82 内航海運に係る諸問題への対応

 

821 内航船員問題不足問題

内航船員は、現在5割程度が50歳以上で、今後10年で毎年2,000名程度の退職者が予想され、船員教育機関卒業生の内航就職者数も業界の求人数に及ばないという状況となっている。また、内航海運における船員需要と船員数の需給ギャップは、海事局試算によると5年後では約1,900人、10年後では約4,500人の不足が予測される。

内航部会では、これまで内航海運/教育機関関係者等と各種会合を通じて、同問題に関する解決策等について鋭意検討を重ねるとともに、日本内航海運組合総連合会、海事振興連盟など関係方面と協調し、国政へ反映していくこととしている。(8-2-4参照)

また、海上運送法および船員法の一部を改正する法律が平成20530日に成立、717日に施行され、安定的な国内輸送の確保を図るための施策の一つとして、内航海運事業者を中心とした船員の確保育成のための「船員計画雇用促進等事業」による助成策などが措置されたため、728日には内航部会メンバーを対象に、国交省海事局幹部を招き、同事業内容についての説明及び意見交換会を行った。(同事業の概要については84参照)

 

822 内航船員対策に係る九州地区での諸活動

九州地区における各種船員対策については、国土交通省九州運輸局や地元海運関係団体で構成する九州地区船員対策連絡協議会(※)が中心となり活動しているが、今年度から当協会九州地区船主会(議長:鶴丸海運 鶴丸社長)、内航部会(部会長:栗林商船 栗林社長)もこれに参画し、九州方面での諸活動を活発化することとなった。

具体的には、平成21312日の海上自衛隊佐世保地方総監部における「海事セミナー」への参加(九州地区船主会議長会社の鶴丸海運から講師)、また、平成217月上旬予定の「海技関係教育機関との意見交換会」、8月予定の「地元小中学校の社会科担当の先生方を対象とした乗船セミナー」など各種事業に協力する事を予定している。

 

※九州地区船員対策連絡協議会

九州船対協は、船員不足議論が活発化した平成2年に九州地方海運組合連合会(九海連)、全国内航タンカー海運組合西部支部(内タン西部支部)、国土交通省九州運輸局を構成メンバーとして設置【海技教育機構(唐津、口之津海上技術学校)も加盟予定】している。九州運輸局が取組む九州域内の内航船員不足問題の対策等については、九州船対協を母体として活動している。

なお、このような船員対策連絡協議会の位置付けについては、地域毎の諸問題を国土交通省(本省)が直接関与して対応する事ではなく、各地域の協議会で鋭意対応することとして、全国的規模で各地域において組織化されている。

 

823 シップリサイクル条約に係る内航船を海外売船する場合のインベントリ作成義務について

平成215月採択予定のシップリサイクル条約では、外航船のみならず、国際総トン500GT以上(*)の船舶であれば内航船も対象となり、これを海外売船する場合には、インベントリ(有害物質一覧)の保持が義務付けられるため、その対応が必要となる。また、同条約は早ければ2012年にも発効する見込みである。このため、内航部会では、将来的に内航船舶を海外売船する場合の諸問題などについての情報の把握のため、3月9日、国土交通省海事局船舶産業課国際業務室長加藤光一殿を招き、説明会を開催した。

今後は、同条約批准に伴う国内法整備に向けた作業動向や国内規制の可能性などについても注視していくこととした。【同条約については、27 参照】

*)=国内総トン数であれば350GT程度以上が該当する可能性あり。

 

824 海事振興連盟の会合への参画

当協会が海運業界団体として加入している超党派議員で構成する海事振興連盟(会長:中馬弘毅衆議院議員)では、これまで今治、広島、神戸、長崎、大分、大阪と6回にわたり各地域においてタウンミーティングを開催し、地元選出の国会議員と海事産業及び関係諸団体、教育・研究機関がそれぞれかかえるテーマについて意見交換を行い、所要の目的実現のための諸施策等について、提言をとりまとめるなど国政へ反映させる活動を行っている。

内航部会では、都度、これら会合の機会に内航業界としての次の通り意見反映を行っている。

@    2008419日(土)の大分の会合では、「造船業界の技能・技術の伝承」、「海運業界の人材育成」等について意見交換を行い、同連盟「大分決議」【資料8-2-4-18-2-4-2参照】を取りまとめた。同会合では、水産系教育機関から本科(水産系高校3年間でのカリキュラム)卒業予定の生徒を対象とする求人は少なく、海事産業への就職になかなか結びつかない現状とその対応策の検討について意見があった。また、九州地方海運組合連合会木許会長からは、内航船員不足問題として、749総トン未満の小型船では60歳前後の高齢化した船員が多数を占め、近い将来、船員不足で船が止まる事を危惧するとともに、行政において適正な指導と支援をお願いしたい旨、意見が出された。

