【資料3-4-1-3

16回アジア船主フォーラム 共同声明

2007529日、釜山

 

 

15回アジア船主フォーラム(ASF)は、2006528日〜30日、長野県軽井沢町で開催された。会合には、豪州、中国、台湾、香港、日本、韓国、アセアン(アセアン船主協会連合(FASA):インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの船主協会により構成)各船主協会の代表122名が出席した。日本船主協会の会長である鈴木邦雄氏が会合の議長を務めた。

 

冒頭、出席者は、会合の直前にインドネシア・ジャワ島で発生した地震による犠牲者に黙祷を捧げた。

 

1992年に東京で開催された第1ASF会合以降、ASFとその5つの‘S’委員会はその活動を通じ国際海運場裡で重要な地位を確立してきた。ASFがその結成以来着実に進歩してきたことを確認しつつ、会合は友好的な雰囲気の中で開催され、出席者は生産的な議論を行った。

 

会合は、アジア関連貿易が世界貿易の重要な割合を占めていることやアジア海運業の支配・運航船が世界商船隊の相当なシェアを構成していることを確認し、これに付随してアジア船主が世界海運の場で先導的な役割を担うという明確な責任があることを確認した。それゆえ、国際海運政策や規則に関し、関連組織と協力してアジア船主の声を発信するとのASFの役割を強化すべきであることが合意された。

 

このため出席者は、ASFの能力を増強するため将来的にASFの常設事務局を設立する強い意志を表明した。この強い意志を実現するため、今次ASF会合後速やかにワーキング・グループを設置し、規約・設置場所・財源など常設事務局の詳細を検討することが合意された。ワーキング・グループは、20075月に開催予定の第16ASF総会に常設事務局についての提案を行う。

 

出席者は、安全運航と環境保護は最優先の原則であることを認識し、そのための持続可能で実用的な最高水準の基準に向けて継続的に改善を重ねていく責任を確認した。

 

出席者は、船社間協定に対する独禁法適用除外制度は海運業界のみならず貿易業界全体にとって不可欠なものであることを確認し、変化するトレードの状況に適合する上で船社間協定が果たしている重要な役割について、荷主や政府などの理解を得るための努力を船社が継続すべきである点を強調した。

 

シッピング・エコノミックス・レビュー委員会(SERC

 

ASFは、第19SERC中間会合が2007228日に沖縄で開催されたことに留意した。芦田昭充委員長は、同会合の報告のうち以下の点を強調した。

 

ドライバルク/タンカー部門

ドライバルク部門に関して、2007年の市場は、特に中国をはじめとする順調な世界経済成長により、着実な拡大を続けるであろうことが期待された。2007年及び2008年には新造船引渡し予定が減少傾向になると見られていることから、需給バランスの改善が示されうる。タンカー部門については、将来の市況が、2010年までのシングルハル・タンカーのフェイズ・アウトが如何にスムーズに行われるのか、同フェイズ・アウトに関してどの程度の新規船腹が市場に投入されてくるのかに大きく左右されるであろうということが認識された。

 

定期船トレードの現状

太平洋トレードについては、貨物荷動き量の増加が見込まれており、2007年は全体的に見ればよりタイトな需給関係となることが期待される。出席者は、特に米国内輸送費を中心に引き続く高コスト状況に対し深い懸念を示した。アジア域内トレードに関し、ASFは、力強い中国経済が引き続きアジアの好調なコンテナ荷動きを支える原動力となるであろうことに留意した。これに関連し、ベトナムにおけるコンテナ市場の急成長がアジア域内トレードにもたらす追加的な好影響に特別な注目が示された。しかしながら、出席者は、他航路からの船腹カスケード効果により供給過剰が起こりうること、さらには特に燃料油価格をはじめとする高コスト状態が、船社にとってのマイナス要因となっていることに関し懸念を共有した。

 

