【資料3-4-2-2

 

2007228日、沖縄

200735日東京で発表)

了解事項

アジア船主フォーラム(ASF)

シッピング・エコノミックス・レビュー委員会(SERC

19回中間会合(沖縄)にて採択

        

 

 

アジア船主フォーラム(ASF)シッピング・エコノミックス・レビュー委員会(SERC)第19回中間会合は、ASFメンバーであるアセアン、中国、台湾、香港、日本、韓国の各船主協会から19名の代表が出席し、2007228日に沖縄で開催された。出席者名簿は添付の通り。

 

1. 世界経済の概要

出席者は、世界経済、特に米国及びアジア経済の動向について意見交換した。会合では、2006年第4四半期に3.5%*GDP成長を記録した米国経済は、住宅市場の鈍化にもかかわらず、安定した個人消費と資本投資を背景に2007年も緩やかながら持続的なペースで成長を継続するとの予測に注目した。東アジアの状況については、しっかりとした中国経済を主な要因とした力強い経済成長が続くであろうと予測された。これに関連し、会合は、ベトナムのWTO加盟がアジア経済に更なる前向きな効果をもたらすであろうとの見方で一致した。

 

* 2007130日発表の公式速報値

 

2. ドライバルク/タンカー部門

1) ドライバルク部門については、中国向け鉄鉱石をはじめとする荷動きの着実な増加を背景として、2006年の市況は概ね好調だったことが報告された。2007年のドライバルク市場は、順調な世界経済の成長と、特に中国での旺盛なドライバルク貨物需要により、着実な拡大を続けるであろうとの期待が示された。会合は、同マーケットが新造船引渡しのピークとなった2006年を持ち堪え、更に2007年及び2008年には同引渡し予定が減少傾向になると見られていることから、需給バランスの改善が予想されることを認識した。

 

2) タンカー部門については、原油価格が反落した2006年秋以降、市況が例年になく低調傾向にあることが報告された。しかしながら、出席者は中国及びその他新興地域における輸送需要の伸びにより、市況は改善するであろうとの見解で一致した。また、将来の市況は、2010年までのシングルハル・タンカーのフェイズ・アウトが如何にスムーズに行われるのか、そして、良好な地政学的状況が条件とはなるものの、同フェイズ・アウトに関連してどの程度の新規船腹が市場に投入されてくるのかに大きく左右されるであろうということが認識された。

 

3. 定期船部門

1) 会合は、太平洋トレードでは貨物量の二ケタ成長にも関わらず、低迷した運賃に加え、急騰した燃料費、高額の米国内輸送費と港湾費用等のコスト増により、2006年はほとんどの定航船社が業績不振だったことにつき、遺憾の意を共有した。2007年の市況見通しについては、米国の良好な経済動向を勘案すれば、東航の荷動き量は9%から12%増加すると見られる一方、実際に利用可能な船腹量は同荷動き量と同等か、もしくはそれを下回る程度の増加になるものと思われ、よりタイトな需給関係となることが期待される。一方、特に米国内輸送費を中心に引き続く高コスト状況に対し、深い懸念が示された。会合はこのような状況を踏まえ、太平洋トレードに従事する全てのCEOは、高品質サービス維持のため、運賃の修復と運航コスト上昇分回収の必要性に関する荷主の理解改善に向け、最大限の努力を継続すべきであるという共通理解に達した。

 

2) アジア域内トレードに関しては、旺盛な貿易量が維持されるであろうこと、そして力強い中国経済が引き続きアジアの好調なコンテナ荷動きを支える原動力となるであろうことが認識された。これに関連し、ベトナムにおけるコンテナ市場の急成長がアジア域内トレードにもたらす追加的な好影響に特別な注目が示された。一方、出席者は低い用船料と他航路からの船腹カスケード効果により供給過剰が起こりうることに関し懸念を共有した。また、特に燃料油価格をはじめとする高コスト状態が船社にとってのマイナス要因となっていることが留意された。このような状況を踏まえ、会合は、現状の運賃水準は近年のコスト上昇による損失を補填できる程度のものではないこと、従って十分なサービスの維持と高まる需要への対応に必要とされる設備投資に向け、認可された航路協定における更なる運賃修復に向けた努力が極めて重要であるとの見解で一致した。

 