A    20081115日(土)の大阪の会合では、「これからの日本、海に足場を」と題して海事産業の振興および国政全般に関し意見交換を行い、同連盟「大阪決議」【資料8-2-4-38-2-4-4参照】を取りまとめた。内航海運業界からは大阪海運組合 藤原理事長から「内航海運の重要性についての国民の理解」「6級海技士免状の早期取得」「船員確保を実行するためにも運賃・用船料の適正化」などについて意見が出された。

 

 

資料8-2-4-1

海事振興連盟『大分タウンミーティング』 主な参加者

 

《国会議員》

主催 衛藤 征士郎 衆議院議員 (海事振興連盟 副会長兼事務総長)

岩屋   毅 衆議院議員

重野  安正 衆議院議員

吉良  州司 衆議院議員

広津  素子 衆議院議員

礒崎  陽輔 参議院議員 

《来賓関係》

臼杵市長           後藤  國利 殿

大分県副知事         平野   昭 殿

長崎県副知事         藤井   健 殿

大分県議会議員        志村   学 殿

国土交通省海事局長      春成   誠 殿

国土交通省大臣官房技術審議官 染矢  隆一 殿

国土交通省九州運輸局長    大黒 伊勢夫 殿

 

《発言者》

1.日本の造船業を活性化させるための教育・人材育成のあり方について

九州大学大学院工学研究院海洋システム工学部門

教授  新開 明二 殿

2.造船業界の技能・技術の伝承について

大分地域造船技術センター   会長  福嶋 人 殿

3.商船高等専門学校の高度化再編について

弓削商船高等専門学校     学校長 落合 敏邦 殿

4.水産・海洋高等学校の現状

大分県立海洋科学高等学校   教頭  児玉 博和 殿

5.内航船員不足問題について

九州地方海運組合連合会    会長  木許 作太 殿

6.外航海運業の現状と課題

日本船主協会         副会長 飯塚  孜 殿

7.外航オーナー会社が直面している船員確保の現状

外航オーナーズ協会      副会長 林  忠男 殿


資料8-2-4-2

平成20419

海事振興連盟

海事振興連盟 大分決議

 

 ここ大分は、瀬戸内海の西に位置し、豊後水道により外海につながる交通至便の地であり県土の南部はリアス式海岸で水深深く良港に恵まれ、海運業、造船業など海事関連産業が隆盛な地である。

 本日、海事振興連盟 大分タウンミーティングを開催し、地域海事関連産業振興のために「海事産業の人材育成」、特に「造船業界の技能・技術の伝承」、「海運業界の人材育成」等をはじめとして「旅客フェリー・離島航路の振興」、「内航海運及び外航海運業の現状と課題」について議論した。

 当連盟としては、これらの議論を踏まえ、地域海事関連産業の振興を図るために、

1.   造船関係については、

(1) 団塊世代の退職に伴う、大規模な世代交代の到来により、中堅・若手社員を中心とした人材確保と技能・技術の伝承の対応が急務

(2)造船産業集積地域の特性を活かした専門高校における人材育成

(3)外国人研修・技能実習制度の規制緩和(期間延長と受け入れ枠拡大)

(4)環境規制の強化に伴う設備投資に対する支援措置

2.海事関連の教育機関については、

(1)     水産・海洋系高校における教育の一つである海技士養成は、内航船員の確保に重要な役割を担っているため、水産・海洋系高校の教育の一層の促進と充実

(2) 商船高等専門学校の学生の進路先である海事産業の魅力化

3.旅客フェリー、離島航路については、

燃料費の高騰に伴うコスト増への対応、特に離島住民のライフラインの維持

4.内航海運については、

(1) 船員不足に対応した人材の確保・育成の推進

(2) 内航船の代替建造促進

(3) 内航海運暫定措置事業の円滑かつ着実な実施

(4) 高騰した燃料油の運賃等への円滑な転嫁

5.外航海運については、

トン数標準税制関係の法案の早期成立

 

