6・8 海上人命安全条約等の改正
2006年12月に開催されたIMO第82回海上安全委員会(MSC82)および2007年10月に開催されたMSC83において、次の条約等の改正が採択された。
1.MSC82
(1)1974年の海上人命安全条約(SOLAS条約)附属書の改正
以下のSOLAS条約附属書の改正が採択された。
第U-1章:バラストタンクの防食塗装性能基準の強制化、水密区画および復原性に係る全般的改正、旅客船の損傷時帰港能力要件の新設、機械と電気設備に関する代替設計および配置に関する一般規定の新設等
第U-2章:旅客船への「安全センター」の設置要件の新設、旅客船のキャビンバルコニーの安全強化
第V章 :救命艇の操作に関する安全対策の強化、救命設備の代替設計および配置に関する一般規定の新設
第]U章:附属書第U-1章に防食塗装性能基準の強制化を規定することに伴う形式改正
書式様式:長距離船舶識別追跡(LRIT)システムの搭載に関する証書様式の改正
同改正では、(i)バラストタンクの防食塗装性能基準の強制化等、緊急に実施する必要があるものについては2008年7月1日発効見込み、(ii)旅客船への「安全センター」の設置等準備に時間がかかるものについては2010年7月1日発効見込み、(iii)その他のものについては2009年1月1日発効見込みとなっている。
(2)SOLAS条約に基づく強制決議の採択・改正
(i)バラストタンク等の防食塗装に関する性能基準
バラストタンク等の防食塗装に関する性能要件が採択された。これは、上記に記載されるSOLAS条約の改正のうち、関連する部分が発効する日(2008年7月1日予定)から効力を生じる。
(ii)国際火災安全設備規則(FSSコード)の改正
持運び式泡消火器の技術基準の改正等を内容とするFSSコードの改正が採択された。旅客船の固定式火災探知警報システムの要件の改正については2010年7月1日に発効見込みであり、それ以外については、2008年7月1日発効見込みとなっている。
(iii)国際救命設備規則(LSAコード)の改正
救助艇の技術基準の改正等を内容とするLSAコードの改正が採択された。この改正は2008年7月1日に発効見込みとなっている。
(iv)国際液体化学薬品ばら積み船規則(IBCコード)の改正
ばら積み液体化学薬品の運送要件表(第17章)の全面改正等を内容とするIBCコードの改正が採択された。この改正は、2009年1月1日発効見込みとなっている。
(v)国際液化ガスばら積み船規則(IGCコード)の改正
ジメチルエーテルおよび二酸化炭素の運送要件の追加等を内容とするIGCコードの改正が採択された。この改正は、2008年7月1日発効見込みとなっている。
(vi)高速船安全国際規則(1994HSCコード、2000HSCコード)の改正
海上脱出装置(MES)に係る技術基準の改正等を内容とする1994HSCコードおよび2000HSCコードの改正がそれぞれ採択された。これら改正は2008年7月1日発効見込みとなっている。
(3)1966年の満載喫水線に関する国際条約の1988年議定書附属書Bの改正
同附属書Bのエディトリアルな修正を行うための改正が採択された。この改正は、2008年7月1日発効見込みとなっている。
(4)SOLAS条約の1988年議定書の改正
SOLAS条約のみならず、同条約の1988年の議定書についても、LRITに関する証書の様式の改正を行うことが必要とのわが方提案(MSC82/3/11)が認められ、会期中に同議定書の改正案が作成され、これが採択された。この改正は2008年7月1日発効見込みとなっている。
2.MSC83
(1)1974 年のSOLAS条約の改正
・附属書第W章改正事項:
GMDSSの移動衛星通信システムの提供に関するクライテリアの見直しに関連した改正が採択され、この改正は2009年7月1日発効見込みとなっている。
・附属書第Y章改正事項:
附属書第T章で定義される貨物および燃料油を積載する船舶に対し、MSDS(Material Safety Data Sheet:製品安全データシート:BLG12(2008年2月)において様式の見直しを実施することが併せて合意された。)をその油類の積載前に供与することが義務付けられた。この改正は2009年7月1日発効見込みとなっている。
・照射済核燃料等の国際海上安全輸送規則(INFコード):
MSC82において採択された水密区画および復原性に係る1974年SOLAS条約附属書第II-1章の全般的改正に伴う改正が採択された。この改正は2009年7月1日発効見込みとなっている。
(2)1974年のSOLAS条約の1988年議定書の改正
1988議定書付録の旅客船、貨物船、原子力旅客船および原子力貨物船に対する安全証書、貨物船に対する安全構造証書および安全設備証書の様式の改正が採択された。この改正は2009年7月1日発効見込みとなっている。