3) 出席者は、航路市況に関する荷主のより良い理解を得るため、荷主との良好な関係を促進することが不可欠であることを再確認した。この点に関する船社努力の一例として、日本政府関係者及び東京に拠点を置く荷主/船社の出席の下、20066月と11月に東京で開催された「コンテナ・シッピング・フォーラム」の模様が報告された。SERC会合は、アジアにおける荷主と船社間の建設的な関係を増強するため、対話に基づく最大限の努力を継続していくことで一致した。

 

4) 更にCEOは、太平洋及びアジア域内の両航路において、自社、とりわけ各地域の営業部門に対し、コストを正確に反映し、かつ経済的に持続可能な運賃政策に基づいて指揮していくよう要請された。また、実際の市況と予測データとが頻繁に食い違うことによる無用の混乱を避けるべく、海運業界は第3者の市況予測に対し慎重に対応すべきことが指摘された。

 

4. 定期船海運業に対する独禁法適用除外制度

競争法に関連し、豪州・中国・香港・日本・シンガポール・EUにおける最近の動きが報告された。SERCメンバーは、大多数の国における好ましい動きに留意する一方、EUが定期船同盟に対する包括適用除外の廃止を決定したことに懸念を表明した。出席者は、健全な海運業界と、増加する国際貿易需要を支えるために必要とされる投資能力とを維持するためには、独禁法適用除外制度が不可欠であるというASFの長年の立場を再確認した。この長年に亘り築き上げられてきた市場安定化メカニズムを廃止することは、未曾有の貿易成長下において投資やサービスを不十分なものとする危険性があり、除外制度はまさに貿易業界全体に利益をもたらすものである。各船社は、貿易を支える上で船社間協定が果たしている重要な役割について、政府や荷主など関係者の理解を得るための継続的な努力を行うべきであることが合意された。

 

5. その他

1) パナマ運河庁(PCA)が通航料値上げ案を最近発表したことが報告された。第3の閘門建設資金を確保する手段として、全船種を対象に2007年から2009年に亘り、1年当たり平均約10%の値上げが提案されている。提案された値上げ額は容認し難い高額なもので、特にコンテナ船・タンカー・自動車専用船のコストに重大な影響を及ぼすものと思われる。出席者は、PCA提案は明らかに船社の事業計画に大きな影響を与えるものであるとの重大な懸念を表明した。一方、スエズ運河庁が20073月に相当な通航料値下げを公表するとの情報を踏まえ、パナマ運河の代替ルートの採算性が真剣に検証されることになろう。会合では、向こう3年間のパナマ運河通航料値上げ提案は、より長期間に分散して実施されるべきとの考えで一致した。議論の結果、SERCは現ASF議長(注:韓国船協会長)に対し、ASFを代表してPCAに通航料値上げ案への強い反対を申し入れる意見書を出すよう求めることを決定した。

 

2) 最近のWTOの動向が報告された。会合ではドーハ・ラウンド交渉の再開に歓迎の意が示された後、海運業界における既存の自由貿易慣行を成文化するため、各出席者は、サービス貿易に関する一般協定(GATS)に海上輸送サービスを盛り込む重要性について引き続き訴えていくよう改めて要請された。また、会合は世界貿易に好ましい影響を与えるであろうベトナムのWTO加盟を温かく歓迎した。

 

3) アジアにおける自由貿易協定(FTA)と二国間のダイナミックな経済関係の拡大が、アジアの経済と荷動きに前向きの影響を与えていることが留意された。出席者は、こうした展開が引き続き促進されていくことへの期待感を確認した。

 

4) 国際海上物品運送条約の新草案に関する最近の動向が報告された。同条約案は国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)で審議されており、主にコンテナ輸送における貨物の滅失や損傷に関する運送人の責任と賠償範囲に統一性を与えるためのものである。同条約案は、海上輸送とインダーモーダル輸送の両方を対象としている。出席者は、新条約の動向について細心の注意を払うよう要請された。

 

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アジア船主フォーラム(ASF)シッピング・エコノミックス・レビュー委員会(SERC)は、アジアの船社CEOが海運に関連するマクロ経済的な貿易情報やその動向を検討する場である。SERCの目的は、入手可能な経済データを考察し、主要貿易問題の展望を共有することにより、経営意思決定の質を高めることである。

 

 

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*本件に関する問い合せ先:

日本船主協会 企画部 中村/笠原(Tel03-3264-7180