といった施策等の推進が、極めて重要な課題であることを認識し、関係者一体となってその実現に向けた支援に取り組んでいく。

 また、平成21年3月末に期限を迎える「船舶の特別償却制度」について、外航海運の国際競争力の確保、内航老朽船の代替促進及び内航海運事業者・国内旅客船事業者の経営基盤強化はもとより、造船業等他の海事関連産業や他の産業にもその効果は及んでいるものであり、本制度の維持に取り組んでいく。

また、海事関連産業の振興、特に人材確保のためには、海事活動と、これを支える海事産業の重要性を国民に訴え、世代を問わず広く国民が海や船に親しむ機会を増加させることが重要であり、それを促進する具体的な広報活動を強化する必要がある。加えて、国、自治体、産業界、教育機関等の関係者が連携し、地域の特性を活かした「海のまちづくり」の推進を図っていく。

 また、現在工事中の東九州自動車道の早期完成は、港湾の整備とともに、広域の物流がなされ、企業立地が積極的に推進されることとなり、海事産業の更なる発展に大きく寄与するものである。

当連盟としては、このような活動に対し必要な協力を惜しまない。

 

以上、決議する。


資料8-2-4-3

海事振興連盟『大阪タウンミーティング』 主な参加者 (2008.11.15

《国会議員》

海事振興連盟会長

衆議院議員  中馬 弘毅  殿

衆議院議員  竹本 直一  殿

衆議院議員  中山 泰秀  殿

衆議院議員  松浪 健太  殿

衆議院議員  大塚 高司  殿

衆議院議員  近藤 三津枝 殿

衆議院議員  とかしきなおみ殿

衆議院議員  原田 憲治  殿

衆議院議員  藤村  修  殿

《来賓関係》

大阪府 副知事    小河 保之      

港湾局長   古川 博司

大阪市 港湾局長   川本  清  殿

国土交通省 海事局長 伊藤  茂  殿

海事局官房参事官 篠部  武嗣 殿

海事局安全・環境政策課長

坂下  広朗 殿

海事局海事人材政策課長

蝦名  邦晴 殿

海事局外航課長  岡西  康博 殿

海事局内航課長  重田  雅史 殿

港湾局港湾経済課長

若林  陽介 殿

政策統括官付参事官(物流施設)

田中  照久 殿

近畿運輸局長    各務  正人 殿

《発言者》

1.外航海運業界 日本船主協会 理事長     中本 光夫 殿

2.港運業界   大阪港運協会 総務委員長   貴田 欽二 殿

3.倉庫業界   大阪倉庫協会会長       山下 仁孝 殿

4.内航海運業  大阪海運組合理事長      藤原  浩 殿

5.学識経験者・学校関係者

大阪大学 名誉教授      内藤  林 殿

大阪府立大学大学院 教授   池田 良穂 殿

神戸大学国際海事教育センター 石田 憲治 殿

関西大学 政策創造学部教授  羽原 敬二 殿

鳥羽商船高等専門学校商船学科長教授

石田 邦光 殿

6.内航関係者  内航新聞社 社長       藤川 敏夫 殿


資料8-2-4-4

平成201115

海事振興連盟

 

大阪タウンミーティング決議

 

 海事振興連盟は、平成18年5月の今治を皮切りに、広島、神戸、長崎、大分と順次タウンミーティングを開催してきた。

本日、ここ大阪において「これからの日本、海に足場を」をテーマに、海事産業の人材の確保・育成をはじめとして、これからの海事産業のあり方を中心に幅広く議論した。

 近年、海事産業分野を志望する若者が減少する傾向にあり、この傾向が続けば、将来の国内外海上物流の確保に支障を来たし、我が国の均衡ある発展に多大な影響を与える惧れがある。

 もとより、四面を海に囲まれ、生活・エネルギー資源等を海外に大きく依存する我が国にとって、貿易物資の安定輸送、国内物流の確保、原油高、環境問題等にも対応した産業構造の転換ならびにこれらを支える造船業の維持・発展は最重要の課題であり、次世代に対し万全の態勢でこれを継承していかねばならない。