アジアにおける荷主との関係

航路市況に関する荷主のより良い理解を得るために、出席者は荷主との良好な関係を促進することが不可欠であることを再確認した。この関連で、20066月と11月に東京で、日本政府関係者及び東京に拠点を置く荷主/船社の出席の下、「コンテナ・シッピング・フォーラム」が開催されたことが報告された。ASFは、アジアにおける荷主と船社間の建設的な関係を増強するため、対話に基づく最大限の努力を継続していくことで一致した。

 

定期船海運に対する独禁法適用除外制度

SERCメンバーは、オーストラリア・中国・香港・日本・シンガポールにおける競争法に関する最近の動きを留意した。しかしながら、EUが定期船同盟に対する包括適用除外の廃止を決定したことに懸念を表明した。出席者は、健全な海運業界と、増加する国際貿易需要を支えるために必要とされる投資能力とを維持するためには独禁法適用除外制度が不可欠であるというASFの長年の立場を再確認した。さらに、除外制度は貿易業界全体に利益をもたらすものである。各船社は、貿易を支える上で船社間協定が果たしている重要な役割について、政府や荷主など関係者の理解を得るための継続的な努力を行うべきであることが合意された。

 

ASFは、そのメンバー船協(特に韓国/日本/シンガポール各船協)が、欧州委員会およびその他関係機関に競争法包括適用除外制度の廃止に対し、反対を表明する意見書を提出したことに留意した。その後、韓国船協は欧州委員会より、同制度の主軸の一つであるコンソーシア規則はそのままの状態で、4056/86規則を削除する一方、代替案を準備する予定である旨の返信を受領した。また、ASFは、韓国(ASF議長として)/オーストラリア/日本各船協が、日本の公正取引委員会に同様の趣旨で意見書を提出したことにも留意した。

 

パナマ運河庁(PCA

パナマ運河庁(ACP)は、20072月、通航料値上げ案を発表した。提案された値上げ額は容認し難い高額なもので、特にコンテナ船・タンカー・自動車専用船のコストに重大な影響を及ぼすものと思われる。SERCでは、向こう3年間のパナマ運河通航料値上げ提案は、より長期間に分散して実施されるべきとの考えで一致し、現ASF議長(韓国船協会長)に対し、ASFを代表してACPに通航料値上げ案への強い反対を申し入れる意見書を出すよう求めることを決定した。ASFは、韓国船協が現ASF議長国船協として、ACPに意見書を39日付で提出し、同月14日の公聴会に出席したことに留意した。また、シンガポール/日本船協も、個別に意見書をACPに提出した。その後、ACP4月に改正案を発表した。これに関連し、韓国船協はASFを代表して、420日付でACPに追加意見書を提出し、同意見書はACP内の役員会で討議されるとの返答をACPから受領したことについても留意された。(パナマ内閣審議会は若干修正されたACP案を425日付で承認した。)

 

その他

最近のWTOの動向が報告された。会合ではドーハ・ラウンド交渉の再開に歓迎の意が示された後、海運業界における既存の自由貿易慣行を成文化するため、各出席者は、サービス貿易に関する一般協定(GATS)に海上輸送サービスを盛り込む重要性について引き続き訴えていくよう改めて要請された。また、会合は世界貿易に好ましい影響を与えるであろうベトナムのWTO加盟を温かく歓迎した。

 

アジアにおける自由貿易協定(FTA)と二国間のダイナミックな経済関係の拡大が、アジアの経済と荷動きに前向きの影響を与えていることが留意された。出席者は、こうした展開が引き続き促進されていくことへの期待感を確認した。

 

国際海上物品運送条約の新草案に関する最近の動向が報告された。同条約案は国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)で審議されており、主にコンテナ輸送における貨物の滅失や損傷に関する運送人の責任と賠償範囲に統一性を与えるためのものである。同条約案は、海上輸送とインダーモーダル輸送の両方を対象としている。出席者は、新条約の動向について細心の注意を払うよう要請された。

