5・2 港湾整備関係
5・2・1 交通政策審議会港湾分科会の動き
交通政策審議会港湾分科会では国土交通大臣の諮問に応じて以下の項目が審議されることになっている。
1)
港湾の開発、利用及び保全並びに開発保全航路の開発に関する基本方針
2)
港湾計画
3)
港湾整備5ヵ年計画
4)
特定港湾施設整備事業の整備計画
5)
広域臨海環境整備センターの基本計画
6)
港湾及び航路に関する重要事項
当該期間(2006年8月〜2008年3月)に開催された港湾分科会(第18〜29回)においては、主に2006年7月に国土交通大臣より諮問を受け『我が国産業の国際競争力強化等を図るための今後の港湾政策のあり方について』と題した次期港湾政策の審議、並びに次期社会資本整備重点計画の策定、港湾計画改訂・一部変更についての審議がおこなわれた。当協会からは外園港湾物流専門委員会委員長が委員に就任し、船社意見の反映に努めた。
港湾分科会での主な審議内容
第18回(2006年7月6日)
@平成18年度特定港湾施設整備事業基本計画(案)について(審議・承認)
A我が国産業の国際競争力強化等を図るための今後の港湾政策のあり方について(審議)
B港湾計画について(審議・承認)
酒田港(改訂)
水島港(改訂)
木更津港(一部変更)
C交通政策審議会港湾分科会第7回環境部会について(報告)
第19回 (2006年9月28日)
@
我が国産業の国際競争力強化等を図るための今後の港湾政策のあり方について
・
商社、鉄鋼メーカーによるプレゼンテーション
・
事務局より港湾の長期政策についての論点(報告)
A社会資本整備重点計画の策定について(報告)
第20回 (2006年11月30日)
@我が国産業の国際競争力強化等を図るための今後の港湾政策のあり方について
・(社)日本経済団体連合会によるプレゼンテーション
・港湾の長期政策に当たっての論点と施策の方向性(素案)(報告)
・社会資本整備重点計画の策定について(報告)
A港湾計画について:(審議・承認)
・大阪港(改訂)
・大分港(改訂)
・舞鶴港(一部変更)
・北九州港(一部変更)
第21回 (2007年1月26日)
@我が国産業の国際競争力強化等を図るための今後の港湾政策のあり方について
・物流事業者によるプレゼンテーション
・臨海部物流拠点(港湾ロジスティクス・ハブ)の形成について(報告)
・臨海部産業の活性化・立地促進のための支援方策について(報告)
・今後の港湾政策の方向性について(報告)
A社会資本整備重点計画の策定について(報告)
第22回 (2007年2月22日)
@我が国産業の国際競争力強化等を図るための今後の港湾政策のあり方について
・港湾分科会における指摘事項とその対応(案)について(報告)
・我が国産業の国際競争力等を図るための港湾政策(案)について(報告)
A社会資本整備重点計画の策定について(報告)
第23回 (2007年3月8日)
@港湾計画について:(審議・承認)
・鹿島港(改訂)
・常陸那珂港(一部変更)
・苫小牧港(一部変更)
・東京港(一部変更)
・神戸港(一部変更)
・福山港(一部変更)
第24回 (2006年4月12日)
@アジア・ゲートウェイ構想について(報告)
A我が国産業の国際競争力強化等を図るための今後の港湾政策のあり方(素案)(報告)
第25回 (2007年5月24日)
@社会資本整備重点計画の策定について(報告)
A我が国産業の国際競争力強化等を図るための今後の港湾政策のあり方について
・アジア・ゲートウェイ構想における、港湾に係わる部分について(報告)
・中間報告(案)について(報告)
・(社)日本経済団体連合会からのヒアリング
第26回 (2007年7月5日)
@我が国産業の国際競争力強化等を図るための今後の港湾政策のあり方について
・中間報告案(審議・承認)
・社会資本整備重点計画の策定について(報告)
A平成19年度特定港湾施設整備事業基本計画(案)について(審議・承認)
B港湾計画について:(審議・承認)
・尾鷲(改訂)
・名古屋港(一部変更)
・小名浜港(一部変更)
第27回 (2007年11月29日)
@我が国産業の国際競争力強化等を図るための今後の港湾政策のあり方について
