5. 港湾関係
5・1 水先制度の抜本改革について
5・1・1 水先制度改革の推進
(1)平成19年度水先料金に含まれる特別会費相当額の取り扱い
水先料金は平成19年4月より省令料金制から上限認可・届出料金制に移行したが、水先人が新しい料金を認可され、新料金を公表するまでに1年間の猶予期間が設けられた。これは、新制度の下でどのようなコストを料金に含めるか、またその原価計算の水準を求めるのに一定の期間を必要とするため、他の認可料金制度と同様に猶予期間が設定されたものである。これに伴い、平成18年度の水先料金が平成19年度も暫定的に適用されることになり、本来廃止されるべき特別会費相当分が水先料金に含まれることになった。
一方、新制度の下で水先人養成支援費用等必要な費用について水先料金から拠出すべきものがあり、それらを差し引いた金額について、制度改正により必要となる水先区の統合に伴う免許の限定解除費用、小水先区対策費用等に使用するために、基金として積み立て、これらの費用を認可料金のうちのコストに参入させないこととした。(一度料金認可が行われると、水先人から料金改定の認可申請がないと料金変更ができないため、限定解除費用をコストに含めた料金が認可されると、そのコストがゼロになっても料金が下がらない弊害がある。)
この結果、平成18年度特別会費相当額の取り扱いは以下の通りとなった。なお、水先人養成支援費用については、養成規模の拡大、養成のための教材費等の増加により、当初の見積もりより費用が増加した結果になったが、予算の執行については経費節減に努めるべく、当協会としても運営に参画することとした。
平成18年度特別会費・・・16.4億円
平成19年度・・・水先人養成支援費用・・・・・・9億円
安全環境公益事業支援費用・・・2億円
限定解除費用・・・・・・・・2.4億円(基金)
小水先区対策費用・・・・・・・3億円(基金)
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合 計 16.4億円
<参考>
平成20年度・・・水先人養成支援費用・・・・・9億円
安全環境公益事業支援費用・・2億円
(2)新たな水先料金に関するパイロット協会との意見交換会の開催
新制度の下で水先料金がどのように設定されるかについて、国土交通省海事局海技資格課のオブザーバー参加の下で日本パイロット協会と意見交換会を平成18年12月13日、平成19年2月7日、平成19年3月28日に開催し、上限認可料金制の下での原価計算の考え方、水先人指名制と独禁法の関係などについて意見交換を行った。
(3)水先料金に係る自動認可額の公示
国土交通省海事局海技資格課は、全国の水先人会を対象に、平成19年4月より9月までの半年間、各月毎の水先人会の経費を報告させ、その中に含まれている本来の水先業務に関係しない経費の洗い出し作業及びコストの標準化作業を行った。
この作業は、水先料金の上限認可・届出制への移行に伴い、自動認可額を公示し、水先人の上限認可申請手続きを簡素化することを目的としたものである。また、水先人会を法人化したことにより、これまで資産の保有や従業員の雇用のために便宜的に法人が設立されていたが、これからは法人化した水先人会で資産の保有や職員の雇用が可能になるので、上記経費の適確化、透明化を図る狙いから、便宜法人から資産や職員の雇用を移す指導が併行して行われた。
この結果に基づき平成19年12月12日に自動認可額に関する考え方、平成20年1月18日に考え方の2次案が算定基礎資料とともに示された後、同年2月に考え方の最終案「水先料金に係る自動認可公示額の設定について」が示され、平成20年2月15日に自動認可額公示(資料5-1-1-1)となった。
当局から示された考え方は、交通政策審議会答申(平成17年11月)を基本的方向性としつつも、「適正な原価+適正な利潤」としての査定のあり方については、認識に大きな隔たりがあった。このため、公示に至るまでの各案の段階で当協会として問題点を指摘する意見書を提出し、一部取り入れられたものの、査定によるコストおよび水先人の報酬の削減額は全体で8.49億円に止まった。なお、料金水準としては全体で13.89億円(4.48%)の引き下げとなった。
