6・3 海上交通安全対策

 

6・3・1 こませ網漁業安全対策

瀬戸内海備讃瀬戸海域では、「こませ網」漁業の盛漁期となる例年2月から6月の間に、海上交通安全法に基づき船舶の通航路として定められた航路の可航幅が漁具や漁船により狭められ、場合によっては全面閉塞という事態が発生している。その結果、通航船舶はそれらを避けるため航路外あるいは定められた通航航路と反対側の航路の通航を余儀なくされ、浅瀬への乗り揚げや他船との衝突が発生しかねない非常に危険な状況となっている。このため、当協会は、関係省庁等に対し航行船舶の安全を確保するよう要望しているほか、備讃瀬戸の航行安全を関係者間で協議・検討する委員会に参画し、同海域の航行安全に向け取り組んでいる。(資料6-3-1参照)

 

<巨大船の避航状況(2008年第六管区海上保安本部の調査結果)>

航路閉塞回数(可航幅300m未満): 506回(2007348回)

巨大船の避航回数: 93回(200754回)

 

1.航行安全への取り組み

当協会は、内海水先人区水先人会をはじめ、関係海事団体(日本船長協会、日本水先人連合会、日本旅客船協会、全日本海員組合、日本内航海運組合総連合会)と協議のうえ、「こませ網」漁業盛漁期間中における安全対策を策定し、その実施について会員会社に協力を求めた。さらに、同安全対策に基づく措置として、同漁業盛漁期間中に毎日、備讃瀬戸東航路の巨大船航行予定を漁業関係者へ周知した。

また、関係海事団体とともに、2008223日に海上保安庁に対して、大型船の航行安全を確保するため、航路内における可航幅300mの確保、こませ網漁船操業状況情報の迅速な提供等を内容とする要望書を提出した。さらに、水産庁(223日)、第六管区海上保安本部(33日)、香川県農政水産部(34日)、高松海上保安部(34日)および備讃瀬戸海上交通センター(34日)を訪問し、安全確保への協力を要請するとともに、種々意見交換を行った。

なお、当協会は、瀬戸内海海上安全協会が現地において定期的に開催している備讃瀬戸海上安全調査委員会および備讃瀬戸海上交通調査委員会にも出席し、漁業従事者を含む関係者へ航行船舶の安全確保の要請を直接行った。このほか、同協会の実施するこませ網漁船体験乗船に船社の参加を広く募り、船社に対してもこませ網漁業が航路航行船舶に及ぼす影響について実情把握すべく協力している。

 

2.漁業盛漁期間中の航行安全対策の実施結果

 関係海事団体が自主的に取り組んでいる航行安全対策の実施結果は次のとおりである。

(1)備讃瀬戸東航路航行船舶のうち進路警戒船を自主配備した隻数

(海上交通安全法の定めるものを除く巨大船)

期間:2008227日〜820

西航船123隻、東航船158

(2)備讃瀬戸東航路の東航船のうち標識として曳船を配備した隻数

   (礼田埼沖に水路限界表示と操船補助船を兼ね大型曳船を配備)

期間:2008227日〜820

水島向け5隻、福山向け4

(3)備讃瀬戸東航路への入航調整を実施した喫水16mを越える船舶および大型危険物積載船の隻数

該当日13日間で対象船舶は8

(4)各港からの出港時間の調整を実施した隻数

水島港18隻、坂出港6

(5)来島海峡航路を経由して西航した巨大船

62

(6)こませ網操業による航路閉塞によって航行を取り止めた船舶

    2

(7)こませ網に関連して発生した事故

    安全対策期間中に4件の漁具損傷が発生した。

 

632 新交通ビジョン−海上交通の安全確保に向けての新たな展開

わが国における海難隻数、海難に伴う死者・行方不明者等は、様々な海難防止活動を展開しているものの、横ばい傾向で推移し、毎年貴重な人命・財産が失われている。今後も船舶の大型化・高速化の進展、外国籍船の増加、内航船舶における高齢化・厳しい労働環境、プレジャーボート免許保有者の増加等により潜在的な海難のリスクが高まっていくことが予想される。

2007720日施行された海洋基本法においては、国の責務のひとつとして、効率的かつ安定的な海上輸送の確保および海洋の安全の確保のために必要な措置を講ずることを求めている。

これに基づき、2007828日、国土交通大臣は安全性と効率性が両立した船舶交通環境の維持・向上を図るため、新たな船舶交通安全政策の方向性および具体的施策について、交通政策審議会へ諮問した。

同審議会は、2008310日に海事分科会を開催し、具体的課題解決のための2008年から5年間の重点施策をとりまとめ、同審議会は2008年6月25日、国土交通大臣に答申を行った。

 

<今後5年間の重点施策の骨子>

1)海難分析・対策立案機能の強化

2AISの整備等を踏まえた航行安全対策・効率性の向上

3)地域特性に応じたきめ細かな海難防止活動の推進

4)特性を活かした安全情報の提供

5IT等の最新技術を活用した安全対策の推進

6)航路標識の整備、管理のあり方

 

答申後、海上保安庁は、航路内の追い越しの禁止、最低速力の設定(来島海峡)、新たな港内交通管制の導入といった海上交通安全法および港則法の改正案を策定し、2008年開催の国会に提出することとしている。