2.環境対策

 

2・1 大気汚染防止対策

(1)経緯

現在、船舶の排ガスに起因する大気汚染の防止については、MARPOL条約附属書VIにおいて、窒素化合物(NOx)および硫黄化合物(SOx)等に関する規定が定められている。同附属書VI20055月に発効したが、20057月に開催された第53回海洋環境保護委員会(MEPC53)において、一層の環境負荷軽減の必要性が認識されたことから、現行の規制を強化する方向で、同附属書を改正することが合意された。

なお、通常であればMEPCで設置される作業部会(Working GroupWG)においてMARPOL条約関連規則の改正が行なわれるが、同会合の大気汚染防止に関するWGは、すでに多くの検討事項があり、これ以上項目を増やすことが困難なことから、ばら積み液体・ガス小委員会(BLG)において検討することとなった。

同改正に関する具体的な検討は、20064月に開催されたBLG10から開始され、NOx次期規制については、今後2010年と2014年(もしくは2015年)の2段階に分けて強化することが概ね合意された。なお、現行の規制の対象外とされている既存船(200011日より前に建造された船舶)のエンジンについては、何らかの規制の必要性は認識されたものの、現行規則のようなエンジン自体の型式承認を前提とした規制の導入は困難であることが確認され、今後の検討課題となった。また、SOx次期規制については、低硫黄燃料油の供給体制が現状では石油業界に整っていないとされ、具体的な規制値に関する審議は行われなかった。さらに、粒子状物質(Particulate MatterPM)については、現時点では十分な調査研究が行われていないとされ、今後PM規制の必要性に関する検討を行っていくこととなった。

なお、同附属書VIの改正については、200611月に、中間会合を開催し詳細に審議を行った上で、20074月のBLG11を目途に検討を完了することが合意された。

その後、第1回大気汚染中間会合(200611月)、BLG1120074月)、2回同中間会合(200710月)、およびBLG1220082月)における検討を経て、MEPC5720084月)において同附属書VIの改正案は承認された。それぞれの会合の審議結果については、以下のとおりである。

 

(2)第1BLG大気汚染中間会200611月)における審議結果について

@ 新造船に対するNOx規制について

現在、船舶から排出されるNOxの規制については1次規制と呼ばれる段階にあり、エンジンの定格回転数に応じた規制値が設定されている。BLG1020064月)においては、今後のNOx削減目標として2010年(2次規制)および、2014年もしくは2015年(3次規制)の2段階に分けて、新しい排出基準を導入する方向性が示されていた。

本中間会合においては、規制の実施時期として、2次規制は2010年から、3次規制は仮に2015年からとすることで合意された。また、規制の枠組みについて審議が行われ、次の2つの案(オプション)に集約した上で、今後更に検討されることとなった。

A: 現行規則どおり、エンジンの定格回転数に応じた規制値を規定する。

B: エンジンの設計時に想定する使用燃料を以下のとおり3区分し、区分毎にエンジンの定格回転数に応じた規制値を規定する。

  低硫黄留出油 (硫黄分0.2%以下)

  留出油    (硫黄分2.0%以下)

  残渣油    (硫黄分4.5%以下)

なお、本会合では、具体的な規制値に関する議論は行われず、次回BLG11にて審議されることとなった。

 

A 既存船に対するNOx規制について

現行の附属書VIおいてNOx規制の対象外とされている既存船(200011日より前に建造された船舶)のエンジンに対する規制について審議が行われたが、結論は得られなかった。

このため、既存船に対する具体的なNOx規制案の提出が各国に要請され、BLG11において検討されることとなった。

 

B SOx次期規制について

現在、船舶から排出されるSOxについては、一般海域とSOx排出規制海域(SECA)に分けて、船舶が使用する燃料油中の含有硫黄分の上限値が規制されている(一般海域4.5%SECA1.5%)。

本会合に先立ち、国際独立タンカー船主協会(INTERTANKO)は、船舶で使用する燃料油について以下の提案を行っていた。

(a) 2010年以降全ての船舶は、硫黄分1.0%以下の舶用留出油を使用する。

(b)2015年以降に船舶に搭載されるエンジンについては、硫黄分0.5%以下の舶用留出油を使用する。

本会合における審議の結果、次期SOx規制案として、上記INTERTANKO提案を含め、4つの案(オプション)に纏められた。また、それぞれのオプションについては、船社および燃料供給側の意見を考慮した上で、BLG11において引き続き審議することとなった。