当協会は、公示前に当局の最終案に対し意見書(資料5-1-1-2)を提出するとともに、公示を受けて、仮に市場原理が働かず、結果として料金水準が自動認可額に張り付くとすれば、水先制度改革の意図するものとはかけ離れたものになってしまうとして、当局においては立法趣旨に則り市場原理を機能させるよう一層の指導力の発揮を要請したいとの趣旨の意見(資料5-1-1-3)をプレス発表した。
意見書の提出等を通じ、考慮された点は以下の通りである。
○水先人の報酬の算定
水先人の報酬額の算定に当たっては、1人当たり平均報酬額(推計)が外航船長報酬額を上回る強制水先区について、激変緩和措置を講じつつ報酬額の見直しを行う。
○自動認可額公示額に係る期限の付与
自動認可公示額については次の考え方に基づき2年間の期限を付す。(公示後の認可申請のあった上限認可も同様)
@)新制度導入に伴う湾口~港間の通し業務拡大等の進展等を踏まえ、コストについてさらに検討する必要性が想定されること。
A)実際の料金水準や新たな水先人確保の状況等についての調査を実施し、必要がある場合には、今回激変緩和措置を講じた水先区における自動認可公示額の水準等について、さらに検討する必要性が想定されること。
その後、各水先人から認可申請、届出が行われたが、平成20年4月1日時点で適用される料金は公示された自動認可額と同額で、上限に張り付く結果となった。
(4)水先人指名制の導入
改正水先法による上限認可・届出制と移行とともに、水先人の業務の効率化を促進する仕組みとして、平成20年4月1日より各水先人会は水先人の指名制を導入することとなった。これに先立ち当協会から日本水先人会連合会への(水先業務の適正化団体として水先法に基づき平成19年4月1日設立)の働きかけにより、東京湾、伊勢三河湾、大阪湾、内海の4水先区で平成19年11月から12月にかけて「指名制トライアル」が実施された。
同トライアルの結果については、平成20年3月6日に日本水先人会連合会による説明会が行われ、これによると、逆指名(ユーザーが水先人を選任するにあたり当該水先人を拒否すること)については、ある程度高い確率で応諾できるとしたものの、個人を対象とした指名は、水先人の安定供給への影響により、応諾できないケースが多いとの結論であった。
これらを踏まえて同連合会が策定した新たな「標準引受事務要領」も、従来同様、基本的に当直輪番制を維持するかたちでの運用であり、指名制を前提とした抜本的な体制見直しが図られていないことから、実効性に疑問の残るものとなっていた。
一方、新制度のスタートにあたり国土交通省海事局は、行政として制度は用意したので、あとは当事者間の問題として、当面は推移を注視するとの姿勢であったことから、当協会としては、水先制度の再見直しを視野に入れつつ、今後の活動に資するよう、3ヶ月間を目途に指名制の運用状況等について実態調査を行うこととした。
5・1・2 水先人養成制度
水先人養成制度を構築するため、当協会をはじめ国土交通省、日本パイロット協会、船員養成機関等の関係者によって平成17年12月に設置された「水先人養成等の仕組みの具体化に当たっての専門的検討事項に関する懇談会」において、延べ7回に亘って、養成制度全般の検討を行った。当協会は港湾関連業務専門委員会を中心に検討を行い、安全かつ効率的な制度を実現すべく当協会意見の反映に努めた。改正水先法においては、水先人の養成は平成19年度より指定養成機関(東京海洋大学、神戸大学、海技大学校)において行われることとなり、新規の養成者に対し海技振興センターによる支援事業が行われることとなった。養成への支援概要、水先人養成支援対象者の募集及び選考結果は以下の通りである。
(1)養成への支援概要
水先料金を原資として、以下の支援を実施する。
@新規一〜三級修業生への直接支援概要
・養成手当 :養成期間の全期間において月額25万円
・旅費/宿泊費:訓練(商船等乗船、タグボート乗船、水先現場)期間中実費相当を支給
・教材 :無償貸与
・被服 :無償貸与(救命胴衣等)
・その他 :養成期間中の傷害保険の付保、商船乗船中の供食等を支援
※上記の支援費用は、やむを得ない場合を除き、自己都合等により水先人になるのを断念した場合には、相当額の返還を求める場合がある。
A間接支援の概要
・養成支援団体が操船シミュレータ(含むソフト)を当面3台保有し、「海技大学校」、「東京海洋大学」、「神戸大学」3校にそれぞれ一台ずつ貸与
・養成支援団体が操船シミュレータのインストラクターの確保、派遣
