15 海洋基本法の成立

(1)海洋基本法の制定

海洋に関する政策の基本理念や基本的施策等を定める海洋基本法が、平成192007)年420日の参議院本会議で可決・成立し、同年720日に施行された。当協会は、平成182006)年4月に設立された超党派の国会議員と有識者で構成される「海洋基本法研究会」(座長:石破茂 衆議院議員)での海洋基本法の整備に向けた検討状況を注視するとともに、同年1027日に開催された第7回海洋基本法研究会に鈴木会長(当時)がオブザーバー出席し、同法の策定にあたっては、わが国海運産業の役割についても視野に入れ検討するよう意見開陳するなど、機会を捉え関係者に理解を求めた。

 

その後、海洋基本法研究会が検討を重ね取りまとめた「海洋政策大綱」を素案に、自民党、公明党、民主党は海洋基本法案を取りまとめ、同法案を超党派の議員立法として国会に提出した。同法案は平成192007)年43日に衆議院国土交通委員会で委員全員の賛成により可決され、同日の衆議院本会議で可決し参議院へ送付された。参議院では419日の参議院国土交通委員会での審議の結果、賛成多数で可決され、翌420日の参議院本会議において同法案は可決・成立した。

 

同年720日に施行された海洋基本法には、基本理念として第5条(海洋産業の健全な発展)で「海洋の開発、利用、保全等を担う産業(以下「海洋産業」という。)については、我が国の経済社会の健全な発展及び国民生活の安定向上の基盤であることにかんがみ、海洋の開発、利用、保全等について総合的かつ一体的に行われるものでなければならない」旨が明記されたほか、海運関係については、基本的施策として第20条(海上輸送の確保)で「国は、効率的かつ安定的な海上輸送の確保を図るため、日本船舶の確保、船員の育成及び確保、国際海上輸送網の拠点となる港湾の整備その他の必要な措置を講ずるものとする」、また第24条(海洋産業の振興及び国際競争力の強化)で「国は、海洋産業の振興及びその国際競争力の強化を図るため、海洋産業に関し、先端的な研究開発の推進、技術の高度化、人材の育成及び確保、競争条件の整備等による経営基盤の強化及び新たな事業の開拓その他必要な措置を講ずるものとする」旨が整理された。(資料1-5-1

 

そのような中、同年101日に開催された海洋基本法制定記念大会(主催:海洋基本法研究会)に前川会長が出席し、海運基本法の条項の主旨が生かされるような施策として、トン数税制を早期に導入するよう国会議員をはじめとする関係者に理解を求めた。

 

(2) 海洋基本計画の策定

海洋基本法の第16条(海洋基本計画)では、「政府は海洋に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、海洋に関する基本的な計画(以下「海洋基本計画」という。)を定めなければならない」と定めていることから、同法第29条に基づき、内閣に設置された総合海洋政策本部(本部長:内閣総理大臣、副本部長:内閣官房長官、海洋政策担当大臣、本部員:部長及び副本部長以外の全ての国務大臣、事務局:内閣官房)が中心となり、平成202008)年1月を目途に海洋基本計画策定に向けての検討が行われた。当協会は海洋基本法の策定の際と同様、基本計画の策定にあたっては、トン数税制の導入による我が国海運事業者の国際競争力の維持についても留意するよう意見の反映に努めた。

 

一方、日本経団連は、この基本計画を策定するにあたっての提言を取りまとめるべく検討し、平成192007)年1016日に行われた日本経団連の理事会において、「今後の海洋政策のあり方と海洋基本計画策定へ向けて」を取りまとめ、同日、政府・与党に建議した。本件に関し、当協会は、日本経団連に対して、トン数税制の導入についても提言に盛り込むよう強く働きかけ、その結果、以下の通り、トン数税制の導入が提言の中に盛り込まれた。

日本経団連「今後の海洋政策のあり方と海洋基本計画策定へ向けて」(抜粋)

2.海洋基本計画に対する要望

(2) 海洋産業の振興と国際競争力の強化

・・・政府は、海洋産業の振興と国際競争力強化を基本計画の重要な柱の一つとすべきであり、特に、中長期的視点に立った高度な技術開発基盤の構築や、トン数標準税制等の税制支援措置の導入、鉱物資源や水産資源等の確保などが重要である。あわせて、海洋における企業活動の安心・安全確保のため、近隣諸国との紛争防止等の環境整備を強化していく必要がある。

 

このほかにも当協会は、海洋基本計画の策定にあたり、以下の通り、機会を捉え関係者に理解を求めた。

 

【海洋基本法フォローアップ研究会】

海洋基本法の制定に関与した超党派の国会議員、有識者等が引き続き連携協力して「海洋基本法フォローアップ研究会」を設立。同研究会が、わが国海洋政策のあるべき姿を「海洋基本計画に対する意見」としてとりまとめ、平成192007)年1220日に中川秀直 代表世話人(自民)、大口善徳(公明)・前原誠司(民主)両共同座長が、福田首相(総合海洋政策本部長)に申入れを行った。

 

当協会は、同年1128日に開催された第2回研究会「海洋基本計画の策定に向けての関係業界・学会等からの意見発表と、冬柴大臣との意見交換会」に中本理事長が出席し、トン数税制の導入による国際競争力の維持について配慮いただきたい旨を要望するなど、関係者に理解を求めた。

その結果、「海洋基本計画に対する意見」の中で、トン数税制の導入が、「わが国の経済及び生活を支える海上輸送の確保を図る」部分で盛り込まれた。

 

「海洋基本法に対する意見」(抜粋)

わが国の経済及び生活を支える海上輸送の確保を図る。

      ・ 日本籍船・日本人船員の確保

      ・ トン数標準税制の導入

      ・ 船員等の海上技術者・専門家の育成・確保

      ・ 海上交通網の拠点の整備

      ・ マラッカ・シンガポール海峡など海上交通路における航行安全対策等の

       推進

 

【自民党 海洋政策特別委員会】

海洋基本計画の自民党案とりまとめに向けた関係団体へのヒアリングが平成192007)年1212日に行われた。当協会から中本理事長が出席し、トン数税制の導入を要望した。

 

平成202008)年24日、総合海洋政策本部より海洋基本計画の原案が公表され、併せて意見の募集(パブリックコメント)が行われた。このため、当協会は、トン数税制に関する国際競争力確保、港湾の国際競争力確保の観点など6点の意見を提出した。

その後、総合海洋政策本部が検討のうえ、「海洋基本計画」を固め閣議に提出、平成202008)年318日に海洋基本計画が閣議決定された。

(関係部分は資料1-5-2参照。)

なお、総合海洋政策本部のサイトは次のとおり。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kaiyou/index.html (2008.6現在)