8・3 2008年度の内航海運対策
8・3・1 内航海運緊急不況対策(高速道路料金の引下げで影響を受ける内航定期航路および旅客船・フェリー対策)
2008年度第2次補正予算の関連法が平成21年3月に成立し、「高速道路料金の引き下げ」が2年間継続して実施されることが決まった。同措置により内航定期航路(RORO船、コンテナ船など)および旅客船・フェリー業界が影響を受けるとして、海事振興連盟(会長 中馬弘毅衆議院議員)は、同法成立前2月10日に臨時会合を開催した。日本旅客船協会、日本長距離フェリー協会、日本内航海運組合総連合会等関係団体より、内航定期航路および旅客船・フェリー業界へも公的支援を行なうよう要望が出され、これを受け港湾施設の利用負担の軽減や、航路廃止・事業規模縮小に伴う離職者支援等を内容とする決議を行なった【資料8-3-1参照】。また、全日海も3月6日にフェリー・旅客船の存続に向けての決起集会を開催した。内航部会としてはこれら決議等を踏まえ、国土交通省が検討する来年度の補正予算を視野に入れた事業者への支援策などの動向について注視していくとともに、必要に応じ、関係団体と協調し対応することとしている。
8・3・2 自民党政務調査会 海運・造船対策特別委員会/海事立国推進議員連盟(内航分野 H21.3.26)による緊急不況対策
自民党は、2007年4月12日、国会議員で構成する「海事立国推進議員連盟 (会長・衛藤征士郎衆院議員)」を設立した。同議員連盟の目的は、将来にわたり安定的な海上輸送体系を構築し、日本が引き続き「海事立国」として発展するため、海運・造船を中心とした海事産業を育成するとともに、海事産業政策を我が国の重要な国策の一つとして位置づけ、海事に関する総合的かつ戦略的な政策を規定する「海事立国推進大網」の制定を目指すこととしている。【年報2007年 8・3(4)参照】
自民党の海運・造船対策特別委員会(委員長・村上誠一郎衆議院議員)と海事立国推進議員連盟は平成21年3月26日、合同会議を開催し、今次不況による深刻な状況を訴え「緊急不況対策」への支援策として、内航海運の活性化に向けた支援、内航フェリーの競争力強化に向けた支援を審議し、@環境性能向上などに資する代替建造や改造の促進に対する取り組み、A老朽船の解撤に資する取り組み、B雇用調整助成金などの雇用維持政策や離職者に対する支援などを実施する、等について決議「内航フェリー・内航海運に対する支援策導入に向けた決議」【資料8-3-2】を取りまとめた。この決議は、翌日までに、自民党、細田博之幹事長、笹川尭総務会長、二階俊博経済産業大臣、金子一義国土交通大臣、保利耕輔政調会長に申し入れを行い、実現に向けた協議を要請した。
8・3・3 海上運送法の一部改正による内航海運業の船員確保策について
国内貨物輸送の約4割、主要産業基礎物資の約8割を担う内航海運や年間1億人が利用する国内旅客船では、その人的基盤である内航船員は不可欠だが、高齢化が著しく(45歳以上が64%)、交通政策審議会による内航船員の将来見通し試算では、5年後に約1,900人、10年後には約4,500人程度の船員不足が生じる可能性があるとされている。
また、平成19年に成立した海洋基本法においても第20条『海上輸送の確保』が掲げられ、安定的な海上輸送の確保が国家的課題になるとしている。
このような問題を背景に、「海上運送法及び船員法の一部を改正する法律」(以下、改正海上運送法)が平成20年5月30日に成立、7月17日に施行され、安定的な国内輸送の確保を図るための施策の一つとして、内航海運事業者を中心とした船員の確保育成のための『船員計画雇用促進事業』による助成策などが措置された。なお、同改正法において、同時に外航海運についても、安定的な国際海上輸送の確保を図る措置として課税の特例「トン数標準税制」の適用が盛り込まれた。
「改正海上運送法」は、交通政策審議会海事分科会ヒューマンインフラ部会の最終答申【年報 2007年 8・3(3)】を踏まえたもので、将来の後継者不足等に対応し、船員の確保・育成対策を強化するため、国土交通大臣が策定した「日本船舶及び船員の確保に関する基本方針(以下、「基本方針」)に基づき、船員の採用及び訓練を計画的に実施することにより、船員の確保・育成等を積極的に図る事業に対し、「日本船舶・船員確保計画」の認定事業者として、『船員計画雇用促進事業』による支援措置等を講ずることを定めたものである。
『船員計画雇用促進事業』の具体的内容は、@共同型船員確保育成事業(内航海運業界のグループ化を通じた船員の計画的な確保・育成の促進)、A新規船員資格取得促進事業(船員志望者の裾野拡大等を図るための資格取得の促進)、B船員計画雇用促進事業(退職自衛官、女子船員等の新たな船員供給源からの船員の確保・育成等の促進)に取り組む海運事業者に対し助成が行われるものとなっている。
(以下の3つの助成金について、同一年度内に同一対象者に対して支給を受けられるのはいずれか一つの助成金となる。対象者が異なれば、いずれの助成金の複数の受給が可能。)
@
共同型船員確保育成助成金
船員の確保・育成に係る計画の認定を受けた中小海運事業者が、共同でグループ化を通じて船員の計画的確保育成を行う場合に、船舶管理会社等に対し、内定者及び試行雇用者たる船員の教育訓練費用の一部を助成。【資料8-3-3-1参照】
A
新規船員資格取得促進助成金
船員志望者の裾野拡大等を図るため、船員の確保・育成に係る計画の認定を受けた事業者を対象に、内定者及び試行雇用者の資格取得のための講習費用の一部を助成。【資料8-3-3-2参照】
B
船員計画雇用促進事業
