54 輸出入・港湾諸手続の簡素化について

 

541  貿易手続の改革

1. 輸出入・港湾関係手続の簡易化に向けた取組み

 当協会では、わが国産業の国際競争力の強化を図る観点から20046月に経団連および経団連加盟団体とともに「輸出入・港湾諸手続の効率化に関する提言」を取り纏め、FAL条約の批准や国内法の整備等を提言した。その結果、20059月には、同条約が1967年に発効されて以来約40年を経てわが国でもようやく締結され、条約に規定される標準様式が採用されることにより、申請書類数が16種類から8種類、データ項目数で600項目から200項目に削減されるなど簡素化の観点から大きな前進がみられた。

 しかしながら、条約の対象とならない港湾管理者の手続きは書式が統一されておらず、たとえ各港湾管理者がシステムを有していてもそれが港湾独自のシステムなっており、依然として申請者は個別港湾ごとに異なる対応をとらざるを得ない状況に変わりはなかった。

 こうしたなか、当協会をはじめ経団連等は200611月に新たな提言「貿易諸制度の抜本的な改革を求める」を取り纏め、輸出入者に係る諸制度改革とともに“港湾行政における広域連携のあり方と手続きの改善”として、前回提言では達成できなかった港湾管理者届出書式の統一、ペーパーレス化の実現など具体的な提案を行った。

 

2. アジアゲートウェイ戦略会議

 20072月には、安倍首相(当時)のイニシアティヴで設置されたアジアゲートウェイ戦略会議の検討組織「物流(貿易関係手続等)に関する検討会」(座長:杉山武彦 一橋大学学長)が官邸に設置され、@次世代シングルウィンドウの見直し、A日本版C-TPATの構築、B規制の見直し、手続の統一化・簡素化、をテーマに具体的な方策の策定等について官民での検討が開始された。なお、当協会は同検討会において、従前同様に全ての輸出入・港湾諸手続きを統合し、標準化された情報を1回、1箇所に入力/送信するだけで、港湾管理者(地方自治体)を含め全ての手続きが完了する真のワンストップサービス=シングルウィンドウの実現を求めた。

 同検討会は、実務者で組織する下部機関の“検討チーム”とで夫々都合3回の会合が行われた結果、同年5月に報告書として「貿易手続改革プログラム」が取り纏められた。このなかで港湾手続の統一化・簡素化については、「アジアトップクラスに匹敵するIT化・ペーパーレス化の徹底、複数寄港しても最初の入力で済む高い利便性を目指し、主要港や地方港によって異なった港湾関連手続の申請書式の統一化・簡素化を進め、次世代シングルウィンドウへの機能追加を図る」と明記され、更に「各港湾の申請書式の統一化や所要のシステム改修等の状況を定期的に調査・公表。今後3年間(1921年度)を集中改革期間と位置づけて達成を目指す。なお、推進に際しては、次世代シングルウィンドウ稼動から1年程度で一定の成果が得られるような早期実現の工夫を、引続き検討する。」と報告がなされ、港湾管理者の次世代シングルウィンドウ参加に向けた方向性が示された。このほか報告書には、港湾や保税・通関制度の見直し、日本版AEOC-TPATから名称を変更)制度の構築、次世代シングルウィンドウの見直し等が盛り込まれた。

 

3. 貿易手続改革プログラム

 その後、改革プログラムのテーマ別に関係省庁で官民協議会が立ち上がり、港湾手続きについては、国交省港湾局の下に「港湾手続の統一化・簡素化に関する官民合同検討会」が設置され、個別具体的な取組みについて意見交換が行われた。また、国交省は改革プログラムの実施に向け、港湾手続の統一モデルを作成し、20088月に全国の港湾管理者に宛てにモデルの採用を依頼する通知を行い、また同年12月には採用状況の調査を行った結果、200810月の次世代シングルウィンドウ稼動までに約5割の港湾管理者が統一モデルを採用する見通しとなった。

 また、財務省関税局の下に設置された「AEO推進官民協議会」では、制度の対象となる事業者の拡大等について意見交換が行われ、20084月から船社を含む国際運送貨物取扱事業者が新たにAEO制度の対象事業者となり、認定事業者に対しては保税運送手続きの簡素化が図られることとなった。

