6・2 海賊対策
6・2・1世界における発生件数
国際商業会議所(International Chamber of
Commerce = ICC)の下部組織である国際海事局(International
Maritime Bureau = IMB)の海賊情報センター(クアラルンプール)の年次報告によれば、全世界における2008年の海賊事件(未遂事件も含む)の報告件数は293件で、2007年より30件、約11.4%増加し、2007年に引き続き増加傾向となった。
地域別発生件数を見ると、アフリカ189件、東南アジア55件、インドおよび周辺国23件が続いている。東南アジアの海賊事件の多くはインドネシア(43件)で発生している。マラッカ海峡は、2006年11件、2007年7件、2008年2件と減少傾向が続いている。
また、殺害、暴行、傷害および人質・誘拐等に巻き込まれた乗組員の数は2007年433人から2008年1011人と578人もの増加となった。内訳を見ると、身代金要求目的の誘拐が63人から42人に、乗組員の傷害が35人から32人とそれぞれ減少したのに対し、海賊による殺害が件数が5人から11人に、人質が292人から889人へと増加した。(資料6-2-1参照】
6・2・2アフリカ海域における海賊被害
アフリカ海域における海賊事件発生件数は2005年から減少していたが、アデン湾における海賊事件が2007年13件から2008年92件に急増した。一方、ソマリア沖東方海域は2007年31件から2008年19件に減少、ナイジェリアでは2007年42件から2008年40件とほぼ横ばいの推移であった。アフリカ海域全体としては2007年120件から2008年189件に増加した。2008年に同海域において人質、身代金目的で誘拐された乗客・乗員は42人(2007年60人)、殺害された乗客・乗員は4人(2007年4人)となっている。日本関係船舶も乗組員が人質になるなどの被害があり、事件の凶悪化、人的被害が増加傾向にあると言える。
6・2・3我が国関係船舶の発生件数
国土交通省海事局は、2008年におけるわが国関係船舶(邦船社が所有、運航、用船している外航船舶)に対する海賊事件について発表した。その概要は以下のとおりである。
@発生件数
我が国関係船舶が海賊に襲われた発生件数は2007年2件から2008年12件に増加した。
(船籍別内訳):日本籍船2隻、パナマ籍7隻、香港籍1隻、アンティグア・バーブーダ籍1隻、ドイツ籍1隻 計12隻
A発生海域
地域別に見ると、インドネシア周辺海域を中心に東南アジア海域で5件発生した。また、インド周辺海域で2件、アフリカ(アデン湾、タンザニア)で3件(*1)発生している。
(*1)国際海事局(IMB)が公表した海賊事件報告書に基づき、当協会が集計したところ、アデン湾における我が国関係船舶の海賊発生件数は12件であった。
6・2・4海賊情報伝達訓練実施への協力
海上保安庁によるアジア各国への巡視船派遣の際に公海上で実施される海賊情報伝達訓練において、当協会は、当協会会員の運航する船舶の参加について調整を行うなど、同訓練に協力した。
訓練実績は次のとおりである。
2008年11月:巡視船「しきしま」と練習船(商船三井運航)
2008年12月:巡視船「しきしま」とLNG船(日本郵船運航)