船員未経験者を計画的に採用及び訓練を支援するため、船員の確保・育成に係る計画の認定を受けた事業者が、船員を一定期間試行的に雇用した場合に助成金を支給。【資料8-3-3-3参照】
『船員計画雇用促進事業』を実施する上での手続きは、以下の流れとなる。
1.計画作成(※1)
日本船舶・船員確保計画の申請書、記載要領の入手
(国土交通省のホームページからダウンロードもしくは最寄の地方運輸局にて取得)
「日本船舶・船員確保計画」の作成
以下事項を記載
@
船員の採用・訓練に関する目標の設定
A
計画期間(3〜5年)の設定
B
支援措置の内容(※支援措置によって、添付書類等が異なる)
C
船員の採用計画
D
船員の訓練計画
E
資金の調達方法
(平成20年度は特例として、10月末日までに認定申請を行った場合は、各助成金の支給対象となる。)
2.国土交通省 各地方運輸局に申請
3.国土交通省の審査【申請書の認定基準(※2)への適合性審査】
4.認定書の受領(国土交通大臣の認定)=「日本船舶・船員確保計画」の認定事業者
5.認定事業者として、日本船舶・船員確保計画に基づき『船員の計画的確保育成実施書』を提出後、承認通知書を受領
----上記手続きは、国土交通省-----------------------
-----以下、助成金の申請、受給は
(財)日本船員福利雇用促進センター(SECOJ)----
6.海上運送法の認定を要件(認定事業者)とした『船員計画雇用促進事業』の助成金を申請する場合、助成金対象事業を実施したことを確認する書類等(計画実施書)を(財)日本船員福利雇用促進センター(以下、SECOJ)に提示
7.船員計画雇用促進事業による助成金受給
8. 日本船舶・船員確保計画の実施状況を定期報告
毎年度4月末日までに、計画期間の計画実施状況を国土交通大臣に報告する義務
※1. 計画作成
国土交通大臣が作成する日本船舶及び船員の確保の意義及び目標等をまとめた「基本方針」に基づき、船舶運航事業者等が日本船舶の建造等の計画、船員確保・訓練の計画を作成。
「基本方針」の概要については、
(1) 目的として、安定的な海上輸送の確保を図るために必要な日本船舶の確保、日本人船員の育成及び確保のその他関連措置に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、海上運送法に基づき、国土交通大臣が基本方針を定めることとしている。
(2) 要旨の具体的内容は、@日本船舶及び船員の意義及び目標、A政府が実施すべき施策、B船舶運航事業者等が講ずべき措置、C日本船舶・船員確保計画の認定、Dその他(関係者の協力、施策の評価の実施)についての基本的な事項が挙げられている。
(3) 日本船舶及び船員の確保の目標は、5年後、10年後に船員不足が生じることのないよう内航船員の確保及び育成を図る。
(4) 日本船舶・船員確保計画の認定
○ 認定申請者は、船舶運航事業者、船舶貸渡業者、船舶管理会社等
○ 計画期間は、3〜5年間
○ 認定基準は、
・ 船員としての経験がない者等を計画的に採用及び訓練すること等であること。
・次のいずれかに該当すること。@グループ化の促進、A船員の資格取得の促進、B新規供給源(退職自衛官、女子船員等)からの採用促進 等
※2. 認定基準(日本船舶・船員確保計画の認定基準)の概要
(1)基本方針に適合するもの(法第35条第3項第1号)
基本方針とは、日本船舶・船員確保計画の内容と実施方法が規定されているもので、計画がこの基本方針適合するものであるか否か審査することとしている。
○
船員教育機関を卒業した者のうち船員としての経験がない者、船員教育機関を卒業した者以外の者のうち新たに船員になろうとする者、女性であって船員(運航要員に限る。)になろうとする者又は退職自衛官のいずれかについて、採用及び訓練(退職自衛官等の船員経験者を計画的に採用する場合であって、採用後にキャリアアップのための訓練を実施する必要がない場合を除く。)を行う計画となっているか。
○
グループ化を通じて、船員教育機関を卒業した者のうち船員としての経験がない者、船員教育機関を卒業した者以外の者のうち新たに船員になろうとする者のいずれかを計画的に採用し、かつ、採用後に訓練を計画的に実施する計画となっているか。
○
船員教育機関を卒業した者のうち船員としての経験がない者、船員教育機関を卒業した者以外の者のうち新たに船員になろうとする者のいずれかを計画的に採用し、これらの者が業務に従事する上で必要となる資格の取得を計画的に実施する計画となっているか。
○
新規供給源から船員を計画的に採用し、かつ、採用後に事業内容に応じて必要な訓練(退職自衛官等の船員経験者を計画的に採用する場合であって、採用後にキャリアアップのための訓練を実施する必要がない場合を除く。)を計画的に実施する計画となっているか。
○
退職予定船員数や予備船員数の状況等を踏まえ、事業を円滑に実施するため、船員教育機関を卒業した者のうち船員としての経験がない者を計画的に採用し、かつ採用後に上級資格の取得その他の訓練を計画的に実施する計画となっているか。
(2)確実かつ効果的に実施されると見込まれるものであること(法35条第3項第2号)
計画の目標達成に十分な実施体制が整っているか。
○
所要資金の調達に十分な見通しがついているか 等
(3)計画期間が国土交通省令で定める期間であること
○
計画期間:3〜5年であること。
(4)船員職業安定法第55条第1項に規定する船員派遣事業の許可等を要する場合には、船員職業安定法が定める欠格事由に該当せず、また、許可基準に適合すること。(法35条第3項第4号)