1・2 海運関係税制改正への対応
1・2・1 平成19年度税制改正(海運関係税制)
当協会は、平成18年9月開催の定例理事会において、トン数標準税制の導入や、平成18年度末に期限切れを迎える船舶の特別償却制度、国際船舶に係る固定資産税の課税標準の軽減措置、スーパー中枢港湾の特定国際コンテナ埠頭において整備される荷さばき施設等に対する固定資産税・都市計画税の特例措置などの延長をはじめとして、22の要望項目を取りまとめ、9月に「平成19年度税制改正要望」【資料1-2-1-1】として自民党税制調査会に提出後、政府・国会等関係方面への要望活動を開始した。(トン数標準税制については、「1.海運政策 1−1 トン数標準税制の導入に向けた対応」参照)
一方、政府税制調査会が12月1日にとりまとめた「平成19年度の税制改正に関する答申」では、『税制については、中長期的な視点からの総合的な税制改革に向け、社会経済構造の変化に対応した各税目のあり方を検討していく。』、『経済活性化に向けた税制の検討にあたっては、財政健全化との両立という視点や公平・中立・簡素の租税原則を踏まえ、国際的な競争条件を揃え、イノベーションを加速し、オープンな姿勢をとることが重要である。』としている。
こうした考えに基づき、『経済活性化に向けた速やかな対応』の項目で、『減価償却制度』については、『国際的な競争条件を揃え、競争上のハンディキャップをなくすことが重要』との指摘や『設備投資を促進し、生産手段の新陳代謝を加速する観点から、新規取得資産について法定耐用年数内に取得価額全額を償却できるよう制度を見直し、残存価額(10%)を廃止するとともに、償却率についても国際的に遜色のない水準に設定すべき』との方針が示された。また、『政策税制の集中・重点化』で触れている『役割を終えた既存の租税特別措置等については、引き続き整理合理化案を進めることが重要である。』とされ、従来から政策目的が不明確であるとの指摘や、制度の効果に疑問がある等の指摘を受けている特別償却制度などは廃止・縮減を迫られており、現行制度の維持が非常に厳しい状況とされていた。
同答申の考えを反映し、11月末に租税特別措置等について財務省より各省に対し、整理合理化案が提示された。船舶の特別償却制度については、対象船舶を『日本籍船に限定』、特別修繕準備金制度については、『積立限度額を現行3/4から1/2に縮減』など厳しい内容が示された。このため当協会は、国土交通省とも連携を図り、自民党税制調査会へ当協会の要望が反映されるよう国会議員へ陳情活動を展開し、これらの現状維持を精力的に訴えた。
その結果、12月14日に決定した与党税制改正大綱においては、以下の通りとなった。
@トン数標準税制
1.海運政策
1−1 トン数標準税制の導入に向けた対応
1・1・1 平成18年度のトン数標準税制の導入に向けた対応
(1)平成19年度税制改正(トン数標準税制のみ)参照
A船舶の特別償却制度
外航船舶については現行環境負荷低減船としての設備要件に一部付加(塗料、推進機関等)した内容で2年間延長。また、内航船舶については現行内容で2年間延長。
なお、設備要件関係については【資料1-2-1-2】参照
B国際船舶に係る固定資産税の課税標準の特例措置(1/15)
現行制度で5年間延長。
C償却可能限度額(95%)が撤廃
これにより、既存の資産については、償却可能限度額に到達後5年間で均等償却する。また、新規取得資産については残存割合(10%)を廃止し、備忘価額1円まで償却できるようカーブ(償却率)を見直す(250%定率法※の導入)。
固定資産税の償却資産については、資産課税としての性格を踏まえ、現行の評価方法が維持される。
※250%定率法
まず、定額法の償却率(1/耐用年数)を2.5倍した率で償却する定率法により償却費を計算し、この償却費が一定の金額を下回るときに償却方法をこの250%定率法から定額法に切り替えて備忘価額まで償却する方法のこと。
Dスーパー中枢港湾に指定された港湾における次世代高規格コンテナターミナルにおいて整備される荷さばき施設等に係る課税標準の特例措置
