7・1 配乗の多様化に伴う船員対策

 

7.1.1 外国人船員問題への対応

 (1)国際船員労務協会との関係について

当協会は、外国籍船に乗組む外国人船員の労働条件に関して国際団体交渉協議会(IBF)において交渉を担当している国際船員労務協会の活動を通じて間接的に対応しているが、過去2回のIBF交渉での経験を踏まえ、平成1712月に労政委員会の下に国際船員問題タスクフォースを設置し、日本の船主の意見をより反映させるための今後の国際船員労使交渉のあり方や国際船員労務協会との関係について検討した。

その結果、次回国際船員労使交渉については、従来と同じく国際海事使用者委員会(IMEC)と共闘して平成195月から開始される第3IBF交渉を行うこと、当協会と国際船員労務協会の関係強化の観点から、相互に役員の人的交流を行うこと、当協会欧州地区事務局内に国際船員労務協会ロンドン駐在事務所を移設することなどを国際船員労務協会に提案し、外国人船員問題への対応体制の強化を図った。

(2)ILO最低賃金について

日本籍船に乗組む外国人船員の労働条件は、国際労働機関(ILO)第187号勧告に基づき、国際海運連盟(ISF)と国際運輸労働者連盟(ITF)で構成するILO合同海事委員会(JMC)で決定される最低賃金をもとに協議されている。

94回国際労働機関(ILO)海事総会(7.3.4参照)の終了後に開催されたJMCよりの委託を受けて、翌24ILO本部においてJMC小委員会が開催され、200711日以降に適用される最低賃金(AB船員)に関する検討がなされ、以下のとおり合意された。

同内容は、今後ILO理事会に報告されて承認を受けた後に事務局長より加盟国に回章されることとなった。

a) 適用最低賃金

現在の適用最低賃金であるUS$500/月(200511日〜20051231日)を以下のとおり改正する。

200711日〜同年1231日 US$515/

200811日〜同年1230日 US$530/

20081231日            US$545/

b) 最低算出式の見直し

主要海運/船員供給国の消費者物価指数と対ドル為替の変動を加味した購買力の変化を基にしてあるべき最低賃金の指標を求める算出式につき、次回JMC小委員会(2年以内に開催される予定)までに労使で見直しを検討する。

審議では、船主側は本協議が団体交渉ではなく、セーフティネットの数字を設定するためのものであること、現在の算出式は過去の事例が示すとおり、実態を必ずしも反映しないものとなっており見直しが必要であること、賃金については減速しつつある海運市況や新造船価格の上昇を理由に凍結を主張した。一方、船員側からは、本委員会は本来2005年半ばに開催されるべきであったと延期を要請した船主側を非難し、早期に開催すれば算出式変更の議論が可能であったかもしれないが、今回は時間がないことから従来の算出式を基に議論すべきであること、賃金については生産性の向上を勘案すれば算出値を上回る金額が船員に配分されるべきであり、海運市況は悲観的側面ではないことを理由に大幅な増額(算出結果である$545)を要求した。

審議の結果は前述のとおりであるが、算出式が示す数字である$545に拘わる船員側と、2005年の第2IBF交渉妥結後に各国が行った地域交渉との比較から値上げを極小化したい船主側でぎりぎりの交渉が行われ、最終的に2年間の実質的値上げを段階的かつ$545を下回るものとし、代わりに20081231日のみ名目的な引き上げを行うことにより、次回協議の出発点は計算結果である$545とすることを認める形で妥協がなされる結果となった。また、算出式についても2007年および2008年の最低賃金協議とのパッケージで双方が見直しの席につき今後2年を目処に新たな算出式の検討を行うことで船員側の合意を取り付けた。