 

シップ・リサイクリング委員会(SRC

 

船員委員会(SC

 

航行安全および環境委員会(SNEC

 

船舶保険・法務委員会(SILC

 

ASFは、船舶保険・法務委員会の中間会合が2007417日に香港で開催されたことに留意した。同委員会のジョージ・チャオ委員長は、委員長報告のなかで次の問題に焦点をあてた。

 

船主の民事責任と金銭的保証に関するEU指令案

ASFは、欧州議会と欧州閣僚理事会で提案された船主の民事責任と金銭的保証に関する指令案の潜在的な影響について懸念を表明した。現在未発効の条約を批准するとした指令案への支持は容認するが、ASFが懸念しているのは、例えば、責任限度額まで最短の時間で被害者補償がなされることを確実にしているP&I保険の証書と責任制限の役割について混乱が生じ得ることである。またASFは、遺棄船員に関する提案は不明瞭で、新たに採択されたILO海事条約に委ねるのが最善の策とした。

 

しかしながら、ASFの最大の懸念は、指令案により国際海運をつかさどる保険及び法体系が非常に不安定な状態になることである。地域規制により過失の定義が地域毎に異なることにより生じる不安定要素は、全ての船舶が金銭的保証を保持する規定とあいまって、産業界全体を混乱させることになる。

 

海難残骸物除去条約

ASFは、つい最近ケニアの首都ナイロビで開催された海難残骸物除去に関する外交会議で新たな条約が採択されたことを歓迎した。ASFは、早急な問題として、締約国が発行する1通の保険証明書によって責任と補償に関する全てのIMO関連条約を証明できる共通モデル作成をIMO締約国へ促した。しかしながら、新たな条約の進展により、殆どの海難残骸物が発生する領海で、その除去に関する統一した責任体制が創設されそうにないことを遺憾とした。

 

カナダ渡り鳥法

ASFは、カナダ法案C-15の採択によるカナダ渡り鳥法(1999)の改正に留意し、カナダ船主が表明した懸念を共有した。この点について、ASFは、カナダ政府に対し法律の改正を再考し、船員の人権に影響を及ぼす条文を取り消すことを検討するよう再度促した。

 

船舶に起因する海洋汚染に対する指令

ASFは、船舶からの故意による油濁の全事例について改めて遺憾の意を表すとともに、既存船の運航者の責任と義務を喚起し、また新造船および既存船に対するエンジンルームの油水管理システムのガイドライン改訂に尽力した様々な業界団体と国際機関の活動を支持した。ASFは、200741日迄にEU加盟国で採択されることとなっていた船舶に起因する汚染のEU指令について、海運関係団体の連合体が行った訴訟の進捗状況に留意し、不慮の油濁事故へ刑事罰を課すとした指令の潜在的な影響について引き続き懸念を表明した。ASFは、EU加盟国が指令を採択にあたり直面するであろうMARPOL条約および国連海洋法条約(UNCLOS)の条文と指令との明らかな矛盾の問題について欧州各国の注意を喚起した。

 

 

 

 

 

次回会合

韓国船主協会のD. C. チャン会長から、第16ASF会合は20075月に韓国で開催するとの発表があった。開催日と場所は追って発表される。

 

出席者は、軽井沢での第15ASF会合における優れた手配と鈴木邦雄議長の能率的な議事運営に謝意を表した。

以上

 

:

アジア船主フォーラム(ASF)は、アジアの地域/国からの13船協(豪州、中国、台湾、香港、日本、韓国、アセアン(インドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム))から構成されている。ASFの目的は、アジア船主業界の利益を促進することである。ASF年次総会の間には、5-S委員会(シッピング・エコノミックス・レビュー、船員、シップ・リサイクリング、航行安全および環境、船舶保険・法務委員会)により継続した作業が遂行されている。ASFの船主および船舶管理者は、世界商船船腹の約40%を支配・運航していると推定されている。

 

************************