64 海賊対策

 

641 海賊事件の発生状況

(1)世界における発生件数

国際商業会議所(International Chamber of Commerce = ICC)の下部組織である国際海事局(International Maritime Bureau = IMB)の海賊情報センター(クアラルンプール)の年次報告によれば、全世界における2007年の海賊事件(未遂事件も含む)の報告件数は263件で、2006年より24件、約10.0%増加し、2003年より3年連続で続いた減少傾向が止まった。

地域別発生件数を見ると、東南アジアが70件(20077%)で、依然として世界で最も海賊事件の多い地域となっており、これにアフリカ(120件)、インドおよび周辺国(30件)が続いている。東南アジアの海賊事件の多くはインドネシア(43件)で発生している。マラッカ海峡は、200312件、200411件と増加傾向であったが、20077件と減少傾向が続いている。

また、全体の傷害等発生件数は2006317件から2007433件と116件の増加となった。内訳を見ると、身代金要求目的の誘拐が77件から63件に、乗組員が海賊に殺害される件数が15人から5人とそれぞれ減少したのに対し、乗組員の傷害が15件から35件に、人質となった件数が188人から292人と増加した。(資料6-1参照)

 

(2)日本関係船の発生件数

国土交通省海事局は、2007年におけるわが国関係船舶(邦船社が所有、運航、用船している外航船舶)に対する海賊事件について発表した。その概要は以下のとおりである。

@被害件数

わが国関係船舶が海賊に襲われた発生件数は2007年に10件で、2006年の8件から増加した。

A発生海域

地域別に見ると、インドネシア周辺海域を中心に東南アジア海域で5件発生した。また、インド周辺海域で2件、ソマリアおよびアフリカ(ナイジェリア、タンザニア)で3件発生している。

 

 

642 我が国および当協会の対応

(1)海賊・海上武装強盗対策

国土交通省および海上保安庁は、20061月に開催された第4回海賊・海上武装強盗対策推進会議において、情勢の変化に的確に対応し、より効果的な対策を継続的に進めていくことを目的とし、新たに「海賊等対策会議」を設置した。

海上保安庁は、海賊対策の強化を更に推進するため、20071月に海上保安庁警備救難部国際刑事課に「海賊対策室」を設置し、20072月には、巡視船「やしま」が、マラッカ・シンガポール海峡において、マレーシア、タイ海上保安機関と多国間での訓練では初めてとなる3カ国海賊対策連携訓練に参加した。

 

(2)アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP

  アジア地域における海賊問題に対処するため、海賊に関する情報共有体制と協力網の構築を通じて各締約国間の協力強化を図ることを目的としたアジア海賊対策地域協力協定は、20069月に発効した(20073月現在、締約国は14か国)。また、ReCAAPの下で情報共有センター(ISCInformation Sharing Center)がシンガポールに設置され、海賊行為等に対する情報の収集、分析、共有等を行うことを含め、同センターがアジア地域における海賊および海上武装強盗問題の権威としての地位を確立し、各締約国や海運業界において予防的対策に活用されている。

 

(3)アフリカ海域における海賊被害

  アフリカ海域における海賊事件発生件数は2005年から減少していたが、ソマリア沖およびナイジェリアを中心に、2006年の61件から2007年には120件に増加した。2007年に同海域において人質、身代金目的で誘拐された乗客・乗員は60人(200649人)、殺害された乗客・乗員は4人(20064人)となっている。日本関係船舶も乗組員が人質になるなどの被害があり、事件の凶悪化、人的被害が増加傾向にあると言える。

 

(4)海賊情報伝達訓練実施への協力

  海上保安庁によるアジア各国への巡視船派遣の際に公海上で実施される海賊情報伝達訓練には、当協会は、大型巡視船の派遣に併せて実施された海賊情報伝達訓練において、当協会会員の運航する船舶の参加について調整を行うなど、同訓練に協力を行った。

  訓練実績は次のとおりである。

  20069 :巡視船「りゅうきゅう」とVLCC(日本郵船運航)

200611月:巡視船「しきしま」とLNG船(川崎汽船運航)

200711月:巡視船「しきしま」とVLCC(商船三井運航)

 

 

以上