現行制度で2年間延長。
E特別修繕準備金についての財務省整理合理化案(積立限度額を3/4⇒1/2)
現行制度が維持。
平成19年度の当協会が要望した海運関係税制改正の結果は【資料1-2-1-3】、改正後の海運関係税制の全容は【資料1-2-1-4】の通りである。
【資料1-2-1-2】平成19年財務省告示106号【船舶特別償却制度】
1・2・2 平成20年度税制改正(海運関係税制)
当協会は、平成19年度末に期限切れを迎える「国際船舶に係る登録免許税の特例」「外航用コンテナに係る固定資産税の課税標準の特例」「中小企業投資促進税制」「外貿埠頭公社に係る特例措置の延長及び指定会社等に係る特例措置の拡充」等海運関係の項目を中心に既存税制の維持・存続のため、平成19年9月以降、政府・国会等関係方面への要望活動を開始した。【資料1-2-2-1】(トン数標準税制については、「1.海運政策 1−1 トン数標準税制の導入に向けた対応」参照)
平成19年11月20日に政府税制調査会がとりまとめた「抜本的な税制改革に向けた基本的考え方(答申)」によると、法人課税についての考え方として、『経済のグローバル化等の経済・社会の構造変化に適切に対応するとともに、我が国経済の国際競争力を強化し、その活性化を図ることは、税制においても重要な課題である。』と触れており、法人実効税率の引下げや経済活性化の観点から、政策税制による企業負担の軽減に取り組むことに言及するなど、我が国の持続的な経済成長を踏まえた対応をすべきとされていた。
しかしながら、11月末に財務省が提示した、租税特別措置についての整理合理化案は、海運関係税制に厳しい内容であった。
船舶の特別償却制度については、適用期限到来ではない(適用期限H19.4.1〜21.3.31)にも係わらず制度の廃止、中小企業投資促進税制(内航船舶については、特別償却または税額控除)について償却率、税額控除率それぞれの縮減、特別修繕準備金制度については、積立限度額を現行3/4から1/2に縮減、などが提示された。
このため当協会は、国土交通省とも連携を図り、自民党税制調査会へ当協会の要望が反映されるよう国会議員へ陳情活動を展開し、これらの現状維持を精力的に訴えた。
その結果、12月13日に取りまとめられた「平成20年度与党税制改正大綱」においては、以下の通りとなった。
@ トン数標準税制
1・1・2 平成19年度のトン数標準税制の導入に向けた対応
(1)平成20年度税制改正(トン数標準税制のみ)参照
A 国際船舶に係る登録免許税の特例
現行制度で2年間延長。
B 外航用コンテナに係る固定資産税の課税標準の特例
現行制度で2年間延長。
B
中小企業投資促進税制の延長
(財務省整理合理化案では償却率、税額控除率の縮減)
現行制度で2年間延長。
C 外貿埠頭公社に係る特例措置の延長及び指定会社等に係る特例措置の拡充
外貿埠頭公社が取得し又は所有する一定のコンテナ埠頭に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置について、対象を既存分のコンテナ埠頭に限定した上で2年間延長。
◎ 減価償却制度
平成19年度税制改正において、償却可能限度額を撤廃する等の抜本的見直しを行い、平成20年度税制改正においては、減価償却資産の使用実態を踏まえて、機械及び装置を中心に、資産区分の大括り化を図るとともに、法定耐用年数の見直しを行う。
【※ 船舶など大型構造物等を対象としている『別表第一(機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表)』については、同別表に一部減価償却資産が追加された他、変更はなし。】
なお、与党税制改正大綱では触れていないが、財務省合理化案が提示された『船舶の特別償却制度』『特別修繕準備金』については、現行制度が維持された。
当協会が要望した平成20年度海運関係税制改正の結果は【資料1-2-2-2】、改正後の海運関係税制の全容は【資料1-2-2-3】の通りである。