの3点を基本スタンスとして国交省に諸々の提案・要望をおこなった。又、同時に各港湾管理者、埠頭公社よりも各種要望が出されたので、利害が一致する事項については彼らの要望を後押しした。具体的には、@新規上物整備に対する無利子貸付の継続、A財産承継に要する費用の低減化、B災害復旧への国の指針の明確化、C埠頭借受者による民営会社への経営監視、D下物の公共化、一部公社が抱える膨大な債務の処分及びそれに対する国の財政支援、E同一湾内で広域連携を実現するための国の指導、FNCB(名古屋港)とのイコールフッティング、G公共性を担保すべく民営会社の株主及び埠頭の貸付先に一定の制限を設けること等の要望事項を取纏め提出した。国交省はこれらの意見を踏まえ、埠頭公社が2006年度に民営化できる枠組みを準備すべく法整備と民営会社に対する財政支援措置の創設を両輪とする取組みを進めた。

 

法整備については、2006年の通常国会に提出された一括法案「海上物流の基盤強化のための港湾法などの一部改正法案」の中で、埠頭公社制度を規定する「外貿埠頭公団の解散及び業務の承継に関する法律」(承継法)を抜本的に改正し、公社の民営化を可能とする特定外貿埠頭の管理運営に関する法律案が提出された。同法は5月に成立、関係政省令の整備を経て、101日に施行される。同法では、公社埠頭の管理運営者の要件を見直し、国指定の財団法人から株式会社に変更(従来の財団法人の要件は付則で規定)、株式会社に対する所用の規制を規定したほか、埠頭貸付料事前届出制の廃止や建設・改良整備計画に係わる認可制の廃止等、国の監督権限が部分的に規制緩和される。株式会社の要件として、港湾管理者が発行株式の二分の一以上を保有することとなっている。

 

一方の財政支援措置については、2005年末に決定した2006年度政府予算に既存の公社と同様の無利子貸付制度の新設、民営会社に承継される旧公社の無利子貸付未償還金の返済額の平準化措置、税制特例措置等が盛り込まれた。しかしながらスムーズな民営化に不可欠な公社下物資産の公共化の支援制度の創設や無利子貸付金の償還期限の延長は認められなかったので、貸付料軽減等の借受者がメリットを享受できる体制にはならず、直ちに民営化に踏み出すのは難しい状況にある。各港では国が進めようとしている公益法人改革、財政支援措置等の動向を睨みながら民営化に向けた模索が続けられた。

 

このような状況の中、20065月東京都は20084月に東京港埠頭公社を民営化する方針を明らかにした。2007年度中に臨海第3セクターを傘下に収める持株会社を設立し、民営化後の新会社が持株会社に参加するもの。これに伴い、公社が管理運営する埠頭用地の公共化を順次進め、新会社が発足する2008331日迄に公共化を完了する。新会社は現行の公社業務を引継ぎ、主力事業の外貿埠頭事業を中心に事業展開を図る。又、民営化に伴う規制緩和を踏まえ、増資等を通じて埠頭関連分野への事業拡大・多角化を推進し、経営の安定化や東京港の競争力強化を図る。持株会社の傘下に入ることで、経営の効率化やコスト削減、利用者サービスの向上を図ることを目指している。

 

又、横浜市では横浜港のコンテナ埠頭の競争力強化に向け、現在おこなっている公共コンテナ埠頭の管理業務の一部を横浜港埠頭公社に移管(公社を指定管理者に認定)して、同港における全コンテナ埠頭の管理運営を一元化することが検討されており、港湾局、公社の総要員数を削減し、業務の効率化を図ることにより、公社コンテナ埠頭の貸付料を削減するとの方針を打ち出している。尚、現状では下物の公共化を実現したとしても法人税の負担額が固定資産税削減額を上回るため、直ちに国の民営化スキームを選択するのは得策でないとの判断がある。

 

535 内航フィーダー輸送社会実験推進委員会

 国土交通省港湾局はスーパー中枢港湾プロジェクトの一環として、スーパー中枢港湾と地方港を結ぶネットワークの競争力強化を図るべく「内航フィーダー輸送社会実験推進委員会」を立ち上げ、20051212日に第1回委員会を開催した。当協会港湾協議会からは小川幹事(商船三井)が委員として、事務局がオブザーバーとして出席した。又、詳細な実験内容を協議すべく横浜港と神戸港にワーキンググループが設置された。「内航フィーダー輸送社会実験推進委員会」及び横浜港・神戸港ワーキンググループは各々2回開催され、ワーキンググループでの検討を経て、神戸では2006130日からPC18(上組)を拠点にバージにより、21日からPC1415(商船三井)を拠点に内航コンテナ船により、各々実験輸送が開始された。横浜では216日から南本牧を拠点に内航コンテナ船による実験輸送が開始された。

これらの輸送実験結果を踏まえ、20063月には「内航フィーダー輸送活性化方策に関する検討調査報告書」及び「コンテナターミナルの荷役効率化に関する検討調査報告書」が国土交通省港湾局によって纏められた。同報告書では、社会実験で明らかとなった課題とその対応策として、以下が指摘されている。

 

