6・8 海上人名安全条約等の改正
2006年5月に開催されたIMO第81回海上安全委員会(MSC81)において、次の条約等の改正が採択された。
1. 船舶長距離識別追跡システム(LRIT)
LRIT(Long Range Identification and Tracking System)の設置を規定するSOLAS条約V/19-1規則を追加する改正が採択された。改正規則は2008年1月1日に発効する見通しである。
国際航海に従事する旅客船および総トン数300トン以上の貨物船を対象に、2008年12月31日以降の建造船、現存船については同日以降の最初の安全無線検査(SR)までに設置が求められる(6・5・1参照)。
2. 旅客船の防熱窓
旅客船について、専用の自動スプリンクラー・ヘッドを持つ「A-0級」窓は保全防熱性を有する窓と同等と認められている。今回、そのスプリンクラー・ヘッドに水噴霧ノズルを選択できる規定が追加された。改正規則は2010年7月1日に発効の見通しである(SOLAS U-2/9規則)。
3. ライフジャケットの搭載要件
ライフジャケットの搭載要件に以下の要件が追加された。改正規則は2010年7月1日に発効の見通しである(SOLAS V/7規則)。
(1) 旅客船に対する幼児用のライフジャケットの搭載(航行時間24時間未満:乗客数の2.5%以上、航行時間24時間以上:全幼児に1つ)
(2) すべての船舶に対して、搭載するライフジャケットが体重140kgまで、胸囲1,750mmまでの人用に設計されていない場合、十分な数の属具(ベルト等による締め付け具)の搭載
4. LバンドEPIRBの廃止
406MHz EPIRB(緊急位置指示無線標識)の代替として認められているLバンド(1.6MHz帯)EPIRBのサービスが、2006年12月1日をもって廃止されることに伴い、所要の改正が行われた。改正規則は2010年7月1日に発効する見通しである(SOLAS W/7、9、10規則)。
5. 船橋視界
SOLAS条約X/20規則で要求される視界確保について、バラスト水交換時に一時的に逸脱することを認める改正が採択された。改正規則は2010年7月1日に発効の見通しである。
6. 国際海上危険物規則(IMDGコード)の改正
国連危険物輸送勧告の定期的な見直しに伴うIMDGコードの改正が採択された。改正規則は2008年1月1日に発効する見通しである(船協海運年報2005 6・5・1参照)。
7. 船舶保安職員の規定
船舶および港湾施設の保安のための国際コード(ISPSコード)に規定される船舶保安職員(SSO)について、その技能証明書発給のための最小限の要件などがSTCW条約およびSTCWコードに規定された。改正規則は2008年1月1日に発効する見通しであるが、2009年7月1日までの経過措置が設けられている。