(2)水先人養成支援対象者の募集及び選考結果
水先人養成支援対象者の募集及び選考は、以下の通りの結果となった。
○ 平成19年度1級水先人養成支援対象者
募集人員:15水先区55名
応募者 :15水先区90名
選考の上55名を決定。
○ 平成20年度3級水先人養成支援対象者
募集人員:5水先区25名
応募者 :5水先区75名
選考の上25名を決定。
○ 平成20年度1級水先人養成支援対象者
募集人員: 12水先区49名
応募者 : 11水先区54名
選考の上48名を決定。(1水先区において応募者なし)
○ 平成22年度3級水先人養成支援対象者
募集人員:5水先区25名
応募者 :5水先区40名
選考の上25名を決定。
なお、平成19年度は、新規一級水先人55名の養成を予定していたが、事故、病気などにより3名減の52名となり、このうち試験における合格者は40名であった。(12名の不合格者に対しては追加試験が予定されている。)
また、併行して、三大湾の水先区統合に伴う免許の限定解除、小水先区対策としての複数免許取得のための教育も行われ、それぞれ33名、1名が免許を取得した。
当協会は、募集員数決定過程における透明性の確保および指定養成機関による確実な養成教育の実施について、海技振興センターの水先人養成支援事業検討委員会等を通じ意見反映に努めた。
平成20年2月15日
国土交通省海事局
水先料金に係る自動認可公示額の設定について
1.基本的考え方
(1) 公示の趣旨
平成18年5月の水先法改正により、本年4月1日から水先料金が上限認可・届出制に移行することを受け、同日から適用される水先料金について、国土交通省の自動認可額を公示する。
(2) 基本的方向性
@ 水先業務の公益性の高さにかんがみ、水先料金については、公平・公正で透明性があることが必要である。
A 水先料金については、水先制度の改革をめぐる議論を行った交通政策審議会答申(平成17年11月)において「水先人の報酬について、そのレベルの適正さを含め疑問が呈されている」「特に、強制水先として、ユーザーに水先人の乗船を義務付けている場合には、その料金の性質については公共料金に等しいものとも言え、具体的な料金設定に当たっては、不当な超過利潤を認めないこととする等、業務の公益性にふさわしい料金設定となるように担保することが適当である」等の指摘がなされている。
B このため、今般の自動認可額公示に当たっては、費用構成等の透明化や水先業務の効率化につながるコスト査定を実施するとともに、水先人の報酬額を「人件費」と「利潤」に分け、企業会計に擬制した試算を行い、外航船長報酬額を基準として、報酬額に係る査定を実施した。
(3) 水先料金の多様化等に対する考え方
@ 上限認可・届出制は、基本的に、サービスを享受するユーザーの意向等を踏まえ、柔軟かつ迅速な料金設定を自由に行えるようにするとともに、例外的に、不当に高額な料金設定を予め防止するため、料金の上限を設けるものである。
A 水先人が自動認可公示額以下の水準で水先料金を設定する場合、水先人が上限認可申請を行うに際し、原価計算書等の添付は不要となる。また、水先人は上限認可を受けた金額の範囲内で水先料金を設定・変更する場合、届出で足りることとなる。
なお、自動認可額設定の根拠となったコストよりも高いコストが必要となる理由がある場合、水先人はこれを超える水準の上限認可申請を行うことが可能である。
B 水先人会は、新制度の導入に当たり、ユーザーの要望に応え、
@.指名制(ユーザーが希望する水先人を指名できる制度)
A.三大湾の水先区統合による通し業務の導入
(たとえば、東京湾口から京浜港まで1人の水先人が通し乗務することにより、乗り換え費用等が低減される)
等の措置に同意している。
これらの制度の導入により、水先業務の一層の効率化とともに、ユーザーの意向を反映した多様な料金や、各種営業割引の設定等による水先料金の効率化が期待される。
C 我が国の水先料金は、平成15年1月以降4次にわたる改定を経て△12.3%となっており、今回の自動認可公示額設定により、△16.8%以上の引き下げが行われることになる。
これは、我が国港湾コスト全体の低減率(コンテナ1個当たり)(平成14年→18年 △13%)を上回るものであるが、新制度の導入が物流コストの効果的な引き下げにつながるよう、ユーザーである海運企業及び水先人が一層の努力を払うことが期待される。