 

 

542  IMO FAL委員会への対応

FAL条約は、国際海上交通の円滑化のため国際航海に従事する船舶の入出港時における手続や書類の簡素化等を図ることを目的としたIMOの条約であり、1967年に発効し日本は20059月に批准している。IMO FAL(簡易化)委員会では、条約の改正や国際海上交通の更なる簡易化について議論しているが、米国同時多発テロ以降は、セキュリティの確保と入出港手続の簡易化の両立といった問題にも焦点があてられている。

 

1IMO34FAL委員会

 IMO34FAL委員会が2007326日から30日までの間、ロンドンで開催された。20067月に開催された前回委員会においていくつかの条約附属書改正案について暫定的な合意が形成されたが、ICSをはじめとする国際海運団体は、改正がなされると条約の趣旨である簡易化が損なわれるとして異議を唱えていた。とりわけ「客船に対する簡易化規定を削減する提案」及び「船員のVISA情報をFALの乗組員リストの項目に追加する提案」については、国際海運諸団体の連名で改正に反対する文書を同委員会へ提出した。

 同委員会にあたり当協会および外航客船協会は、FAL条約に関する国内での関係官庁および業界の意見交換の場である「FAL条約に関する官民連絡協議会」において、改正案に反対するよう概要以下の通り日本政府への働きかけを行った。

 (1)“船員及び船客のVISA情報の追加”の提案はFAL条約の目的である海上交通の簡易化にとって重大な阻害要因になるとして、外航商船及び外航客船の実情に照らした説明を行うとともに、現在米国配船の船員のVISA取得にあたり直面している問題点、ICSをはじめとする国際海運業界団体及びアジアの船主協会が改正に反対していること、及びILOからもILO185号条約との矛盾が指摘されていることなどにも言及し、改正への反対を訴えるとともに日本政府の対処方針へ反映されるよう要請した。

(2) “国際貿易の保安確保と簡易化”に関する、米国提案(FAL34/10/5)がコンテナ外部だけでなく内部の点検も本船(及び港湾)に義務付けるべくISPS Codeの改正を提案している点について、大半のコンテナは荷主によりコンテナシールを装着された後で本船及び港湾に持ち込まれることから、内部点検実施は不可能である旨説明。日本政府にはFAL委員会で同提案の非現実性を指摘の上、反対するよう要請した。

 

 こうして開催されたFAL委員会では業界の意向を汲んだ日本政府の尽力もあり、乗組員および乗客に対するVISA要件、乗客のVISAなし寄港地上陸許可、通過中の乗客に対する一時的な上陸許可、通過中の乗客の一時的なVISAなし上陸許可、を改正案には含めず、現行通りとすることが決定し、また国際貿易の保安確保と簡易化に関する提案も支持を得ることがなく、業界が問題としていた点については良好なかたちで決着をみた。

 

 

543 ACL業務(船積確認事項登録業務)利用率の促進

当協会は、従前より外国船舶協会をはじめ関係業界団体、および通関情報処理センターと協力して、積荷目録情報のベースとなるSea-NACCSが提供している船積確認事項登録業務(ACL業務)の利用促進のための活動を行っている。

こうした活動の結果、ACL利用率は以下の通りとなった。(昨年同月に比べ、邦船全体で8.3%、外船全体で6.7%、邦外船全体で6.4%、それぞれ利用率が上がった)

20074月港別EDI化率

 

仙台

東京

横浜

清水

御前崎

名古屋

四日市

大阪

神戸

門司

博多

その他

全国

邦船

全体

60.3%

49.3%

28.5%

50.3%

100%

76.4%

77.5%

30.7%

45.7%

26.2%

20.8%

0.0%

50.1%

外船

全体

10.7%

42.0%

25.8%

44.3%

 

66.0%

38.7%

31.9%

46.1%

16.6%

35.9%

12.0%

42.1%

邦外船全体

35.7%

44.2%

26.5%

45.8%

100%

68.9%

64.5%

31.5%

46.0%

23.8%

30.9%

7.2%

44.3%

) 邦船3社、外船12社で集計平均化した数値。