 そのためには、当連盟として以下の課題に積極的に取り組んでいく必要がある。

(1) 海事産業の活力維持のためのトン数標準税制の円滑な実施及び船舶特別償却制度等既存税制の確保

(2) 海事産業に係わる人材の確保・育成と海事教育の更なる深度化・高度化

(3) 国内海運、特に、過疎化・高度化による輸送人員の減少や燃油の高騰により厳しい経営状態にある離島航路への補助及び構造改革の支援

(4) 貿易立国である我が国にとって極めて重要な海域であるソマリア周辺海域における日本関係船の安全確保

(5) 鋼材価格高騰への対応、人材確保、技術・技能の伝承、技術基盤の強化等、造船業の持続的成長に向けた諸施策の推進

(6) スーパー中枢港湾プロジェクトの一層の推進と地方港との連携の取れた効果的な内航フィーダーサービスの利用の促進

(7) 客船事業を中核に据えた新海事産業創生の実現

(8) 環境負荷低減に資する物流効率化施設に係る税制特例措置の確保・充実

 

以上、決議する。


824 内航関係の規制緩和

当協会は政府の規制緩和推進計画がスタートした平成7年より、会員会社から寄せられた海運関係の規制改革要望を行っており、これまで一定の成果を挙げている。

しかしながら、依然として措置されていないもの、若しくは措置不十分なものがあるため、毎年度、会員全社に照会のうえ要望事項を整理し、内閣府の規制改革推進会議が毎年2回実施している「規制改革要望集中受付月間において要望を提出し実現を求めている。

内航関係の要望は以下の通りである。

<平成206月(あじさい)>

 1.内航輸送用トレーラー・シャーシの車検制度の緩和

 2.内航船の航行区域拡大の検討 

 

1.内航輸送用トレーラー・シャーシの車検制度の緩和

海上輸送用トレーラー・シャーシに係る車検制度については、当協会、日本長距離フェリー協会、日本内航海運組合総連合会等の関係団体が連携してモーダルシフト促進の観点から規制緩和を図るべく活動を続けているが、200623日に国土交通省においてシャーシの規制緩和についての考え方を示した『シャーシに係る物流効率化等に関する検討会』中間報告において、シャーシ車検証の有効期間の延長は困難であるとの見解が示された(年報2006 82参照)。

当協会としては、同中間報告の見解にかかわらず、引き続き日本長距離フェリー協会など関係団体と連携し、車検整備項目および車検証の有効期限の見直しを求めていくこととしている。

<平成206月(あじさい)>

モーダルシフトに資する海上輸送用のトレーラー・シャーシに対する車検の点検項目および車検証の有効期限を見直しについて要望したが、点検項目について一部改正されたものの、車検証の有効期限は1年間のままで、期間延長は認められていない。

同要望については、日本長距離フェリー協会とも調整の上、引き続き要望していくこととしたい。

<提案理由>

モーダルシフトに資する海上輸送用のトレーラー(シャーシ)に対する自動車検査証の有効期限は、毎日陸上輸送している一般のトラック同様1年である。主に海上輸送用であるトレーラー(シャーシ)は、本船船内または港頭地区駐車場に停車している状態が長く、陸上走行距離が短いものとなっている。また、トレーラー(シャーシ)自体は動力を持たず、トラクター(ヘッド)に牽引されるだけである。一昨年、国土交通省が発表した「シャーシに係る物流効率化等に関する検討会・中間報告」において、シャーシの走行距離が乗用車と比較すると1.8倍となっており、車検証の有効期間の見直しを妥当とするほどではないとの指摘等があった。しかし、自主点検の体制等から事業用貨物車と比較するべきであり、それとの比較では1/3.5である。京都議定書批准国であるわが国が、モーダルシフトを推進していく上で、海陸を利用した複合一環輸送体制の法的整備という観点から、対象とするトレーラー(シャーシ)を海上輸送専用とし、欧州で導入事例のある海上輸送用のトレーラー(シャーシ)をナンバープレート等により陸上輸送用と区別した上で、車検の点検項目及び車検証の有効期限を見直すべきである。

<制度の現状>

貨物自動車(車両総重量8トン以上)の定期点検は3月ごとであり、自動車検査証の有効期間は1年である。

<国土交通省からの回答:措置の概要>

貨物車については、車両総重量が大きく、事故時の加害性が高いことに加え、車輪脱落等による事故など車両欠陥に起因する事故が依然として問題であること等から、その自動車検査証の有効期間の延長には、特に慎重な検討が必要である。「シャーシに係る物流効率化等に関する検討会」の中間報告にもあるように、自動車の劣化は単に走行距離によって決まるものではなく、時間に応じて劣化する部分があることや、特に内航輸送用トレーラについては海岸近くで使用されるため腐食のスピードが通常のトレーラよりも速いこと等の使用環境の影響を受けることも考慮する必要があるため、トレーラ等について自動車検査証の有効期間を延長することは困難である。