A案:現状の規制を維持する。

B案:SECAの規制のみ次のとおり強化する(一般海域の硫黄分規制値は変更しない)。

1段階:1.0% (2010年を想定)

2段階:0.5% (2015年を想定)

C1案:留出油の使用を強制化し、全海域において、次の2段階で硫黄分規制値を強化する。

1段階:1.0% (2012年を想定)

2段階:0.5% (2015年を想定)

C2案:規制値はC1案と同様であるが、残渣油の使用や、代替措置としての排ガス洗浄装置等の使用を認める。

 

(3)BLG1120074月)における審議結果について

@ 新造船に対するNOx規制について

(a) 2次規制について

本会合においては、既に合意されている2次規制の導入時期(2010年)に関し、該当する船舶は既に発注済みであるとの意見が出されたことから、導入時期を1年遅らせ、2011年とすることが合意された。

また、規制の枠組みについては現行の規制と同様に、回転数に応じた規制値とすることとし、具体的な規制値については、現行より23.5g/kWhの範囲で削減することが原則合意された。なお、欧州内燃機関製造者協会(EUROMOT)は、3.5g/kWhの削減値について、2011年からの導入は技術的に困難である旨表明を行った。

(b) 3次規制について

3次規制の具体的な規制値については、本会合に提出された提案を基に審議が行われた。審議において、選択式還元触媒による脱硝装置(SCR排ガス中にアンモニアを注入し、触媒の作用により化学反応を促進させ、NOxを還元してN2H2Oに分解する装置)の使用による対応が想定されている案については、エンジンの低負荷時において脱硝率が低下すること、使用燃料油中の含有硫黄分を現在より下げる必要性があること、船員の安全性の確保が必要なこと、および初期投資が大きいこと等の問題点が指摘された。一方、エンジン自体の改良で対応する範囲で規制を行う案については、実現可能性が十分あり、吸気加湿(Humid Air MotorHAM)によるNOx低減は、燃料油中の含有硫黄分の制限はなく海水を使用することから、同案を支持する意見が欧州各国から出された。また、未だ確立していない技術を前提とした規制は好ましくないため、SCR等の追加設備を必要としない、エンジン単体で実行可能な規制が適切であるとの意見もあった。

審議の結果、次のとおり3つの案(オプション)に纏められ、今後更に検討されることとなった。

 

オプション

A

(日本案)

B

(米国案)

C

(ノルウェー案)

規制値(一次規制比)

80%削減

8385%削減

4050%削減

対象エンジン

全てのエンジン

大型エンジン

30L/1シリンダー以上)

全てのエンジン

対象海域

陸岸から50海里以内

陸岸から[X]海里以内の特別海域のみ

全海域

[  ]内については今後検討される

 

A 既存船に対するNOx規制について

現行NOx規制の対象外とされている既存船に対する規制については、該当する船舶は隻数が多く、また船舶の寿命は長いことから、既存船からのNOx排出量は非常に大きくなるため、何らかの対策が必要であるとの意見が多数表明された。一方、既存船に対して規制を課す必要性、実行可能性、および規制に適合していることを認証する手順に関して疑問を呈する意見があり、審議は平行線をたどった。

そのため、議長は、今後の議論を進めるためには、以下の項目に関する情報が必要であると総括し、各国に対して情報の提供を要請した。また、既存船に対するNOx排出測定のため、簡素化したNOxテクニカルコードの策定が必要であることが認識された。

・現行のNOx規制に適合させるためのエンジンの改造方法

・改造が不適当であるエンジンの種類等

・規制に適合できないエンジンの取り扱い

・エンジン改造に伴うCO2排出量の増加

 

B SOx次期規制について

本会合においては、中間会合で纏められた4つの案に加え、新たに提出された米国案およびバルチック国際海運同盟(BIMCO)案を含めた検討が行われた。

審議の結果、A案を比較対象のベースラインとすること、C案とC2案をグローバルなアプローチ、それ以外は何らかの形での地理的規制と整理し、次の6つの案について今後更に検討されることとなった。

A       :ベースライン(現行規則)