・日本商工会議所からのヒアリング
・スーパー中枢港湾政策の進捗状況(報告)
・目標達成に向けた港湾政策の進捗
A地球温暖化に起因する気候変動に対する港湾政策のあり方について(報告)
B港湾計画について:(審議・承認)
・三田尻港(改訂)
・油津港(改訂)
・苫小牧港(改訂)
・八戸港(一部変更)
・新潟港(一部変更)
・堺泉北港(一部変更)
・北九州港(一部変更)
・中津港(一部変更)
C「港湾関係事業の中期計画(仮称)」について(報告)
第28回 (2008年1月28日 懇談会)
@我が国産業の国際競争力強化等を図るための今後の港湾政策のあり方について(報告)
A「港湾関係事業の中期計画(仮称)」について(報告)
第29回 (2008年3月27日)
@我が国産業の国際競争力強化等を図るための今後の港湾政策のあり方について(答申)
A港湾計画について:(審議・承認)
・東京港(一部変更)
・三島川之江港(一部変更)
・金沢港(一部変更)
・広島港(一部変更)
・石狩湾新港(一部変更)
5・2・2 スーパー中枢港湾政策
国土交通省港湾局はスーパー中枢港湾選定委員会での審議を経て、平成16年7月に京浜港、伊勢湾、阪神港の3港をスーパー中枢港湾に指定し、平成16年度よりこれらの港湾でターミナルシステムの統合・大規模化、IT化等に向けた社会実験を開始した。
平成17年7月1日に港湾法が改正され、7月4日に京浜港、名古屋港及び四日市港、大阪港及び神戸港が指定特定重要港湾(法第2条の2)に指定された。又、各港においては、特定国際コンテナ埠頭(次世代高規格ターミナル)の運営者が以下のとおり認定(法第50条の4)された。
[京浜港]
横浜港本牧ふ頭BC突堤間CT 横浜港メガターミナル梶@ H17.8.5認定
[伊勢湾]
名古屋港飛島ふ頭南側CT 飛島コンテナ埠頭梶@ H17.8.15認定
四日市港霞ヶ浦CT
四日市コンテナターミナル梶@ H17.12.15認定
[阪神港]
大阪港夢洲CT
夢洲コンテナターミナル梶@ H17.11.16認定
神戸港ポートアイランド第2期CT 神戸メガコンテナターミナル梶@ H17.11.8認定
横浜港メガターミナル鰍ヘ平成17年12月5日に、飛島コンテナ埠頭鰍ヘ同じく12月1日に運営事業を開始した。横浜港メガターミナル鰍ヘ港運主体の18社、飛島コンテナ埠頭鰍ヘトヨタの物流子会社である飛島物流サービス、邦船3社、港運6社が出資している。
「スーパー中枢港湾の特定国際コンテナ埠頭において整備されるに荷捌施設等に対する固定資産税・都市計画税の特例措置」については、平成19年3月末に期限が到来するので、特に邦船3社が出資している飛島コンテナ埠頭梶i名古屋港)に係る同措置延長に向けて、国土交通省と連携を図りながら国会議員への陳情活動をおこなった。その結果、当方の要望どおり現行の特例措置が平成21年3月末までの2年間延長されることとなった。
尚、平成18年度以降、スーパー中枢港湾選定委員会は開催されていないが、当協会は日本港湾の国際競争力強化につながる施策が速やかに具体化されるとともに、上記の次世代高規格ターミナルと公社ターミナルとの間に、税制・財政面で著しい不公平が出ぬよう、国土交通省港湾局への働きかけに努めた。
5・2・3 外貿埠頭公社の民営化問題
スーパー中枢港湾選定委員会のワーキンググループとして設置された「港湾の管理・運営のあり方に関する検討部会」では、埠頭公社のあり方を中心にスーパー中枢港湾の適切・効率的な管理運営について検討がおこなわれた。5回に亘る議論を踏まえて平成17年3月に既存公社埠頭を含めたスーパー中枢港湾全体の国際競争力強化のための方策が取纏められた。
国土交通省港湾局は引続き平成17年8月に港湾の管理・運営体制の改革の一手として公社改革のスキームを発表した。その骨子は、効率的な埠頭運営を可能とする公社民営化と埠頭貸付料低減化を図るための公社資産の下物部分(岸壁・埠頭用地)の公共化である。国の平成18年度予算では埠頭公社が民営会社に移行する場合の支援措置として、既存公社と同様の無利子貸付制度の新設、税制特別措置等が認められた(共に民営会社化後10年間)。