2.自動認可額の算定
(1) 自動認可額の水準
コスト及び水先人報酬(人件費+利潤)について、次のとおり引き下げを行った。
@ コスト削減額 △ 6.04億円 (△1.95%)
A 水先人報酬削減額 △ 7.86億円 (△2.53%)
計 △13.89億円 (△4.48%)
(2) コストの算定
コストの算定に当たっては、現行の省令料金制度の下でのコストをベースに、@全国的な標準化によるコスト縮減、A小水先区対策費用、限定解除費用の削減を行い、@、Aを合わせ、計6.04億円のコスト縮減を行った。
(注)小水先区対策費用:大手水先区水先人に小水先区の免許を取得させ派遣する費用
限定解除費用:統合区の水先人に統合後の水先区全域に関する免許を取得させるための養成費用
@の全国的な標準化によるコストの縮減については、標準化査定により業務の効率化が期待できる費目について、業務量に応じた査定を実施し、計0.64億円の縮減を行った。
Aのコストの削減については、水先人会の運営状況を踏まえ、小水先区対策費用(3.00億円)、限定解除費用(2.40億円)の計5.40億円の削減を行った。
(3) 水先人報酬の算定
水先人報酬の算定に当たっては、一人当たり平均報酬額(推計)が外航船長報酬
額を上回る強制水先区について、次の考え方に基づく計算を行った。
@ 水先人の報酬額を人件費と利潤に分け、企業会計に擬制した計算を行う。
A 人件費:外航船長報酬額(2,055万円=船員労働統計を基に算定)
B 利潤:6.435%(水運業売上高営業利益率。過去5年間の単純平均)
以上の計算の結果、水先人の報酬額が減少する水先区について、激変緩和を図るため、内海水先区は△10%、その他の水先区(旧東京湾、旧横須賀、旧伊良湖三河湾、関門)は△5%を報酬減少率の上限とした。
一方、以上の計算の結果、報酬額が上昇する水先区については、港湾コストの低減が求められている現状を踏まえ、報酬額の引上げは行わないこととした。
(4) 自動認可公示額に係る期限の付与
今回の自動認可公示額については、次の考え方に基づき適用の日(平成20年4
月1日)から2年間の期限を付す。公示後に申請があった水先料金の上限認可につ
いても、同様の期限を付すこととする。
@ 新制度の導入に伴う湾口〜港間の通し業務拡大等の進展等を踏まえ、コストについて、さらに検討する必要性が想定されること
A 実際の料金水準や新たな水先人確保の状況等についての調査を実施し、必要がある場合には、今回激変緩和措置を講じた水先区における自動認可公示額の水準等について、さらに検討する必要性が想定されること
(以下計算例等は省略)
水先料金に係る自動認可公示額の設定に関する意見
日本船主協会
1.基本的考え方
水先法第46条第3項では、国土交通大臣は、水先料金の上限の認可をしようとするときは、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないものであるかどうかを審査して、これをしなければならないとしている。
このたびの「基本的な方向性」において、水先料金は、公平・公正で透明性があること、業務の公益性にふさわしい料金設定となるように担保することなどの理念が掲げられ、自動認可額の公示に当たってコスト査定の実施、外航船長報酬額を基準に報酬額の査定を実施することには一定の評価が出来る。
また、「水先料金の多様化等に対する考え方」においても、ユーザーの意向を反映した多様な料金や、各種営業割引の設定等による水先料金の効率化が期待されるとし、新制度の導入が物流コストの効果的な引き下げにつながるよう、ユーザーである海運企業及び水先人に一層の努力を期待する点も法改正の趣旨に則ったものとして同意見である。
しかし、現実問題としては、たとえ上限といえども、第三者の意見を聴取する機会も設けぬまま、自動認可額を設定することについては、その透明性において疑問を感じざるをえない。 更に、指名制の導入については、トライアルの結果もまだ公表されていない段階で水先人からの各種営業割引の設定等の意思表示は皆無であり、かかる状況では期待されているような物流コストの引き下げにつながるような状況は兆しさえ見えない。
当局は、指名制の実行状況、料金の多様化について4月1日の新料金制度の導入と並行してモニターし、期待されている市場の実現性について早期の見極めが必要と思量する。