B       SECAの規制のみを段階的に強化

B1     :沿岸域での規制を強化(米国提案)

B2      :港湾、河口付近の規制と、その他の海域を分けて規制を実施(BIMCO提案)

C       :全海域で留出油の使用を義務付ける(硫黄分は段階的に引き下げる)

C2     :オプションCにおいて、留出油使用の代替措置として船内処理装置と残渣油の組み合わせを認める

 

(4)第2BLG大気汚染中間会合(200710月)における審議結果について

@ 新造船に対するNOx規制について

(a) 2次規制について

2次規制については、現行の規制と同様の枠組み(回転数に応じた規制値を設定する方法)とすること、および現行規制値より2.03.5g/kWhの範囲で削減することが原則合意されている。本会合では、具体的な規制値を提案した中国の案を加え、次のとおり2つのオプションに纏められた。

 

オプション

A

 

g/kWh

B

(中国提案)

g/kWh

現行規制値

1次規制)

g/kWh

規制値

130rpm未満

1513.5

14.5

17.0

130rpm2000rpm

45.0×n(-0.2)(3.52.0)

36.0×n(-0.2)

45.0×n(-0.2)

2000rpm以上

7.86.3

7.8(残渣油使用の場合)

7.4(留出油使用の場合)

9.8

n=機関の定格回転数

(b) 3次規制について

3次規制については、4050%の削減幅とするノルウェー案と、共に現行規制値から80%以上の削減幅とする米国案および日本案の3つが、現在までに纏められている。今次会合では、同3案のそれぞれの提案国よりプレゼンテーションが行われ、次のとおり整理された。

 

オプション

A

(ノルウェー案)

B

(米国案)

C

(日本案)

規制幅(一次規制比)

4050%削減

8387%削減

80%削減

対象エンジン

全てのエンジン

シリンダー1本当たりの容積が30リットル以上のエンジン

全てのエンジン

対象海域

全海域

指定海域のみ

陸岸から50海里以内の指定海域のみ

 

A 既存船に対するNOx規制の検討

現行のNOx規制の対象外とされている既存船については、これらの船舶からのNOx排出量は非常に大きくなるとの認識の下、何らかの対策が必要であるとの意見が多数を占めており、ノルウェー、デンマーク、米国、およびドイツから具体的な規制案が本会合に提出された。

本会合において、中国およびギリシャは、既存船に対するNOx規制の導入そのものに反対を表明したが、上記提案国から既存エンジンに対する規制の必要性が改めて主張され、規制案として次のとおり2つの案(オプション)に纏められた。

 

オプション

A案(欧州案)

B案(米国案)

規制対象エンジン

[1980] [1985] [1990]から200011日以前に建造された船舶に搭載された、[出力130kW] [シリンダー1本当たりの容積が30もしくは60リットル以上] [回転数130rpm未満]のエンジン

シリンダー1本当たりの容積が30リットル以上のエンジン

規制値

1次規制値

1次規制値

規制実施時期

1

201011日以降の最初の定期検査または中間検査

2

船舶の建造年に応じて、2010年から2012年に段階的に適用

規制に適合することが主管庁により認証されたエンジンに対し、同認証がIMOに報告されてから1年後の最初の定期検査または中間検査

代替措置等

1

主管庁は、規制に適合することが[合理的でない、実施できない、過度に費用がかかる]と証明されたエンジンについては、適用除外できる。この場合、主管庁はNOxを削減するための代替措置(例えば、留出油の使用、入港税の増額、寄港国の入港拒否等)を講じなければならない。

2

規制に適合することが[合理的でない、実施できない、過度に費用がかかる]と証明されるエンジンについては、低硫黄留出油の使用その他の方法により規制に適合しなければならない。

[  ]内の選択肢については、今後の検討においていずれかに絞り込まれる)

 

(5)BLG1220082月)における審議結果について

@ 新造船に対するNOx規制について

(a) 2次規制について

2次規制について審議した結果、第2回中間会合において中国から提案された規制値を採用することが合意され、次のとおり纏められた。

実施時期

201111

現行規制値

1次規制)

規制値

g/kWh

130rpm未満

14.36

現行規制比 15.5%

17.0

130rpm2000rpm

44.0×n(-0.23)

同 15.5%21.8%

45.0×n(-0.2)