一方、最大の焦点だった下物部分の公共化等は認められず、民営化を進めるための制度が完全に整わなかった。しかしながら平成18年10月1日に「外貿埠頭公団の解散及び業務の承継に関する法律」(承継法)の一部を改正した「特定外貿埠頭の管理運営に関する法律」が施行され、埠頭公社の民営化が可能となった。
このように埠頭公社の民営化制度が創設されたが、民営会社が埠頭公社から承継する資産以外の、新規に整備する資産に対しては税制特例措置が認められず、又、平成20年3月末に期限が到来する外貿埠頭公社に係る税制特例措置も、新規に整備する施設に対しては適用されないこととなった。
このように「スーパー中枢港湾の特定国際コンテナ埠頭(メガターミナル)」との間に著しい不公平が生じることとなったため、当協会はメガターミナルと埠頭公社ターミナル(民営化後を含む)との間の政策的支援の格差是正のため、公社埠頭に何らかの財政及び税制支援措置が講じられるよう国土交通省に強く要請し、公社埠頭借受者及び利用者の立場から意見の反映に努めた。
又、平成20年4月1日より株式会社への移行を決定した東京港埠頭公社に対し、埠頭借受者の意見が反映されるよう借受者よりの非常勤(社外)取締役派遣を可能とするとともに借受料の低減化が実現するよう働きかけた。4月1日以降、ボリューム、長期借受、環境対応などのインセンティブ制度が導入され、借受料の低減化が一定程度実現される見込みである。
5.2.4 横浜港におけるコンテナ埠頭管理のあり方に係わる意見交換会
スーパー中枢港湾の関連プロジェクトが本格化し、又並行して国の埠頭公社民営化の取組みが進められる中、横浜市港湾局では独自にコンテナターミナル管理業務の公共・公社一元化(横浜方式)が検討されてきたが、その是非や具体化に向けた方策を検討するため、関係団体や学識経験者による「横浜港におけるコンテナ埠頭の管理のあり方検討に係る意見交換会」が平成18年9月より10月まで3回開催された。
意見交換会には港湾協議会の事務局長がメンバーとして参画し、公社埠頭の借受者及び利用者の立場から意見の反映に努めた。横浜市では意見交換会での取纏め結果に基づき、平成19年4月1日より指定管理者に選定された横浜港埠頭公社が公共コンテナ埠頭の管理業務を開始した。意見交換会の概要は以下のとおり。
(1)検討メンバー
高橋 郁夫(日本海事新聞社記者)
来生 新 (横浜国立大学副学長)
海部 武志(日本船主協会港湾協議会事務局長)
関根 康 (外国船舶協会専務理事)
井上 隆 (横浜港メガターミナル株式会社代表取締役社長)
三縄 昭男(三縄昭男公認会計士事務所所長、公認会計士)
(2)意見交換会
第1回(平成18年9月6日)
事務局より横浜市におけるコンテナ埠頭管理の現状と課題が説明された。横浜港では@公共・公社両コンテナ埠頭の使用形態が同質化し、又連続する両埠頭の一体化が進んでいるにも拘わらず、公共・公社で料金体系が異なる、A岸壁が公共、後背施設が公社管理等のように埠頭の整備方式や管理形態が多様化・複雑化している等の問題点が指摘された。
第2回(平成18年9月28日)
事務局より公共コンテナ埠頭の管理を指定管理者制度の活用により横浜港埠頭公社に委託するという具体案が示され、意見交換がおこなわれた。@市港湾局、公社の業務の一元化、重複業務の整理による管理経費の削減、A公共・公社コンテナ埠頭の相互利用、利用の効率化により利便性の向上及び収入増を図り、公社埠頭借受者にメリットを還元するとのこと。指定管理者制度は、公の施設の管理に民間のノウハウを活用しながら、サービスの向上と経費の節減を図ることを目的に平成15年6月地方自治法の改正により創設された。国の民営化スキームを適用した場合、現状では法人税の負担額が固定資産税の削減額を上回るため、現時点で民営化方式を選択するのは得策ではないとの説明がなされた。
第3回(平成18年10月24日)
横浜港埠頭公社を指定管理者に認定して、公共・公社コンテナ埠頭の管理一元化を早急に取り進めることが望ましいとの方針を取纏めた。当面は以下のコンテナ埠頭のみとするが、将来的には在来埠頭や自動車専用埠頭の管理もおこない一元化のメリットを最大限生かす。尚、一元管理の実績を踏まえた上で、土地等下物施設の公共化や災害復旧の公費措置化等の施設費負担軽減、更には埠頭公社の民営化のための条件整備を引き続き国に要望してくことが確認された。又、一元化の対象となる公共コンテナ埠頭は、大黒ふ頭T-9コンテナターミナル、本牧ふ頭BCコンテナターミナル、同D突堤(D1〜3)コンテナターミナルである。