2.自動認可額の算定
基本的考え方で示された理念にもかかわらず、実際の原価に関しての査定は「旧省令料金制度下のコスト」をベースとしており、ヤードスティック方式を用いたとはいえ、その範囲も極めて限定的である。財務諸表その他の公開もなく、透明性のあるコスト算定からは大きく乖離している。
報酬に関しても、業務の公益性にふさわしい料金設定としながら、水先人の報酬のベースとなる人件費の水準を長期乗船、労務管理を伴う外航船船長の年収額に求めることについては、船長の労働の実態と水先人の業務の実態との比較に於いてその適正性を説明する必要がある。また、利潤率について一般水運業の利益率を導入することは公益性の面から受け入れがたい。
一定の期限を付して再検討への余地を残した点は評価するが、激変緩和措置については、極力速やかに解消すべきである。
3.主な強制水先区に係る料金水準
今回の水先料金に係る自動認可額は、主な強制水先区においても、非常に減額率が低いが、それは上述の通りコスト査定による減額が極めて小さいことと、報酬の適正化が図られないことに起因するものにほかならない。
また、任意水先区においても同様の考えによりベンチマーク適用の措置が取られてしかるべきである。
4.制度の再見直し
「水先制度のあり方に関する懇談会報告」に記された引受主体の法人化が実現しなかったことは、少なからず上限認可制の実効性に影響をもたらしたと考えられ、現状では料金が上限に張り付くとの懸念は払拭できない。これまでに関係者が水先改革に注いだ努力を水泡に帰さないようにするためにも、早期に関係者も交えたフォローアップの場を設けるとともに、必要に応じ制度改革の再見直しに着手すべきである。
平成20年2月18日
社団法人日本船主協会
会 長 前川 弘幸
水先制度改革のフォローアップについて
水先制度改革は、改正水先法が平成19年4月1日に施行され、法に盛り込まれた各種の施策が徐々に実行に移されているが、料金制度(従来の省令料金から上限認可・届出料金へと移行)については、1年間の猶予期間が設定されており本年4月が実質的なスタートとなる。
今般、水先料金の上限認可制移行に当たり、国土交通省より「水先料金に係る自動認可額」が公示された。
水先制度のあり方に関する懇談会、交通政策審議会における関係者の議論や改正水先法案の国会審議を通じて示された料金制度は、
これまでの水先料金は、国が全国一律に定める省令料金であったためコストとの乖離が激しく、結果として水先人の報酬について、そのレベルの適正さを含めて疑問が呈されているとの認識の下に、
事実上の地域独占状態を背景とした不当に高額な料金設定を予め防止しつつ、サービスを享受するユーザーの意向等を踏まえ、柔軟かつ迅速に料金設定できるようにするために、上限の範囲で料金を自由に設定できる上限認可制が導入されたものである。
自動認可額公示に当たり示された当局の考え方では、指名制などの導入により、水先業務の一層の効率化とともにユーザーの意向を反映した多様な料金や、各種営業割引の設定等による水先料金の効率化が期待されるとしている。
ユーザーとしても、指名制の活用により料金の設定に自らの要求が取り入れられ、また、競争原理が働くことにより水先業務の効率化や、業務運営の透明性が高まることを期待しているが、現実には、水先の引受は水先人個人であること、水先区毎の水先応召義務の共有、料金の公開、不当な差別の禁止などの要素により水先業に市場原理が機能するかどうかは不確定である。
今回公示された自動認可額は、現行省令料金を見直し設定されたとのことであるが、上限額とはいえレベルに於いて若干の調整にとどまっており、仮に前述の理由により市場原理が働かず、結果として料金水準が自動認可額に張り付くとすれば、水先制度改革の意図するものとはかけ離れたものになってしまう。
当局においては新たな水先制度を「絵に描いた餅」に終わらせることのないよう、立法趣旨に則り市場原理を機能させるよう一層の指導力の発揮を要請したい。
一方、今回の制度改革では充分に市場原理が機能しないならば、再度、見直すことも充分考えられる。水先制度改革に向けた関係者の努力が水泡に帰すことのないよう、料金のみならず業務運営の適正化をはじめ水先改革の進捗状況全般についてフォローアップのため、関係者の方々にも参加いただいて検討する場を設ける必要があると考える。
以上