【資料3-4-2-5

2007417

アジア船主フォーラム(ASF)船舶保険・法務委員会

12回中間会合 共同声明

 

アジア船主フォーラム(ASF)船舶保険・法務委員会(以下、委員会)第12回中間会合が、2007417日(火)、香港において開催された。

 

会合には、中国、台湾、香港、日本、韓国の各船主協会およびアセアン船主協会連合会を代表してインドネシア、フィリピン、シンガポール、ベトナムの各船主協会が参加した。

 

委員会は、欧州議会と欧州閣僚理事会で提案された船主の民事責任と金銭的保証に関する指令案の潜在的な影響について懸念を表明した。現在未発効の条約を批准するとした指令案への支持は容認するが、委員会が懸念しているのは、例えば、責任限度額まで最短の時間で被害者補償がなされることを確実にしているP&I保険の書類と責任制限の役割について混乱が生じ得ることである。また委員会は、遺棄船員に関する提案は不明瞭で、新たに採択されたILO海事条約に委ねるのが最善の策とした。

 

しかしながら、委員会の最大の懸念は、指令案により国際海運をつかさどる保険及び法体系が非常に不安定な状態になることであった。地域規制により過失の定義が地域毎に異なることで生じる不安定要素は、全ての船舶が金銭的保証を保持する規定とあいまって、産業界全体を混乱させることになる。

 

委員会は、UNCITRAL(国連国際商取引法委員会)作業部会の新たな国際海上物品運送法条約の検討状況に留意し、ICSBIMCO及び国際P&Iグループが業界を代表して困難かつ詳細な作業を行っていることに感謝を示した。しかしながら委員会としては、条約草案の検討作業が終了し現行法と新条約案の比較が為されるまでコメントすることは留保した。

 

委員会は、アテネ条約2002年改定議定書がもたらす潜在的な影響について前回会合に引き続き議論を行い、戦争危険/テロおよび保険総額といった2つの問題に解決が見られたことに留意した。委員会は、MARSH(注:保険ブローカー)が条約の下でテロ(戦争)リスクへの適切な保険カバーの提供を申し出たことに留意した。また委員会は、blue card(注:クラブが発行する保険締結の証明書)発行のための解決案に留意した。これは、条約が適用される管轄区で事業を行うために、条約で要求される金銭的補償の証書を締約国が発行できるようにするものである。委員会は、大型客船の事故がIGシステム(注3IG加盟クラブによる再保険機構)及び客船以外の船主に及ぼす影響に対処するため、各P&IクラブがIGシステムの中で対応を図ったことに留意した。

 

委員会は、長きに渡り未解決であった海難残骸物除去に関する条約案の議論が終息をむかえていることを歓迎した。しかしながら、殆どの海難残骸物が発生する領海で、その除去に関する統一した責任体制が創設されそうにないことを遺憾とした。

 

委員会は、カナダ法案C-15の採択によるカナダ渡り鳥法(1999)の改正に留意し、カナダ船主が表明した懸念を共有した。この点について、委員会は、カナダ政府に対し法律の改正を再考し、船員の人権に影響を及ぼす条文を取り消すことを検討するよう再度促した。

 

委員会は、クオリティシッピング推進策に関する国際油濁補償基金の第4作業部会の進捗状況に留意し、前向きな対策が検討されていることに対して改めて支持を表明した。

 

委員会は、船舶からの故意による油濁の全事例について改めて遺憾の意を表すとともに、既存船の運航者の責任と義務を喚起し、また新造船および既存船に対するエンジンルームの油水管理システムのガイドライン改訂に尽力した様々な業界団体と国際機関の活動を支持した。

 

委員会は、200741日迄にEU加盟国で採択されることとなっていた船舶に起因する汚染のEU指令について、海運関係団体の連合体が行った訴訟の進捗状況に留意し、不慮の油濁事故へ刑事罰を課すとした指令の潜在的な影響について引き続き懸念を表明した。

 

委員会の次回会合は、2007529日、ASF16回総会に先立ち韓国で開催される。