[積替え拠点での課題とその対応策]

a.    内航フィーダー船に係る効率的な荷役作業体制の構築と港湾荷役事業者間の連携強化

内航フィーダー船の荷役が効率的に行われるようなターミナルレイアウトの整理、ギャングの編成、荷役機器の整備。複数バースへの寄港や複数フィーダー船社による協同運航についても実現のための検討が適切。

b.    地方港及び積替え港の各種費用の低減等

内航フィーダー輸送が価格競争力ある輸送手段であるためには、貨物の結節点でのコスト(ターミナル作業、ショートドレイコスト等)の低減が必要。更に、本船積み替えの定時性等コスト面以外のメリットについても検討すべき。

c.    共同荷役体制の構築

高規格コンテナターミナルにおいて複数の内航船社の内航フィーダー船が寄港する場合、複数の港湾運送事業者による内航フィーダー船の荷役が効率的、且つ、低コストで行われるように共同荷役体制の構築のための検討が適切。

 

[輸送モードでの課題とその対応策]

a.    内航フィーダー船の大型化と高速化によるサービスの向上

一定の消席率を確保することが前提であるが、内航フィーダー船の大型化によるコスト削減及び利便性の向上は、船社、荷主双方にメリットがある。また、これに伴って船舶の高速化が可能となれば、寄港地設定の自由度が上がるなどのサービス向上も期待できる。ただし、大型化によって関係法令の適用が変化する場合に留意が必要である。

b.    内航船輸送とバージ輸送の連携の検討

内航フィーダー輸送活性化のために、運航速度の速い内航船とコストの安いバージの特徴を活かし、相互に保管できる方策を検討することが必要である。例えば、空コンテナを低廉に運ぶビジネスモデルの検討や空コンテナのデポや情報システムの整備について検討することが有効である。このように、各輸送モードの競合を避けながら、連携してフィーダー輸送のサービス向上を実現する。バージ輸送に対するマイナス意識についても積極的にメリットを周知していくことが必要。

c.    内航フィーダー輸送への各種優遇措置によるコスト低減

外航船並みの船舶固定資産税適用や燃料にかかる課税を免除することによる輸送コストの低減の可能性について検討する。

d.    内航フィーダー航路の荷主企業、外航船社への周知のための営業・提案

内航フィーダー輸送の需要調査(マーケティング)をCO2削減などの環境対策以外のメリットを明確にし、ユーザーに提案していく営業が必要。なお、グリーン物流補助金制度等の活用を提案に含めるなどの工夫も有効。

 

[地方港、地方圏での課題とその対応策]

a.    地方港での集荷体制の整備

積替え港と地方港との連携や港湾機能の相互補完体制の構築を目指すことが必要。また、積替え港の管理者においても地方港の管理者に対してポートセールスを行っていくことが適当。地方港の管理者からの理解を得るためには、内航フィーダー輸送の活性化と地域振興ビジョンの関連性を明確にすることが重要である。

b.    地方港とのシステム統合等の港湾間連携の基盤整備

フィーダーコンテナ貨物に関する情報を地方港と積替え港とで標準化・共有化することにより、荷主サービスの向上を図ることも重要。

c.    内航フィーダー輸送に対する意識の変化

外航船と同等のステータスが確保できるよう努力が必要。港湾統計上、内航フィーダー貨物の外貿貨物への変更を検討することなども一案。

 

536 港湾施設の出入り管理の高度化に関する検討会

 港湾施設の出入り管理においては、保安の確実性の向上及び物流の効率性の両立を図る為には、ITを活用した出入り管理の高度化の必要性(公的機関が発行する全国共通カード(港湾施設立入身分証)及びゲート効率化システムの導入)が20055月に開催された第3回検討会で港湾施設利用者、管理者等関係者間で確認された。

その後200512月に開催された第4回検討会では、国土交通省港湾局港湾保安対策室(本検討会事務局)より出入り管理の高度化に関する実証実験の実験内容(共通カードの仕様及び人・トレーラーの出入り実験で使用する実験機器の詳細説明)、実施場所・時期等の説明があり、コンテナターミナルを対象に20062-3月に実証実験を行なう事となった。実証実験は神戸港がPC18(上組)で人とトレーラーの出入り管理の実験を200634日より5日間、東京港・大井埠頭では日本郵船・商船三井・川崎汽船の各コンテナターミナルで人の出入り管理、商船三井のコンテナターミナル(東京国際コンテナターミナル)ではトレーラーの出入り管理が311日より6日間行なわれた。

 2006323日に開催された第5回検討会では、事務局より神戸港、東京港の各コンテナターミナルで実施された実証実験の結果が報告され、運用面では夫々の情報伝達デバイス(共通カード、カードリーダー、タッチパネル)とも概ね問題なく安全性、利便性が確認された。また事務局より2007年度の実証実験は出入り高度化システムの段階的整備(共通カード・カードリーダー導入による出入りの共通化)に集中し、物流効率化の段階設備(出入り管理にあわせて貨物情報も送信)まではおこなわない方針であることが報告された。

 一方、今後の課題としては、出入り口管理と貨物情報を切り離して扱う通常ゲートより離れた一箇所での「専用ゲート」整備の必要性の検討、認証機器設置のコスト負担(国策である以上、国の全額負担でやるべきなどの意見が検討会メンバーよりあり)、共通カード発行区分・トレーラー運転手への共通カード使用の普及方法等、クリアすべき問題が残っている。