5・2・5 内航フィーダー輸送推進委員会
内航フィーダー輸送に関する社会実験を通じて、スーパー中枢港湾プロジェクトと一体となって、内航フィーダー輸送の活性化を図り、ひいては、我国港湾のネットワーク全体の競争力強化、利用促進、港湾・海運産業の活性化に寄与することを目的として国土交通省(港湾経済課)は「内航フィーダー輸送推進委員会」を開催した。
平成17年度はフィーダー船の外航バースへの直付け、デッキバージを使用したフィーダー輸送モードの構築、大型専用船の投入によるフィーダー輸送の効率化を検討すべく、神戸港と横浜港で社会実験がおこなわれたが、平成18年度はこれに引続きスーパー中枢港湾である神戸港と地方港のひとつである広島港とのネットワーク形成に向けた社会実験がおこなわれた。
平成18年度は委員会が2回開催され、港湾協議会の
平成18年度内航フィーダー輸送推進委員会での検討概要
第1回(平成19年1月16日)
@前年度に実施された社会実験の成果と課題
A本年度に実施予定の社会実験の内容
B次年度に実験を予定しているペンデュラム構想(内航フィーダー航路を延航して東南アジア航路と一貫輸送)
事務局(港湾経済課)が前年度に実施した社会実験の結果報告をおこなうとともに、今後の課題を整理した。質疑応答の後、本年度は神戸港と広島港とのネットワーク形成に向けた社会実験を行うことが承認された。
尚、Bペンデュラム構想に関して、当協会の海部委員は「内航フィーダー船は外航近海船とコスト構造(バンカー価格、船員費、船型)が異なるので、現状では内航フィーダー船をアジア向けに延航してもコスト面で外航近海船とは勝負にならない」と指摘した。
第2回(平成19年3月22日)
@外航コンテナ二次輸送実績(内航総連)
A本年度に実施された社会実験の成果と課題
B次年度に実験を予定しているペンデュラム構想
事務局(港湾経済課)が配布資料に基づき説明・質疑応答。課題として内航フィーダー輸送をおこなうスーパー中枢港湾と地方港のバース状況や貨物情報などの共有、作業情報の共有とサービス向上の更なる取組みなどが挙げられた。尚、Bペンデュラム構想に関しては、特にコスト面での課題が多いため、段階的に検討すると説明された。
5・2・6 港湾施設の出入管理の高度化に関する検討会
港湾施設の出入管理においては、保安と物流の効率化の両立のため出入管理の迅速化・効率化が重要であるとの認識のもと、国交省港湾局は港湾施設の利用者・管理者等と意見を交換して解決策を見出すべく、平成16年8月から平成18年3月までに「港湾施設の出入管理の高度化に関する検討会」を本委員会5回、小委員会3回、合計8回開催した。この中では、共通カード(港湾施設立入身分証)やゲート効率化システムのあり方について検討され、その後神戸港と東京港で実証実験が実施された。又、大井コンテナターミナルにおける出入管理の高度化対策を検討するため、「大井CT効率化推進研究会」が開催された。
平成18年度には2回本委員会が開催され、2年半に亘り検討した結果が取纏められたが、システム運用のための費用負担方法、共通カード所持者に対する信用付与の仕方、トラックドライバーへのカードの普及方法など多くの課題が整理されないまま委員会は終了した。
その後国交省は実用化に向け関係業界と調整していたが、平成19年9月に平成20年度の実用化を目指して関係者への予算概算要求の説明会を開催した。要求内容は国が出入管理システムを整備・運営するが、その使用料をシステム利用者からの徴収を義務づけるべく港湾法を改正するもの。システムの利用者とは港湾保安法での「施設の管理者」とされ、公社埠頭の場合は埠頭の借受者となる。システムの利用はオプションであるが、システムの使用料が明確に提示されないまま、又委員会で指摘された運用面での課題が整理されないまま性急に導入を進めることに我々は反対している。
尚、委員会には当協会港湾協議会事務局長が参加し、埠頭借受者及び利用者の立場から意見の反映に務めた。