2・3 油汚染事故および海上災害

 

231 有害液体物質(HNS)の汚染事故への対応体制

OPRC-HNS議定書」* 20076月の発効に先立ち、同議定書の内容をわが国の国内法制に取り入れるため、「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」(海防法)の一部が改正され、200741日に施行された(一部は200841日施行)。

これにより、ガソリン、灯油などの揮発油およびベンゼン、キシレンなどの有害液体物質(HNS)をばら積みで輸送し、特定海域(東京湾、伊勢湾、大阪湾を含む瀬戸内海)を航行する船舶の所有者に対し、HNS防除資機材の備え付けと要員の確保等が義務付けられることとなった。

これら防除資機材の備え付けや要員の確保については、海上災害防止センター(以下、センター)などの防除業者への委託が認められていることから、当協会は、センターとの委託契約やHNS事業体制等について検討を行い、関係者と意見交換を行った。

その後、センターはHNS防除体制の整備を行い、20084月からHNS防除資機材・要員配備および緊急措置サービスを開始した。船舶所有者はセンターのホームページ上から「HNS資機材要員配備・緊急措置業務」を申し込み、所定の料金を振り込むと、同センターが当該船舶所有者に代わってHNS資機材と要員を特定海域において確保していることを証明する「HNS資機材要員配備証明書」が発行される。

初年度となる2008年度(平成20年度)の同証明書の発給実績は、2,180件(外航1,484件、内航696件)となった。

なお、センターでは、資機材の抜本的整備、要員の訓練など防除措置能力のさらなる充実強化を進めるため、「海上災害対応能力レベルアップ計画」を策定し、わが国の排出油等防除体制の向上を図る予定としている。

 

*OPRC-HNS議定書:正式名称は「2000年の危険物質及び有害物質による汚染事件に係る準備、対応及び協力に関する議定書」。同議定書は、1995年に発効した「1990年の油による汚染に係る準備、対応及び協力に関する国際条約(OPRC条約)」の対象を有害危険物質に拡大したもの。

 

232 海上災害防止センターの運営

1)組織形態の見直し

197610月に認可法人として設立された海上災害防止センター(以下、センター)は、船舶所有者に義務付けられている油防除資機材の備え付けや特定海域における油回収船の配備業務を、船舶所有者からの委託によって実施している。

同センターは、20016月に成立した「特殊法人改革基本法」に基づき、200310月に独立行政法人に移行したが、その後、行政改革の一環として独立行政法人の全面的な見直しが行われた結果、200712月に「独立行政法人整理合理化計画」が閣議決定された。同計画により、センターは「以下の3点の枠組みを維持した上で、独立行政法人の業務としては廃止し、法令に基づき特定分野の業務を行うものとして国により指定された公益法人の業務として実施する方向で検討」することとされた。

・緊急時における海上保安庁長官の指示等に基づく確実な排出油等の防除措置の実施

・上記に要した費用のうち、事故船舶所有者等から徴収できない分についての国費による補填

 ・防災基金への国の関与

これにより、センターの組織形態は変わるものの、引き続き従来同様の業務が実施されることとなった。

また同計画では、2010年度(平成22年度)末までに新組織移行に関する必要な措置を講ずることとされている。

 

一方、「公益法人制度改革関連3法案」が20065月に成立したことを受け、2008年(平成20年)12月に実施された「公益法人制度改革」により、従来の公益法人は5年以内に「公益社団法人/公益財団法人」または「一般社団法人/一般財団法人」のいずれかを選択し、前者を選ぶ場合には公益認定を受けなければならないこととなった。

センターにおいては、現行の海上防災関連事業に支障をきたすことの無いよう、組織を運営する上で「公益」「一般」のいずれを選択するのが妥当か、上述の独法からの組織変更も勘案しつつ検討が行われており、当協会もこれら検討にかかわり意見反映に努めている。