2000rpm以上

7.66

同 21.8%

9.8

n=エンジンの定格回転数

(b) 3次規制について

3次規制については、これまでに、全海域において現行規制値から4050%削減することとするノルウェー案と、指定海域においてのみ8387%削減することとする米国案、ならびに同80%削減することとする日本案の3つが纏められている。

本会合における審議の結果、日本案を採用することが合意され、次のとおり纏められた。なお、対象となるエンジンについては、今後審議されることとなった。

実施時期

201611

規制幅

現行規制比 80%削減

対象海域

IMOによる)指定海域のみ

 

A 既存船に対するNOx規制について

現行のNOx規制の対象外とされている既存船については、これらの船舶からのNOx排出量は非常に大きくなるとの認識の下、何らかの対策が必要であるとの意見が多数を占めており、大きく2つの案が纏められている。

本会合においては、どのような方法で規制を実施できるかについて審議が行われ、次のとおり整理された。なお、規制対象とするエンジンについては具体的な審議は行われず、MEPC57において、同2案を絞り込む作業と共に審議されることとなった。

オプション

1

2

 

対象エンジンの全てを規制

対象エンジンのうち、アップグレードキット(※)が認証されたもののみ規制

対象エンジン

1990年以降に建造された船舶の [シリンダー容積[30L] [60L] [90L]以上] [出力5,000kW以上]のエンジン

規制値

1次規制値

1次規制値

実施時期

今後IMOにおいて決定する日以降の、最初の定期検査または中間検査

主管庁がアップグレードキットの認証をIMOに通報してから[1]後の最初の定期検査または中間検査

代替措置等

流出油の使用、寄港国による入港拒否等

(※アップグレードキット:規制に適合させるための改造手法)

[  ]内の選択肢については、今後の検討においていずれかに絞り込まれる)

 

B SOx次期規制について

SOx次期規制については、これまでの会合において、全海域において留出油の使用を義務づける案や、特別海域のみを規制強化する案等、6つの案が纏められていた。なお、これらSOx規制案については、政府・産業界間の専門家グループ(Scientific GroupSG)により、規制を実施した場合の効果等に関する調査・分析が行われ、本会合にその結果が報告されていた。本会合においては、同SGの報告についてプレゼンテーションが行われ、100名以上が聴講し、活発な意見交換が行われた。

また、SOx次期規制に関し、港湾・河口付近に対し厳しい規制を課す提案を行っていたBIMCOは、今次会合において、現行のSECAを維持した上で、狭い範囲の海域に対し更に厳しい規制を設ける(マイクロSECA)提案を行った。審議においては、SGによる報告、BLG11で纏められていた6つの案、およびマイクロSECAのコンセプト等に関する検討が行われた結果、次の3つの案に集約され、MEPC57において引き続き審議されることとなった。

規制値および

実施時期

1

(全海域で規制強化)

2

(特別海域で規制強化)

3

3海域で規制強化)

一般海域

1.0% [2012]

0.5% [2015]

4.5%(現行どおり)

3.0% [2012]

特別海域

0.1% [2012]

1.0% [2010]

0.5% [2015]

0.1% マイクロSECA

・沿岸24海里以内

IMOにて指定

[  ]内については、今後の検討において決定される)

 

(6)MEPC5720084月)における審議結果について

 

@ 新造船に対するNOx規制について

(a) 2次規制について

2次規制については、現行の規制と同様の枠組み(エンジンの回転数に応じた規制値を設定する方法)とし、現行規制値より15.5%から21.8%の範囲で削減する具体的規制値について、BLG12において合意されている。

今次会合における審議の結果、BLG12での合意内容に特段の変更は無く、次の内容とする規則案が承認された。なお、同2次規制において対象とされるエンジンは出力130kWを超えるエンジンであり(現行規制と同様)、エンジン本体の改良によって対応が行われることとなる。

実施時期

201111

現行規制値

1次規制)

規制値

g/kWh

130rpm未満

14.4

現行規制比 15.5%

17.0

130rpm2000rpm

44.0×n(-0.23)

同 15.5%21.8%

45.0×n(-0.2)

2000rpm以上

7.7

同 21.8%

9.8

n=エンジンの定格回転数

(b) 3次規制について

3次規制については、BLG12において、わが国より提案を行っていた、IMOによる指定海域(Emission Control AreaECA)のみに、現行規制比80%削減とする規制値を適用する案が合意されている。なお、同3次規制で対象とするエンジンについては、詳細な議論が行われていなかった。

