8・3 海事振興連盟の会合への参画

 

8-3-1 海事振興連盟「内航/中小造船事業者と語る会」

超党派議員で構成する海事振興連盟(会長:関谷勝嗣参議院議員)は、527日(土)、愛媛県今治(今治国際ホテル)に於いて「内航/中小造船事業者と語る会」を開催した。当日は約90名の参加を得て、山本公一内航分科会会長(衆議院議員)が議長となり、瀬戸内・九州地方を中心とした内航海運事業者、中小造船事業者の両業界がかかえる問題について意見交換をおこなった。また、当協会からは栗林宏吉内航部会長が参加し、内航燃料油の高騰問題などについて意見反映を行った。

会合に先立ち、関谷勝嗣会長の挨拶では、当連盟はその時その時の問題に対処しており、現在の「トン数標準税制の導入に向けた働きかけ」や「外航定航カルテルに対する独禁法適用除外の廃止議論への対処」をはじめ、これまで「海の日の制定」「TAJIMA号事件に関する刑法改正」「FAL条約の批准」等について取組んできている旨説明があり、その上で、海事関係者の方々の仕事が順調かつ健全に発展することができる環境整備をはかることが当連盟で一番重要である旨の考えが示された。また、瀬戸内、近畿、九州は、日本の海事産業が集積した「海事産業ベルト地帯」であり、特に本会合に参加した事業者の方々がこの今治から声を発信し、わが国の海運・造船の発展につなげる機会の場とすべき見解が示された。さらに、海運・海洋に対する日本政府の組織的、政策的、戦略的対応が遅れている事実のなか、今回の会議を一つの転機として、そういう分野にも関与していくことが表明された。

次に来賓の越智忍今治市長からは、古代より海の玄関口・海上交通の要衝として栄え、造船や海運業を中核とした、世界にも類を見ない海事関連企業の一大集積地である今治市を中心とした地域特性を最大限に生かすための指針として策定した「今治海事都市構想」について触れ、その基本方針としての「次世代の人材育成」、「海事クラスターの構築」、「海事文化の振興と交流の促進」について説明が行われた。

また、来賓の原克彦四国運輸局次長からは、内航海運業は国内貨物の約4割を輸送する重要な基幹産業であるが、船員不足が引き金になり内部崩壊を招くのではないかとの懸念が示され、こうした危機的状況から四国運輸局として、@内航海運の用船料の適正化、A内航海運業の船員の確保、B造船業における技能の伝承を政策の柱として取組んでいるとの説明が行われた。

その後、本会合では、地元内航/中小造船事業者による現状と課題について、説明が行われ、議員や参加者から活発な意見が交わされ、両業界の活性化に向けた荷主・行政を含む関係者が連携して当面する諸問題の解決を図り、海事産業の発展に努める内容とした「今治宣言」【資料8-3-1参照】のとりまとめについて盛山正仁 衆議院議員より提案があり、これを採択した。

なお、主な参加者および意見は以下の通り。

 

<主な参加者>

国会議員

海事振興連盟  会長 関谷 勝嗣  参議院議員(自 愛媛)

  同     副会長 高木 義明  衆議院議員(民 長崎)

  同  内航分科会長 山本 公一  衆議院議員(自 愛媛)

            大野 功統  衆議院議員(自 香川)

            村上 誠一郎 衆議院議員(自 愛媛)

            木村 義雄  衆議院議員(自 香川)

            塩崎 恭久  衆議院議員(自 愛媛)

            藤野 公孝  参議院議員(自 比例)

            山本 順三  参議院議員(自 愛媛)

            盛山 正仁  衆議院議員(自 兵庫)

来  賓        越智  忍  今治市長

原  克彦  国土交通省四国運輸局次長

国土交通省       長谷川 伸一 海事局 国内貨物課長     

丸山  研一 海事局 造船課長       

地元事業者

今治地区海運組合     長谷部 安俊 理事長

日本中小型造船工業会   寺西  勇  副会長

今治地域造船技術センター 森   茂  事務局長

 

日本内航海運組合総連合会  真木 克郎  会 長

中西 基員  理事長

日本船主協会        栗林 宏吉  内航部会長

海事振興連盟        植村 保雄  参与(日本船主協会 常務理事)

 

<主な意見>

○ 燃料油高騰問題  日本船主協会 栗林 宏吉 内航部会長 

燃料油の問題について、内航海運業界では、1万円上昇することで274億円のコストアップになり、この3年間で約3万円上昇したことにより、ざっと600億円近くに高騰している。内航海運のなかで、専用船(不定期船の一部)として荷主に補償していただいている事業者が約2〜3割で、残りは事業者負担となっている状況である。

また、定期航路の一部でバンカーサーチャージ(燃料油の調整金)を荷主負担にする形をとり始めているが、なかなか浸透はしていない。結果として、荷主負担できない部分は、オペレーター負担にならざるを得ないため、用船料の上昇が抑えられてしまう傾向の一因にもなっている。こうした国民経済に寄与する物流コストの上昇部分については、国民全体で負担すべきものであるので、そのへんを荷主にも理解いただきたい。

 

○ 内航海運の現状と課題  今治地区海運組合 長谷部 安俊 理事長

今治地区には405社の内航海運事業者が存在し、このうち333社が貸渡事業者であるが、これら事業者の最大の課題は、暫定措置事業の開始以降に代替建造が大幅に減少し、老朽船が増加し事業継続が危ぶまれている状況を説明するとともに国内向け中小造船事業者の廃業、事業規模縮小などにより地元の内航海運関連産業が衰退しつつあることについて懸念が示された。

こうした状況を踏まえた上で内航海運事業者の要望として、「暫定措置事業の円滑かつ着実な実施」、「代替建造について資金調達等が円滑に行われるよう、行財政面からの支援」、「内航船員の養成・確保について、行財政面からの施策充実」、「用船料は、長期に亘り船舶コストと大きな乖離があるため、この修復のための施策」などについて説明が行われた。

特に、多額の資本を要する船舶建造で最も有効な支援策は税制と捉え、特別償却制度の拡充(現行16%⇒30%)、売船益の保留期間を当該年度から3年程度の猶予措置など、建造意欲を高める制度の検討を要請した。

 

○ 中小造船業の現状と課題  日本中小型造船工業会 寺西 勇 副会長

平成10年頃を境に内航船の建造需要が低迷し、それに伴い内航船建造事業者も減少、造船技術者や技能工が散逸している状況とともに、近時の鋼材や資機材価格の高騰により造船事業者の経営は極めて苦しい状況となっている。こうしたことを踏まえ、内航海運業界においても長期的視野に立ち計画的に新造船を発注するなど、造船事業者の安定的・計画的経営に協力と配慮を願いたい旨、説明があった。

さらに、内航海運の活性化は中小造船業にとって極めて重要であるとし、特に暫定措置事業の円滑かつ着実な実施により、早期終了を図っていただきたい旨の要請があった。