なお、国土交通省では、「自動車の検査・点検整備に関する基礎調査検討会」を設置して、平成15年から平成17年にかけて、検査対象車両全般に亘り総合的に検討を行った。この検討会での結論を基礎として、閣議決定である「規制改革・民間開放推進3か年計画(改定)」(平成17年3月25日付)において、「検査対象車種全般に亘り総合的に検討を行った結果、小型二輪車の自動車の自動車検査証の有効期間については、初回2年を3年に延長が可能」と結論付けられ、これを受けて改正された道路運送車両法が、平成19年4月1日より施行されたところである。

被牽引車の点検項目については、「自動車の検査・点検整備に関する基礎調査検討会」の報告(平成17年3月付)を受け、自動車の安全の確保と環境の保全を確実に担保することを前提に精査を行った結果、点検項目を規定する別表を事業用自動車等に適用するものから分離して分かりやすくする等、「自動車点検基準(昭和26年運輸省令第70号)」並びに「自動車の点検及び整備に関する手引(平成19年国土交通省告示第317号)」の改正を行い、平成19年4月1日より施行したところである。

 


 

2.内航船の航行区域拡大の検討

<平成206月(あじさい)>

内航船の航行の自由度が向上するよう、沿海区域の拡大についての見直しの検討を要望したが、20海里以内の必要最低限の航行安全基準、及び安全基準を考慮した限定近海区域の設置などの措置等をしているとのことから要望は受け入れられなかった。

本要望については、同様な要望を提出している関係業界団体と連携し、粘り強く対応していくこととしたい。

<提案理由>

現在、内航船(沿海資格船)の航行区域は海岸から20海里の沿海に沿って航行せざるを得ないことから、航海時間、燃料消費等の面から物流効率化ならびに省エネルギー対策の妨げになっている。通信設備はじめ航海機器の発達と船舶の堪航能力及び航海速力の向上を勘案しても20海里以遠の海域の航海は充分可能と判断される。ついては沿海区域、限定近海の線引きを含めた制度の見直しを検討いただきたい。

<制度の現状>

船舶安全法では、航行区域として平水区域、沿海区域、近海区域等の航行区域を定め、かつ、航行区域に応じた船舶の構造、設備基準を定めている。

<国土交通省からの回答:措置の概要>

1.船舶安全法体系においては、海域の気象海象状況や陸岸からの距離等を考慮した航行区域を設定し、当該航行区域を安全に航行するための必要最低限の安全基準を課すこととしている。このうち沿海区域については、原則、陸から20海里までの陸、灯台等を視認した航法が可能な海域を定め、当該区域を安全に航行するための必要最低限の安全基準を設けている。

2.しかしながら、内航船舶の大型化、航海設備の進歩等によって、ある程度沿岸から離れて航行しても比較的容易に船舶の安全性を確保することができるようになったことから、輸送時間及び輸送コストを削減するため、主要内航航路を含む区域(距岸100海里程度)を限定近海区域として新たに設定し、当該区域を航行する船舶について、必要最低限の安全規制とするべく、平成7年から平成13年にかけて、構造・設備に関する以下のような各種規制の緩和を行ったところ。

・ 貨物船を対象とした、船舶設備規程、船舶救命設備規則、船舶消防設備  規則及び船舶防火構造規則の緩和(平成7年)

・ 旅客船を対象とした、船舶救命設備規則及び船舶防火構造規則の緩和(平成10年)

・ 満載喫水線規則及び船舶構造規則の緩和(平成13年)

3.これらの緩和は、当該海域の波浪発現頻度、平均波浪といった気象・海象条件の調査、試験水槽における模型船を用いた実験や数値シミュレーションを実施し、学識経験者、造船所、船主等の関係者による検討会を行う等、厳格に調査・検討した上で行っており、限定近海船として必要最低限の安全基準が設定されたものである。この限定近海船の安全基準の検討時以降、更なる規制緩和を認めうる顕著な船舶の性能向上等は認められないことから、限定近海船の安全基準を一層緩和することは、船舶の安全上不可能である。

4.以上のことから、限定近海船としての船舶安全法上の必要最低限の要件に合致していない船舶については、船舶の堪航性及び海上における人命の安全の確保を図る観点から、沿海区域を超えて限定近海区域を航行することを認めることはできない。なお、沿海資格船であっても、限定近海船としての船舶安全法体系の要件を満たしているならば、限定近海船として検査を受け、その船舶検査証書を受有することにより、限定近海区域を航行することが可能である。