本会合においては、対象エンジンについて、現行規制と同様に出力130kWを超えるエンジンを規制対象とするものの、同規制に対応するためには排ガス後処理装置の設置が必要とされることを考慮し、合計推進出力が750kW以下であって設計または建造上の理由により主管庁が達成困難と認める船舶については、適用除外とすることが合意された。

また、2012年から2013年に、技術開発の進捗状況等を踏まえ規制開始時期をレビューする規定も盛り込むこととし、次の内容とする規則案が承認された。

実施時期

201611

現行規制値

1次規制)

規制値

g/kWh

130rpm未満

3.4

現行規制比 80%

17.0

130rpm2000rpm

9.0×n(-0.2)

45.0×n(-0.2)

2000rpm以上

2.0

9.8

n=エンジンの定格回転数

 

A 既存船に対するNOx規制の検討

現行のNOx規制の対象外とされている既存船については、BLG12において、一定の大きさ以上のエンジンに規制を課す案(案1)、および規制適合手法が主管庁により認証されたもののみに規制を課す案(案2)の2つが纏められていた。

本会合においては、規制の実効性を考慮した上で、上述の案2を中心に議論が行われ、次の内容とする規則案が承認された。なお、規制適合手法を主管庁が認証する場合に、エンジンの改造に伴う燃費悪化を2%以下とすることや、改造に要する費用に対し5年間で得られるNOx削減効果を判断指標とすることが盛り込まれた。

規制の枠組み

対象エンジンのうち、規制適合手法が認証されたもののみ規制

対象エンジン

1990年から1999年に建造された(起工した)船舶のエンジンのうち、シリンダー1本あたりの容積が90L以上かつ出力5,000kW以上のもの

規制値

1次規制値(現行規制値)

実施時期

主管庁が規制適合手法を認証し、IMOに通報してから1年後の最初の定期検査(ただし、規制適合手法(部品等)が入手できない場合で、主管庁に認められた場合は、次回年次検査まで延期可能)

規制適合手法の

条件等

@    当該エンジンの定格出力を1.0%以上悪化させないこと

A    当該エンジンの燃費を2.0%以上悪化させないこと

B    適正な費用であること

(改造に要する費用が一定のコストを超えないこと)

 

B SOx排出規制について

SOx次期規制案としては、BLG12において、全海域において1.0%以下の低硫黄燃料の使用を義務付ける案や、SECAにおける規制のみを強化する案、および一般海域とSECAに加えさらにSOx削減を推進する小海域(マイクロSECA)を設け、それぞれ適切な規制値を設定する案の3つの案が纏められていた。

本会合においては、BLG12で纏められていた案に加え、新たに提案された案を含めた審議が行われた。審議において、排出規制の強化を急進させたい欧州諸国等は、2018年から全海域において留出油の使用を義務付けることを主張したが、燃料供給国および石油業界等は、全海域における留出油の供給には20年程度の準備期間が必要であるとの見解を示した。また、わが国をはじめとする船主国・海運業界は、燃料油が安定的に確保されること、および排ガス洗浄装置等の代替措置が認められることが絶対条件であると主張し、アジア・中東諸国は、一般海域の規制値について、当面は3.5%が限界である旨表明した。さらに、欧州諸国および米国は、指定海域の規制値は0.1%とするべきと主張し、議論は紛糾した。

これを受け、議長より各国および各業界団体の意見を取り入れた折衷案が提案され、これを審議の結果、同提案は合意された。また、代替措置についても、同等の効果があれば使用できる旨、規則に盛り込むこととなった。その結果、次の内容とする規則案が纏められ、承認された。

一般海域

       3.5% 201211日から

       0.5% 202011日から(※)

       ※:  2018年時点でIMOが燃料油の需要・供給量等の確認を行い、

                2020年の開始が無理と判断された場合は、2025年からに変更

排出規制海域

       1.0% 201031日から

       0.1% 201511日から

 

C 今後の審議スケジュールについて

今次会合において承認されたMARPOL条約附属書VIの改正案については、MEPC58200810月)における採択、および20103月に発効することが見込まれている。

 

以上