23 油汚染事故および海上災害

231 有害液体物質(HNS)の汚染事故への対応体制

 「OPRC-HNS議定書」* 20076月発効に向けて、同議定書の内容をわが国の国内法制に取り入れるため、「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」(海防法)の一部が20066月に改正された(200741日施行、一部は200841日施行)。

これにより、ガソリン、灯油などの揮発油およびベンゼン、キシレンなどの有害液体物質(HNS)をばら積みで輸送し、特定海域(東京湾、伊勢湾、大阪湾を含む瀬戸内海)を航行する船舶の所有者に対し、HNS防除資機材の備え付けと要員の確保等が義務付けられることとなった。

 これら防除資機材の備え付けや要員の確保については、海上災害防止センター(以下、センター)などの防除業者への委託が認められていることから、当協会は海上安全・環境委員会/政策委員会の下に設置したHNS問題ワーキング・グループを中心に、センターとの委託契約やHNS事業体制等について検討を行い、センターと意見交換を行った。

 その後、センターはHNS防除体制の整備を行い、20084月からHNS防除資機材・要員配備および緊急措置サービスを開始した。船舶所有者はセンターのホームページ上から「HNS資機材要員配備・緊急措置業務」を申し込み、所定の料金を振り込むと、同センターが当該船舶所有者に代わってHNS資機材と要員を特定海域において確保していることを証明する「HNS資機材要員配備証明書」が発行される。

 

*OPRC-HNS議定書:正式名称は「2000年の危険物質及び有害物質による汚染事件に係る準備、対応及び協力に関する議定書」。同議定書は、1995年に発効した「1990年の油による汚染に係る準備、対応及び協力に関する国際条約(OPRC条約)」の対象を有害危険物質に拡大したもの。

 

232 海上災害防止センターの運営

1)組織形態の見直し

 197610月に認可法人として設立された海上災害防止センター(以下、センター)は、船舶所有者に義務付けられている油防除資機材の備え付けや特定海域における油回収船の配備業務を、船舶所有者からの委託によって実施している。

 同センターは、20016月に成立した「特殊法人改革基本法」に基づき、200310月に独立行政法人に移行したが、その後、行政改革の一環として独立行政法人の全面的な見直しが行われた結果、200712月に「独立行政法人整理合理化計画」が閣議決定された。同計画により、センターは「以下の3点の枠組みを維持した上で、独立行政法人の業務としては廃止し、法令に基づき特定分野の業務を行うものとして国により指定された公益法人の業務として実施する方向で検討」することとされた。

・緊急時における海上保安庁長官の指示等に基づく確実な排出油等の防除措置の実施

・上記に要した費用のうち、事故船舶所有者等から徴収できない分についての国費による補填

 ・防災基金への国の関与

 これにより、センターの組織形態は変わるものの、引き続き従来同様の業務が実施されることとなった。

また同計画では、平成22年度末までに新組織移行に関する必要な措置を講ずることとされているため、今後、具体的な作業が進められることとなる。

 

2)共通経費配賦基準の変更

 海上災害防止センターにおける役員人件費、一般管理費等のいわゆる共通経費については、防災措置業務、機材業務、消防船業務、訓練・調査研究業務の各業務勘定で分担して負担してきた。

 1980年にこの共通経費の分担割合について見直しの検討が行われた際、それまでの人頭割による分担から、比率を「防災1:機材2:消防1:訓練・調査研究1」とする案がセンターから示された。

 しかしながら、同案では、船舶所有者に代わって油防除資機材の備え付けや特定海域における油回収船の配備業務を行っている機材業務に対する負担が大幅に増大することとなり、油防除資機材証明書等の料金に影響を与えることが懸念されたことから、当協会は同案の見直しを強く要望した。

 これに対しセンターは、時間的制約を理由に、同案をもとに1980年度予算編成を行うこととしたため、当協会は、@センターの基本的問題に関する関係者の合意形成、A訓練業務等に対する国の予算の導入努力、を前提に上記比率を1980年度に限って了承することとした。

 しかしながら、当協会の上記要望にもかかわらず、1981年度以降も共通経費の分担割合は変更されること無く適用され、センターが2003年に独立行政法人に移行し、その第一期中期計画を策定する際にも、独法への円滑な移行を図るためとの理由から、上記比率が継続される案が示された。当協会は上記経緯に鑑み、これに強く反発しセンター側と議論を重ねたものの、最終的には次を条件としてやむを得ず受け入れることとし、センターからも同条件に異存ない旨の確認状が出された。

1)センターと船社側が協働して、共通経費の適正かつ合理的な負担のあり方を早急に検討し、双方がその結果を共有する。

 2)その上で、具体的な是正方針・方法について協議する。

 

 これら経緯を経て、20082月、センターは第二期中期計画策定に向けて、共通経費の配賦基準の変更について、基本的な考え方および比率に関する提案を行った。同提案では、すべての共通費用項目について同一の比率を適用するのは適正かつ合理的でないことから、項目毎に各業務勘定別の比率を算出するための考え方を整理した上で、機材業務勘定の分担比率案が策定された。

 同提案につき、センターの運営検討委員会で検討したところ、船社側としても受入可能との結論に至り、センター側と次の通り確認を行った。

 これにより、1980年から始まった共通経費の分担問題については、一応の決着を見ることとなった。

 

1.海上災害防止センター共通経費の各勘定に係る分担割合については、提示のあった配賦比率とし、平成20年度から原則5年間はこの比率を維持するものとする。

   なお、機材業務勘定に係る分担割合は、次のとおり。

・役職員給与(役員および総務部職員):37

・管理諸費(本部借料、電気料、清掃料):33

・管理諸費(支所管理費、本部借料、電気料、清掃料を除く):25

・交際費:37

2.ただし、分担割合算定の根拠等に大きな変化があったと思われる場合、海上災害防止センターは上記1の分担割合の見直しについて運営検討委員会と協議を行うものとする。