16 船員・船籍問題への対応

 

161 外航日本籍船の日本人船・機長配乗要件の撤廃

当協会と全日本海員組合(以下「全日海」)は、20057月、外航日本籍船の減少に歯止めをかけるため、新規に登録される日本籍船について、現行の国際船舶に適用されている日本人船・機長配乗要件の撤廃を国土交通省に申し入れた。その後、20064月の「船・機長配乗要件の見直し等に関する検討会」(座長:野川 忍 東京学芸大教授)において、「配乗要件撤廃に係る法的問題はない」との結論が出されたことを受け、同年7月の交通政策審議会海事分科会において国土交通省が、「07年度からの新規外航日本籍船の建造・登録に間に合わせるべく船・機長配乗要件の撤廃に関連する作業に着手する」と明言、074月には撤廃が実施される見込みであった。(船協年報2006年参照)

しかしながら、その後200612月の平成19年度税制大綱において、トン数標準税制を「平成20年度税制改正において具体的に検討する」とされたことを受け、20072月から開始された交通政策審議会海事分科会国際海上輸送部会において、トン数標準税制と日本人船員の増加策が関連付けられて議論されたため、同部会の中間とりまとめが行われるまでは配乗要件撤廃の時期を延期することとなった。

20076月末の同部会の中間とりまとめでは、外航日本人船員の年齢構成を考えると、「配乗要件を堅持すると早晩船・機長の適材が不足し、かえって日本籍船の増加の妨げになる可能性が大きく、日本籍船の増加を促進するためにはむしろ(配乗要件)撤廃は必要」とされた。海事局は議論がこのような方向で収束する中、同年614日に通達(資料1-6-1)を発出、外国人承認船員の就業範囲を船・機長まで拡大し、6月末には一回目の外国人船・機長の承認試験が実施され、制度的には外国人全乗による外航日本籍船の実現が可能となった。

 

162 外航日本人船員(海技者)確保・育成スキーム

 外航日本人船員(海技者)確保・育成スキーム(以下「スキーム」)については、20066月に官労使が設置した「外航日本人船員確保・育成に関する新スキームのための検討調整会議」において実務的検討が進められた。(船協年報2006年参照)その後、官労使は、200741日付でスキームを運営するための「外航日本人船員(海技者)確保・育成推進協議会」(以下「推進協議会」)を発足、スキームを開始した。また、(財)日本船員福利雇用促進センター(SECOJ)がスキームの事務局・実施団体としてその運営に参加することとなった。

1期生については、推進協議会の下部組織である進路指導委員会(当協会、全日本海員組合、国際船員労務協会、SECOJで構成)において選考作業を行い、10名(航海士8名。機関士1名)がスキームに参加することとなった。同10名については、200710月より海技大学校で2ヶ月間の座学研修を開始、その後の7ヶ月間はわが国外航船社が運航する船舶で乗船研修を行い、その後、進路指導委員会の評価で認められることとなれば、2年目以降、船舶職員としての実務に就くこととしている。(スキームの育成スケジュール:資料1-6-2